御厨政治史学

東京大学先端科学技術研究センター御厨貴研究室『御厨政治史学とは何か』(2017年、吉田書店)は、御厨貴先生の著書をめぐるシンポジウムの記録です。というか、御厨先生の関係者が、先生の研究について語るというものです。
先生の著作2冊は、『明治史論集』(2017年、吉田書店)と『戦後をつくる』(2016年、吉田書店)です。それぞれ大部で、まだ読めずに本棚で寝ています。

2ページに佐藤信さんが、「実験室の民俗誌」と書いておられます。
・・・科学史には「実験室の民俗史」という分野がある。科学的知見がいかなる環境-機材や資料や人的ネットワーク-のもとで得られたのか問うのである。これになぞらえるなら、このシンポジウムの一面は御厨史学の実験室の民俗史である。八雲の都立大という空間、サロンのような憲政資料室、草創期『レヴァイアサン』の印象など、若い学徒にとってはいずれも貴重な証言である・・・

そうですね、研究の成果は「真空」の空間で生まれるのではなく、研究者の置かれた環境で作られるものです。それは、パラダムといった思考の枠組みや、時代の雰囲気、そして研究室の先輩などでしょう。

先生の発想は、『明治国家形成と地方経営』(1980年、東大出版会)、『政策の総合と権力』(東京大学出版会、1996年)に示されているように、これまでの研究者にない新たな視点、それも包括的な視点です。
私にとって、前者は自治官僚として、後者は「内閣官僚」(各省の官僚でなく内閣官房など霞が関全体を見る官僚)として、重要な本です。それぞれの議論以上に、そのような視点が、勉強になります。前者は「経営」、後者は「総合」という視点です。