「自然科学」カテゴリーアーカイブ

タイヤもマイクロプラスチック発生源に

4月25日の朝日新聞に「マイクロプラ汚染、タイヤからも 摩耗し粉じんに、海や森の生き物から検出」が載っていました。

・・・近年、プラスチックによる汚染が環境問題の一つとして指摘されている。その中でも、私たちの移動手段として欠かせない自動車が汚染源となっている。
汚染源として懸念されているのが、「タイヤ摩耗粉じん」だ。車の走行時にタイヤが路面と摩擦することで発生する、タイヤの「トレッド」という表面の素材と道路の舗装材が混ざった微小な粉じんのことをいう。
多くの粒子の大きさは約0・1ミリで、髪の毛の太さと同じくらい・・・
・・・粉じんは、大気中や土壌へ、雨に流されれば川から海へ流れ込む。国際自然保護連合(IUCN)の2017年の報告書では、海へ流出するマイクロプラスチックの約28%がタイヤ由来だと推計されている・・・

・・・国内でも生き物の体内から検出された。熊本大などの研究チームによると、沖縄本島の北部に生息する飛べない鳥、ヤンバルクイナの体内から、タイヤのゴム片が見つかった。184個のゴム片が体内にあった個体もいたという。えさとなるミミズからも検出されたことから、えさを介して摂取されたと考えられる。

「森の中に生息するヤンバルクイナの体内から検出されたことは驚くべきことだ」
熊本大の中田晴彦准教授(環境化学)は、人間から離れた場所でくらす生き物にも影響が出ている可能性を危惧する。「タイヤから毒性のある化学物質を減らすなど、環境負荷の少ない物質に代替することが必要だ」と話す。
タイヤ摩耗に一部含まれる、2・5マイクロメートル以下の粒子(PM2・5)は、人の呼吸器系に影響を与えるおそれもある・・・

認知症が死因の首位に

3月22日の日経新聞に「認知症 死因首位に」が載っていました。ネット記事と紙面とは少し異なります。

・・・慶応義塾大学や米ワシントン大学の研究グループは21日、日本人の過去30年の健康状態を解析し、2015〜21年で最も多い死因は認知症だとする研究成果を発表した。医療技術の向上によって、死因に占める脳卒中の割合が低下した・・・

記事についている表によると、1990年での死因の順位は、脳卒中、虚血性心疾患(心筋梗塞など)、下気道感染症(肺炎など)、胃がん、肺がんの順で、次の6位が認知症です。これに対し、2021年では、認知症、脳卒中、虚血性心疾患、肺がん、下気道感染症の順で、胃がんは7位になっています。

・・・厚労省の人口動態統計は死亡届を基に集計している。誤嚥性肺炎や肺炎のほか、いわゆる自然死である老衰が死因の上位を占める。認知症はこうした死因のきっかけとなる。認知症に詳しい東京大学の岩坪威教授によれば「認知症の原因となる病気では嚥下障害が合併症として現れることが多いほか、寝たきりでは飲み込み自体も難しくなり、誤嚥性肺炎などにつながる場合がある」という・・・

如月の望月に桜は咲いたか

4月7日の朝日新聞「月刊データジャーナリズム」「京の花見1200年、地球が分かる」が載っていました。
・・・古文書や日記には「桜が満開」「花見をした」といった記録が残り、京都の桜は満開日が1200年余にわたって断続的に確認できる世界で最も長い花のデータとされます・・・
・・・大阪公立大の青野靖之准教授(農業気象学)は、京都でヤマザクラがいつ満開になったのかのデータを1990年ごろから集めている。史書や日記から日付がわかる記録を探し、812年から今年まで1200年余りのうち、837年分の満開日を特定した・・・
・・・青野さんがまとめたデータを分析すると、満開日は4月中旬が多く、最も遅かったのは1323年の5月4日だった。それが、1820年代ごろからどんどん早くなり、近年は毎年のように記録を更新。これまでに最も早かったのは2023年3月25日で、次が21年3月26日だった・・・

ついている図表を見ると、江戸時代までは、平均では元日から100日以降に咲いています。もちろん、早い年も遅い年もありますが。
西行法師が、「願わくは花の下にて春死なむ その如月の望月の頃」と読んだ如月の望月は、旧暦の2月15日の満月、新暦だと3月半ばから下旬ですよね。これだと、如月の望月のころは、桜は咲いてないのでは。
「弥生の望月のころ」では、駄目だったのかなあ。

「近代発明家列伝」

橋本毅彦著『近代発明家列伝ー世界をつないだ九つの技術』(2013年、岩波新書)を読みました。なぜこの本を読もうと思ったのか、思い出せないのですが(反省)。

なぜこの9人が選ばれたのかは、次のように説明されています。
最初の3人は、時間、動力、空間に関わる技術で、地球規模での一体化をつくる先駆けでした。
ハリソン──世界時刻の計測
ワット──産業革命の原動力
ブルネル──大英帝国の技術ビジョン

次の3人は、音声や通信技術に革命をもたらしました。
エジソン──発明と経営の間で
ベル──電信から電話へ
デフォレスト──無線通信とラジオ放送

最後の3人(4人)は、現代人の活動範囲を飛躍的に拡大させる交通技術をもたらしました。
ベンツ──ガソリンエンジン搭載の自動車
ライト兄弟──空間意識を変えた飛行機
フォン・ブラウン──宇宙ロケットとミサイル

皆さん、どれだけ知っていましたか?
もう一つ、この本が訴えているのは、技術が革新的なだけでは普及せず、それを社会の需要に適合させること、「売れる」ようにすることが必要です。この部分は、発明家ではなく、起業家の役割になります。本人が行う場合もあります。「人に知られることなく研究していた」では、社会に認められず、普及もしません。時には、発明家の意図とは違う目的で使われる場合もあります。
科学の社会史

強い心臓

ここで言いたい「強い心臓」は、強心臓などとは違います。
人間や動物の心臓は、素晴らしいですね。一生の間、一度も休むことなく鼓動を続けるのです。止まると、死にます。それどころか、しばらく休憩しただけで、死んだり、脳死になります。

インターネットで調べると、哺乳類の心臓は一生の間に15億回打つ、動物はその大きさにかかわらず23億回と書かれています。「視野の時間的広さ・ゾウの時間 ネズミの時間2

人間の心臓は、1分間に60~80回収縮し、約5リットルの血液量が全身に送り出されているとのこと。5リットルとは、1リットルのペットボトル5本分です。すごい量です。
拍動の回数は1日約10万回、一生の間には40億回以上も打ち続けるという記述もあります。1日10万回、一生に40億回と聞くと、自分の心臓を褒めてやりたいです。
その心臓に感謝して、休ませてあげたいですが、それをすると死んでしまうし。逆に、ハラハラドキドキして心臓に負担をかけています。良くないですね。