『公卿会議』

美川圭著『公卿会議―論戦する宮廷貴族たち』(2018年、中公新書)を読みました。平安貴族たちが、どのように議論をし、国政を動かしていたかです。

天皇制、律令国家の時代です。建前は律令に従い、天皇が決裁します。三権が分立していませんから、立法・行政・司法のすべてを所管します。もちろん重要な案件は、徴税であり、治安であり、貴族たちの昇任です。
しかし、日本の天皇制は多くの場合、天皇独裁ではなく、その部下たちがおおむね決めて、天皇が裁可します。法皇が権力を持つ場合もあります。
すると、その部下たちと天皇との力関係、さらには部下の中での権力の所在が問題になります。摂政・関白が大きな力を持つのか、この本で取り上げられた公卿会議が機能するのか。そして、武家が入ってきます。

その力関係の変化が、解説されています。千年も前の資料が、よく残っていたものです。欲を言えば、具体の会議の内容を知りたかったです。ある案件を取り上げて、どのように会議が進められたかです。もっとも、資料の制約があります。

誰が、何を、どのようにして、決めているか。これは、政治学や歴史学の大きなテーマです。
現在の日本では、日本国憲法に従い、国会が国権の最高機関です。しかし、国会議事録を読んでも、実際の政策の決定過程はわかりません。また、閣議が内閣の決定の場ですが、この記録を見ても、現実の政策決定過程はわかりません。
会議の多くも、そうでしょう。議事録を見ても、誰がその課題を議題に載せたか、事前にどのような調整がされたのか、誰の意見が通ったのかは、わからないのです。会議に載らなかった重要案件も、大きな意味をもちます。
制度と運営の実態は、別物です。