カテゴリー別アーカイブ: 連載「公共を創る」

連載「公共を創る」第35回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第35回「社会的共通資本 不変ではない国民の意識や習慣」が、発行されました。

前回に続き、日本人論の限界を説明しました。日本人論は、日本社会の特徴を「日本の伝統」と説明します。しかし、それらは不変のものでなく、変わるものであり、変えることができるものです。
一例として、夫婦の関係を紹介しました。1973年では、多くの日本人が理想は亭主関白型と答えたのに、近年では平等と答えています。半世紀の間に、大きく変わりました。

ここで少々脱線します。昔から実態は「婦唱夫随」だったのに、夫は見栄で「夫唱婦随」と主張し、実権を握っている妻もそう言って夫をおだてていた、というのが私の解釈です。財布を妻に握られている多くの夫は、この事実に同意してくれるでしょう。認めたくはないのですが(笑い)。

「男は仕事、女は家庭」という言葉も、死語になりました。
アジア諸国が日本の後を追って経済発展に成功し、日本だけが優秀だという日本特殊論は、成り立たなくなりました。
では、今後、日本社会をどう変えていくのか。それが課題です。次回から、それを議論します。

連載「公共を創る」第34回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第34回「社会的共通資本 低い共助意識と政治参加意識」が、発行されました。

前回に続き、日本の文化資本の弱点を列挙しました。
意外なことに、共助の精神も、諸外国に比べて低いのです。それも、極端にです。困っている見知らぬ人を手助けする、慈善団体に寄付する、ボランティア活動をするなどの調査です。
また、投票には行きますが、政治への関心も極端に低く、さらには政治にかかわりたくない人が多いのです。
次に、仕事への熱意も低いのです。会社人間が多いといわれていますが、実はそうではないのです。長時間働いていますが、積極的ではないのです。これは、拙著『明るい公務員講座 管理職のオキテ』でも取り上げました。

日本人論には、不正確な話がたくさんあるようです。

連載「公共を創る」第33回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第33回「社会的共通資本 社会の変化に応じて変更を」が、発行されました。

今回から、(3)「次代への責任」に入ります。前号までで、暮らしに必要な社会の環境や装置を「社会の財産」として分類しました。関係資本と文化資本の重要性を指摘し、日本社会の特質を、日本人論や「この国のかたち」で説明しました。
今回から、この社会の財産をどのように引き継いでいくかを検討します。
先進国に追いついたことで、経済発展という国家目標を達成しました。次の目標は何か。
また、これまで優れていると言われていた日本の文化資本の弱点は何か。
欠点の一つ目は、安心は強いが信頼は弱いことです。すなわち日本人は、仲間内のでの安心は強いのですが、よそ者との信頼は弱いのです。

連載執筆、第2章2(3)原稿完成

前回(1月19日)報告した、第2章2(3)「次代への責任」がゲラになりました。
年末年始に頑張って、原稿を書き上げました。その後、右筆にコテンパンに手を入れられました。それぞれが的確な意見なので、ほぼすべて採用。それを加筆して、先週、編集長に提出しました。
編集長の手で紙面の形になり、第33回から38回まで、6回分になりました。2月13日から3月26日号に載る予定です。

これで、第2章「暮らしを支える社会の要素」が終わり、第1部「町とは何か」も完成です。次は、第2部「社会は変わった」、第3章「転換期にある社会」に入ります。

この連載では、公共のあり方を考えています。そのきっかけは、日本社会が大きく変化した結果、これまでの行政とその延長では、国民の要望に応えられないという問題意識です。
第1章では、東日本大震災を素材に、災害復旧政策を大きく変えたことを述べました。日本社会が成熟社会へ変貌し、住民や地域が求めるものが変化していたのです。
第2章では、公私二元論では現代社会をうまく捉えることができなくなっていることを指摘しました。また、私たちの暮らしを支える社会的共通資本、特に文化資本の重要性を考えました。
第3章では、これまでの行政が前提としていた社会が、どのように変化したかを考えます。

頑張った甲斐があり、今回執筆分は、記事にして2か月分になります。しばらく、余裕ができました。とはいえ、第3章は、いろいろと基礎数値を調べる必要があり、そんなに余裕を持ってはいられません。

連載「公共を創る」第32回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第32回「社会的共通資本 憲法と文化資本」が、発行されました。
日本に特有な関係資本や文化資本を表現するために、司馬遼太郎さんの言葉「この国のかたち」を借りました。

「この国のかたち」を理解するために、政府、世間・個人の3つの分野ごとに、骨格(法や制度)、実態(運用)、基礎(意識と生活)を、表にして整理しました。
この国のかたちをつくっているのは、国民の意識であり慣習です。そこには、変わるものと変わらないものがあります。
明治以来の、この国のかたちの根本にあったのは、日本は遅れた貧しい国であるという認識であり、豊かな欧米に追いつこうという意識でした。
この認識と意識が、日本の発展を支えました。しかし、豊かさを達成した現在では、それが時代遅れになっています。