カテゴリーアーカイブ:政治の役割

日本独自のもの、多い首相の議会解散

2017年1月21日   岡本全勝

先日、日経新聞連載「日本の政治ここがフシギ」、第3回「議論深めぬ廃案戦術 「日程闘争」が常態化」を紹介しました(1月17日「日本独自の慣習、国会の会期」)。20日は、第5回「強すぎる?議会解散権  熟慮遮る選挙の影」でした。
・・・「解散風」。日本の政治ニュースではよくこんな言葉を目にする。最近では2009、12、14年と2~3年ごとに衆院解散があった。主要先進国をみると、ここまで頻繁に解散をする国は珍しい。世界では解散は時代遅れになりつつある・・・
・・・主要7カ国(G7)のうち、解散の制度があるのは米国を除く6カ国。過去60~70年でドイツは3回、フランスは5回しか解散していない。英国は11年、解散を任期満了か下院の可決時に限る法整備をした。安定政権で財政再建に取り組む目的だが、連立与党が「抜き打ち解散」封じを求めた面もある
・・・日本は47年の憲法施行後、解散は23回に上る。首相の主体的な判断で憲法7条に基づいて天皇の国事行為として解散する「7条解散」が定着し、回数は多い。解散権は首相の「伝家の宝刀」「専権事項」といわれ、いわゆる「大義」がなくてもいつでも国民に信を問える政治的な武器・・・
・・・「選挙が遠いなら、もっと政策に力を入れられるのに」。昨年暮れ。ある野党議員は地元で支援者との忘年会をハシゴして嘆いた。昨年は7月の衆参同日選、17年初めの解散が噂され、文字通り「常在戦場」だった・・・

政権の安定のためや、重要政策について民意を問うために、首相の議会解散を柔軟に認めるのか。議員が腰をすえて政策議論できるように、首相の解散権を制約するのか。
安定して政治を行う観点から、かつては首相がしばしば交代した日本の特性とともに、安定した国会議論や「政治における期間」というものをどう考えるかです。

日本独自の慣習、国会の会期

2017年1月17日   岡本全勝

日経新聞連載「日本の政治ここがフシギ」1月16日は、第3回「議論深めぬ廃案戦術 「日程闘争」が常態化」でした。
・・・20日に召集する通常国会でも構図は同じだ。政府・与党は働き方改革の関連法案や、犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の構成要件を改め「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案などの会期内成立を目指す。対する野党は対決法案と位置づけ「延長させるつもりで臨む」(民進党幹部)と意気込んでいる。野党は常に会期をにらんだ日程闘争を選ぶ。なぜだろうか。
国会法では「会期不継続の原則」がある。会期が終わると、各委員会で議決しない限り、審議途中の議案は全て廃案になる。議員数では法案の成立を阻止できない野党には「会期末までに採決させない」ことが有効な抵抗手段だ。会期延長も「一定の成果」と考える・・・
・・・欧米主要国の議会では、会期が終わると原則、廃案になるルールは英国にしかない。下院(日本の衆院)議員の任期中は、議案が継続するのが主流。フランスでは最長5年も議案が生き残る・・・

・・・国会の会期はどうか。日本の国会は主に、1月召集の通常国会(常会)と、通常は秋に開く臨時国会(臨時会)がある。常会は150日で1回延長できる。2015年は95日間延長し、245日と会期をとって安全保障関連法を成立させた。
欧州の主要国では会期の概念は希薄だ。年間の審議日数は少ないが、緊急時に法案審議をする必要がある場合などは招集手続きなしで審議を始められる。事実上の「通年国会」だ。
ドイツでは国会開会前、与野党で全ての審議日程を合意する慣例がある・・・

記事では、欧米先進国との比較が、表になっています。ご覧ください。
明治以来、日本はこれら欧米先進国をお手本に、いろんな制度を輸入しました。ところが、その後の運営において、日本独自のものに作り替えたようです。また、制度は輸入しても、運用は日本風にしたようです。学者の議論も制度の紹介に終わり、官僚による「輸入」も制度までで、運用については、先進国を習わなかったようです。何もかも西欧風にする必要はないのですが、西欧と比べどちらが合理的効率的かは、議論するべきだと思います。

