カテゴリー別アーカイブ: 新聞記事など

河北新報社『復興を生きる』

河北新報社編集局編『復興を生きる 東日本大震災 被災地からの声』(2022年8月、岩波書店)を紹介します。
河北新報社が、震災10年を機に連載した「東日本大震災10年報道」を、本にしたものです。2021年度新聞協会賞企画部門を受賞したとのことです。

大震災の被害については、たくさんの報道と記録があり、その後の復興についても、継続的に報道されています。しかし、10年を機にその復興を振り返ることは、価値があります。
自然災害は自然が引き起こすもので、防ぐことができない部分もあります。他方で復興は、私たち人間が取り組むものです。10年というのは一つの区切りですし、津波被災地ではほぼ復興工事は完了しました。
町がどのように復興したか、産業や暮らしがどう変わったか。それを検証して欲しいです。復興庁も、インフラの復旧だけでなく、産業となりわい、人とのつながりやコミュニティの再生も支援しました。インフラの復旧だけでは、町の暮らしが戻らないと気づいたからです。

政府や自治体もその記録を残していますが、地元の新聞社という立場から復興を振り返ってもらうことは、政府と自治体にとっても有意義だと思います。時に厳しい意見もありますが、今後起きるであろう大災害の際に教訓となります。
当事者も関係者も最善を尽くしたのですが、初めての経験でもあり、手探り状態でした。振り返って「こうすればよかった」ということもあるでしょう。第10章で、復興庁が取り上げられています。

私の発言も、93ページ、212ページに載っています。2021年3月18日の記事は、収録されていないようです。

読売新聞静岡版に載りました

今朝7月6日の読売新聞静岡版に、私のインタビューが載りました。「元復興次官に聞く 熱海土石流 再建住民納得の議論を」です。
熱海市伊豆山での大規模土石流災害発生から1年が経ちました。街の復興にあたっての留意点をお話ししました。報道では原因となった盛り土の責任追及が大きく扱われているようですが、それはそれとして、住民にとって重要なことは、住宅と街をどのように再建するかです。

東日本大震災での復興でも、「国が決めれば、早くてよい案ができる」との声もありましたが、それは違います。自分たちの街をどのように再建するかは、住民と市役所が議論して決めることです。
もちろん、経験がない自治体には国などが技術的支援をする必要があります。東日本大震災では、いくつもの地区で、都市再生機構のお世話になりました。市役所職員も初めてのことでしょうが、住民が安心して暮らせるまちをつくることは、自治体の使命です。頑張って欲しいです。

朝日新聞、「国策」の責任

6月20日の朝日新聞社会面、「「国策」の責任」(下)に、私のかつての発言が載りました。

・・・国から被害者への謝罪もない。
「経産省からおわびが一言もないのは理解に苦しむ」
11年3月31日。経産省の会議室に、総務官僚だった岡本全勝氏の強い口調が響いた。当時、津波被災地域を支援する事務方トップだった。
原発事故の対応は、津波被災者の支援体制に比べ大幅に遅れた。会議は経産省が主催。津波対策をまねて、福島の避難者を支援する組織を立ち上げようと、各省庁の局長級を集めた。
だが、経産省は各省庁に課題と報告をさせるだけで方針をはっきり決めない。原発事故が起きた後に被災地や住民がどうなるかの想定を全くしてこなかった。それが露呈した。
各省庁の担当者はいら立ちを感じていた。岡本氏が発言すると、出席者は一様に頷いたという。
その後、復興庁次官や福島復興再生総局事務局長になっても、岡本氏は経産省から復興庁に出向してくる官僚らに言い続けた。
「なぜ経産省は謝らない。原子力安全・保安院がお取りつぶしになり、謝る組織がなくなったからか」・・・

このいきさつについては、拙著『東日本大震災 復興が日本を変える』28ページに書きました。そこでも引用しましたが、福山哲郎・当時官房副長官がその会議に出席しておられて、著書『原発危機 官邸からの証言』(2012年、ちくま新書)に書かれています。
失敗を起こした組織が、取りつぶされることがあります。ところがそれでは、おわびや償いをする主体がなくなることがあります。私は、それを「お取りつぶしのパラドックス」と呼んでいます。「責任を取る方法4

共同通信配信「東日本大震災11年 復興の課題」

共同通信社「識者評論」に「東日本大震災11年 復興の課題」を寄稿しました。「計画策定 人口減を前提に」という表題で、いくつかの地方紙に掲載されています。

社からの依頼は、復興の反省点、特にインフラ復旧が課題になったのではないか、今後同じ轍を踏まないためにどうすればよいかです。
そこで、批判を受けた事業を取り上げました。過大な防潮堤、新しい町での空き地、新設住宅が空き家になる恐れの三つです。
関係者は誰も、無駄なものを作ろうとしたのではありません。この三つに共通するのは、人口が減少する地域では元に戻すと過大になるということです。今後の大災害で町を復旧する際には、この点を念頭に置いておく必要があります。

福島民友新聞社編集局編『東日本大震災10年 証言あの時』

福島民友新聞社編集局編『東日本大震災10年 証言あの時』(2022年、福島民友新聞社)が発行されました。紹介文には、次のように書かれています。
「東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から10年。今だからこそ語られる「あの時」の決断。福島県の被災市町村長らのインタビューで明かされる震災ドキュメント。 福島民友新聞社で連載した「震災10年 証言あの時」のうち2020年9月11日から21年3月1日までに掲載した25編、21年6月7日から10日まで掲載した「番外編」の3編を書籍化した」
貴重な証言集になっています。

私も、出ています。昨年2月18日と19日に掲載されたインタビューです。「2月18日福島民友インタビュー記事「政府の力が試された」
今読み返すと、えらくくだけた語調で語っています。インタビューの際に、聞き役の菅野篤司記者に、気を許しすぎたようです。また、私の発言をそのまま活字にしてあるので、関西弁のままです。
菅野記者は非常に厳しい記者ですが、私たちの立場も理解してくれました。10年間を振り返って、いわば「戦友」のような気持ちになって、気軽にしゃべったようです。