地域福祉の現場は行政のフロンティア

今日は、日本介護経営学会に呼ばれて、シンポジウムに登壇してきました。私は知りませんでしたが、介護の実務家や研究者の学会です。会場は満員でした。
被災地では、高齢者などのケアのため、さまざまな試みが取り組まれました。阪神淡路大震災を教訓に、介護ステーションをつくり、相談員が巡回してと。それ以外にも、地域包括ケアの試行なども。地域福祉の「実験場」だったのです。これまでの経験は、この学会が協力した、小笠原浩一・栃本一三郎編著「災害復興からの介護システム・イノベーション」(2016年、ミネルヴァ書房)にまとめられています。関係者の方には、お薦めです。
私の役割は基調講演でしたが、その後のシンポジウムが勉強になりました。旧知の長純一先生、池田昌弘さんたちから、包括ケアや現在の福祉サービスから漏れ落ちている人たちへの支援現場での課題が、報告されました。現場で活動している人たちの発言は重いですね。実践家の苦悩、といったら良いのでしょうか。「無認可」「認可外」に、次なる課題が存在しています。これまでの医療福祉サービスが、医療、介護、児童、障害者というように対象者別にサービスを拡充してきました。それでも、隙間が残されています。生々しい事例を聞かせてもらいました。
また、個別サービスが、地域での助け合いを壊しているという逆効果も。農業や漁業が忙しい時期に、デイケアに来ている高齢者が、そちらの作業のアルバイトに行くという話がありました。高齢者は行くところを求めているのです。
行政によるサービスの限界が見えてきました。地域で、ともに支え合う場や方法を、生かさなければなりません。しかし、自治体にも国にも、そのような専門家はおらず、部署もありません。新しい行政手法、公共政策が必要です。
「日本の行政課題は、外国から輸入するのではなく、国内の現場で生まれている」という私の主張が、まさに実証されている分野です。さてこれらの課題を、研究者、自治体、国が、どのように吸い上げて解決するか。異業種の方との意見交換は、勉強になります。