民主主義の困難さと憲法の役割

2017年1月16日   岡本全勝

1月6日の朝日新聞、長谷部恭男・早稲田大学教授と杉田敦・法政大学教授の「考論」「混迷の世界行く先は」から。
アメリカの「ラストベルト(さび付いた地帯)」の人たちは、自分たちが祖父母や親の代のような豊かな生活ができないのはおかしいと主張し、その切実な声に寄り添わないリベラルやエリートが悪いという議論も最近多いということについて、杉田教授の発言。
・・・グローバル競争で、地域や個人が海外と直接に競争力を比べられてしまう状況になり、その中で、地域の切り捨ても起きている。由々しき事態ですが、根本的な対策がない点では、リベラルだけでなく、トランプ氏もEU離脱派も実は同じです。しかし彼らは、国境に壁を作るとか、移民排斥とか、見せかけの対策をショーアップし、つかの間の人気を得ている。本来なら産業・経済構造の変化という「不都合な真実」を伝え、それに対応して生き方を変えるよう人々に求めるしかありません。しかし、それは人々に我慢を強いる「縮小の政治」という面があり、どうすればそんな不人気な政治を、人々の支持を得ながら民主的に進めることができるか。難題です・・・

憲法の機能についての、長谷部教授の発言。
・・・今年はいろいろなことが試される年になるでしょう。まずは、権力を分立し、おかしな党派にすべての権力が掌握されないように設計されている憲法システムや政治システムが、トランプ次期大統領の暴走を抑えることが本当にできるかが試されます・・・

ポピュリズムに対抗する

2017年1月11日   岡本全勝

1月9日の日経新聞オピニオン欄、ニック・クレッグ、前イギリス副首相の「英、単一市場残留へ譲歩を」から。
・・・大衆迎合主義(ポピュリズム)に対抗するには3つのことが必要だ。第1に、ポピュリストに失敗させることだ。大衆迎合の政治家にとって最悪なのは、実際に責任を引き受け、様々な代替案から物事を決めねばならないことだ。
第2に、主流派の政治家は自由民主主義の価値をあきらめてはいけない。第3に、最近の経済環境になぜ市民が怒り、幻滅を抱いているかを真剣に考える必要がある。賃金はおそらく前世紀のいつの時代よりも長く停滞している。賃金制度や労働法、税制を通じて解決策を見つけないと、ポピュリストが得をする・・・

砂原庸介・准教授。個別政策、パッケージで議論

2017年1月10日   岡本全勝

1月9日の日経新聞経済教室「大転換に備えよ」は、砂原庸介・神戸大学准教授の「非主流派政治に取り込め。政策提示、個別より一括で」でした。配偶者控除の改正が、2017年度の税制改正で議論になりつつ、選挙を前にして進まなかったことについて紹介した後。
・・・配偶者控除のように個別のテーマごとに議論すると政治的にリスクが大きい中で、働き方改革のようにパッケージで議論することには意味がある。なぜなら一つのテーマでは負担が増える敗者となったとしても、別のテーマと組み合わせることで、その負担を軽減できるからだ。
例えば配偶者控除を廃止するのならば、他方で育児に対する給付を増やすことで専業主婦世帯に報いられるかもしれない。また、単に共働き世帯を優遇するだけではなく、子どもへの一定の給付を前提として、保育所の利用料引き上げにより収支のバランスを考える方法もありうる・・・
・・・そこで政党は世論の反応をみながら支持拡大につながるパッケージを提示し、既存の政策的対立軸とは異なる形で新たに包括的な改革連合を形成していく必要がある。そのとき、従来は政治的に代表されてこなかった女性を中心とした非正規労働者などの「アウトサイダー(非主流派)」を政治過程に包摂することは政党の支持基盤を広げるという点でも重要な意味を持つ。
近年の日本政治でこうした取り組みがなかったわけではない。具体的には、各省庁にまたがる論点を包摂する形で、内閣府に首相直属の会議体を設け、調整がなされてきた。しかし党内に「抵抗勢力」を定めて、それとの積極的な対立を辞さない姿勢をとった小泉政権を除けば、基本的に関係者のコンセンサス(合意)を重視するコーポラティズム(協調主義)的な手法がとられてきたといえる。
そうした手法ならば、関係者にとって受け入れやすい漸進的な改革が中心となる。しかし、それでは従来の政治過程から排除されてきたアウトサイダーの利害が反映されるのは難しいところがある・・・

続いて、次のような指摘もあります。
・・・しかも会議の乱立は重要な首相の時間資源を奪うことになった。外交における首相個人の役割が大きくなる中で、すべての重要案件を首相の責任の下で処理するのは不可能に近く、積極的なリーダーシップを発揮するのは困難だ・・・
原文をお読みください。