被災地で考えるマイケル・サンデル先生

NHKが2日にわたって、マイケル・サンデル先生と考える震災復興を放送しました。3月2日夜は東北大学で学生や一般の方千人と、3日夕方には日本を代表する社長7人との討論です。見応えがありました。
東北大学では、参加者の「東北人は討論に向いていない」との事前の発言とは全く違い、「白熱教室」でした。自主避難者に支援すべきか、ボランティアである民生委員や消防団員は自らの危険があっても高齢者を救いに行くべきか、復興に際してリーダーシップを優先すべきか住民合意を大切にすべきか。それぞれ難しい問題です。
社長7人との討論も、すばらしかったです。「さすがに、この社長たちは違う」と思わせるものでした。復興に限らず、企業経営は社会との関係でどうあるべきかなど。この方たちが日本の経済と産業を引っ張っていってくだされば、日本は世界の中で復活できるでしょう。
見損なった方は、もったいないことをしましたね。でも、再放送もあり、オンデマンド(有料)もあるとのことです。

「さすが」と思ったのは、先生の問題設定と、話の進め方です。そして、参加者のしっかりとした発言です。放送では、実際の録画を編集してあるのでしょうが。
実は私も、大学などで復興の講演をする際には、「被災地で考えるマイケル・サンデル先生」を、先生に断りもなくやっています。
「100人の避難所に届いた70人分の物資をどう配るか」「避難所で、応援に来たボランティアたちが汗を流している前で、若くて元気な避難者がぶらぶらしている場合」「支援物資として文房具がたくさん送られ、文房具屋さんが商売あがったりになったこと」「ボランティアがお花を配ってくだっさったので、花屋が仕入れたお花が売れなかったこと」「がれきを、岸壁の応急修理に使ってよいか」「ご遺体を埋葬する際に、僧侶の読経を求められた役場職員」など。
発災直後の現場では、哲学や倫理の衝突の他に、法令と緊急対応との衝突事案もありました。復旧に入った段階でも、「哲学の違い」が、現場では出てきます。それぞれ、いま目の前にある課題です。そして、大学教授や国の官僚が答えを出してくれない、あるいは待っていられない課題です。