「社会」カテゴリーアーカイブ

社会

スマホで丸裸に、あなたの生活

NHKのウエブニュース欄に「さよならプライバシー あなたの恋愛も懐事情も丸裸」(4月13日掲載)が載っていました。
・・・「あなたの住所や家族構成、家族や身の回りの人も知らないあなたの趣味や収入まで丸裸にできますよ」初対面の人にこんなことを言われたら、どう感じるだろうか。
実は、スマホの利用履歴のデータを使えば、そんな占い師のようなことができてしまうということが今回、NHKとIT企業が行った実験で明らかになった。
あらゆるものがデータ化され、AIで解析され便利なサービスや製品の開発につながる現代社会。「もはやプライバシーは本人のものではなくなっている」という指摘さえ出ている。あなたが今、何気なく使っているスマホから、いったいどれだけのデータが発信されているだろうか・・・

として、ある人のスマートフォンのグーグル利用履歴から、住所、職業、経済状況、女性との付き合いを推理します。本当に「丸裸」になります。読んでみてください。
私もあなたも、同じ状況に置かれています。嫌ですねえ、プライバシーは筒抜けです。

「移民と日本社会」

永吉希久子著『移民と日本社会』(2020年、中公新書)を読みました。
日本で定住外国人が増えています。日本は、移民(受け入れ)政策はとらないとしていますが、外国人留学生や労働者は増えています。昨年、出入国在留管理庁ができました。
地域での定住外国人の受け入れについては、1990年代から問題が起き、自治体では対応に迫られました。それらを伝える報道も多くあります。麻生内閣では、内閣府定住外国人施策推進室」を設置(平成21年1月)しました。

この本は、現場からの事例の報告ではなく、これまでの調査研究に基づき、数値で迫ります。
移民には、どのような種類があるか。移民による経済的影響(賃金や失業率、技術革新への影響、社会保障制度)、社会的影響(犯罪や治安)。移民の統合政策の違い、長期的影響(移民二世、国民のまとまり)などです。
外国人による犯罪など、一般に流布している噂と、実際は異なることが示されます。
自治体で定住外国人受け入れに当たっている職員や、関心ある方にお勧めします。

移民政策を採っていないこと、しかし現実にはなし崩し的に定住外国人が増えていること。これも一つの政策ですが、一貫した対応を遅らせています。部分部分での対応が、無理を生んでいます。
さらに人数が増え、地域社会での受け入れが問題になると、国民により認識されると思います。外国人家族の地域への受け入れ、特に子供たちの教育と就業が大きな課題です。

NHKのウエッブサイトには、「外国人材」の欄があります。そこでは、NHKの世論調査で、日本で働く外国人が増えることに「賛成」する人は70%に上ること。一方で、自分が住む地域に外国人が増えることに「賛成」する人は57%であること。
外国人労働者が家族を伴って日本で暮らすことについて条件を緩和して今より広く認めるべきだと思う人が30%余りいる一方、今以上に認めるべきではないと思う人が60%を占めることが報告されています。

桜並木を育てた人たち

東北新幹線の車窓から、いくつも桜と桜並木が見えます。それを見て、先人たちの努力を思います。

里山の桜は、自然と育ったものでしょう。屋敷や畑の隅に咲く桜は、その土地の所有者が植えたものでしょう。
では、桜並木はどうか。桜並木は、道路沿いや河川沿いにあります。地元の人が協力して植えたのでしょうね。そして世話をして、ここまで育ったのだと思います。

そのような並木が、今後衰えたら、どのようにして維持されるのでしょうか。篤志家や町内会がしっかりしていないと、枯れていくことになります。市町村役場の責任にせず、住民や企業の協働で続けることができるとよいのですが。

「ひとり空間の都市論」

南後由和著「ひとり空間の都市論」(2018年、ちくま新書)を読みました。連載「公共を創る」で、平成の社会の問題の一つとして、「孤独」を取り上げています。その関心の延長です。

「おひとり様」と呼ばれる現象を、いくつかの角度から分析しています。冒頭に漫画「孤独のグルメ」が出た後、住まい、飲食店、モバイルメディア(ウオークマンからスマートフォンまで)などが取り上げられます。統計による分析ではなく、現象を捉えた、社会論、都市論です。

都市が人を自由にし、また一人で生きることを可能にします。江戸時代から、都市には独り者が多かったようですが。さらにその独り者が増え、そして生活しやすくなりました。
単身者が増える。そのような人を対象として店やサービスが増える。そして、さらに便利になって、単身者が増える・・・。という積み重ねなのでしょう。

単身者が重宝するのは、飲食店です。一人で入りやすい店が増えました。かつては、学生街の食堂と町の食堂でしたが、それらが少なくなり、ファストフード店が増えました。便利ですが、そのような店は、食事を楽しむというものではありません。
単身赴任したときに、雨の日曜の晩に一人で食べることは、わびしかったです。

日本語が読めない、書けない子供たち

3月22日の読売新聞言論欄、新井紀子・国立情報学研究所教授の「国語教育の改革 AI時代 読解力で生きる」から。

・・・日本の子供たちの読解力に危機感を持っています。
今回のPISAで衝撃を受けたのは、読解力が米国と同レベルだったことです。日本は、両親の母語も、生活言語も日本語という子供が圧倒的に多い。それに比べて、米国は移民が多く、家庭では別の言語を使うこともある。言語は自然に身につくという前提がないんです。
日本が、そういう国並みなのは、言語政策の長期的な無策が影響しているのだろうと思います。
米国やドイツ、フランスも、学校に多様な背景を持った子供が入ることを前提に、それぞれの子が本当に読めているか、書けているかを科学的にチェックし、体系的・段階的に必要な言語支援をしています。
しかし、日本では、子供の語彙ごいの量や、言葉の係り受けがどこまでわかっているか、といったことを十分に調査してこなかった。

1990年代初頭のバブル崩壊や、2008年のリーマン・ショックを経て、「一億総中流」といわれた同質性が崩れ、家庭も多様になってきました。テレビ、新聞、ラジオといった共通のメディアを視聴することが減り、語彙の共通部分もすごく小さくなった。家庭の経済格差や地域格差が広がり、普通に過ごしていれば誰もが自然に日本語が読めたり書けたりする状況ではなくなったことを認識すべきです。

東京都内のある小学校では、4年生のクラスで自分の名前を漢字で書けない子が半数を占めていました。授業では、穴埋め式のプリントにキーワードを書き込んだり、タブレット端末でキーを選択したりすることが多く、文字を書く機会が激減しています。ノートの取り方もわからない。筆圧が弱く、きちんとマス目の中に書けない状態です・・・