「自然科学」カテゴリーアーカイブ

世界で酷暑、損失600兆円

7月13日の日経新聞に「世界で酷暑、損失600兆円」が載っていました。

・・・世界で酷暑が続いている。日本の6月は観測史上最も暑かった。30日には全国100地点で35度を超え、7月も全国で「10年に1度」という猛暑日が続く見込みだ。スペインやイタリアでも連日、最高気温が40度を超え、警報を出す事態となっている。日本の6月中旬の記録的な高温は人為的な温暖化がなければ起こりえなかったと研究者は結論づけた。選挙でも国民の気候変動の影響への関心は高まりつつある。

スペインでは気温が46度まで上昇した。フランスでは多くの学校が休校などの措置をとった。イタリアでは一部の地域で日中の屋外労働が禁止となった。
猛暑は米国でも観測されている。マサチューセッツ州のボストンでは39度に達する日があり、6月の最高気温を更新した。カリフォルニア州では新たな山火事が発生した。
日本も気象庁が7月1日、6月の国内の平均気温が平年より2.34度上回り、統計を始めた1898年以降で最も高くなった。
温暖化は世界で起こるインフレとも密接に関わる。現状のまま気温上昇が続けば、作物の不作が続き、2035年まで食料のインフレ率が年間最大約3ポイント増える恐れがある。カリフォルニア州の25年の火災ではインフラや建物・住居などが損壊し、最大40兆円の経済損失が出たと推計された。
温暖化対策の国際ルール「パリ協定」では、産業革命以前からの気温上昇を1.5度以内に抑える目標をかかげる。近年、世界はこの目標を上回る勢いで気温が上昇している。平均気温の上昇幅は24年に世界で初めて1.5度を超えた・・・

・・・気候変動は各国のインフラに打撃を与える。豪雨や干ばつといった異常気象の頻発は道路や水道、送電網など既存のインフラに甚大な被害をもたらし、経済的損失も深刻だ。将来的に異常気象に耐えるインフラの整備・維持への投資も必要になる。
国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第6次評価報告書によると、気候変動による世界のインフラの損失額は、平均気温が2度上昇した場合に2100年に4.2兆ドル(約600兆円)に上ると推計される。
気候変動による海水温の上昇は、台風や大雨の勢いを強める。米マッキンゼー・アンド・カンパニーによると暴風や河川の洪水は交通、通信とあらゆるインフラにとってリスクが高い。また極端な乾燥現象と干ばつは水道の利用を難しくし、気温の上昇は空港やデータセンターを襲う・・・

記事には、さまざまな項目が載っています。ご関心ある方はお読みください。

ひとりぼっちはアリにもキツい

7月1日の朝日新聞、山中季広コラムニストの「ひとりぼっちはアリにもキツい…孤立の時代を生き抜くには」から。

・・・ 「アリも社会性の生き物。やはり孤立には弱い。集団から1匹を引き離すと、寿命が急に縮みます」。国立機関「産業技術総合研究所」の研究グループ長である古藤日子(あきこ)さん(42)は話す。
野生下では数百匹、数千匹の群れで生きるクロオオアリが、実験室で何日間生きられるかを調べた。10匹の群れで生きるアリは半減するまで約67日だったが、1匹で暮らす隔離アリたちの半減寿命はわずか7日。10分の1に縮んだ。

集団アリはエサを収集すると巣に戻り、仲間たちに口移しでエサを配る。だが孤立アリは巣に入るのを嫌がり、エサを吐き散らした。
なぜ孤立すると早死にするのか。隔離によるストレスから遺伝子の働き方が劇的に変わり、人間の肝臓と同じ働きをする「脂肪体」の機能が鈍くなることがわかった。
「安易にヒトにあてはめることは禁物ですが、アリの細胞に起きる変化を解明し、孤立に屈しないヒントを得たい」と古藤さん。研究成果を「ぼっちのアリは死ぬ」と題して刊行したばかりだ・・・

白亜紀の海、イカだらけ

7月7日の朝日新聞夕刊が「白亜紀の海、イカだらけ」を伝えていました。
・・・恐竜がいた白亜紀時代、海の中はイカだらけだった――。こんな研究成果を、北海道大学などの研究チームが科学誌サイエンスに発表した。アンモナイトのように硬くて残りやすい殻を持たず、これまで見つけることが難しかったイカの化石を、特殊な装置を開発することで、約1億年前の岩石の中から大量に発見することに成功した。

イカはアンモナイトが恐竜とともに約6600万年前に絶滅した後、殻を持たずに泳ぐ能力を向上させ、多様に進化したと考えられてきた。
北海道大学の池上森(しん)研究員や伊庭靖弘准教授らは、イカの化石も岩石の中に隠れて残っていると考えた。注目したのが、イカのあごにあたるくちばしだ。「からすとんび」とも呼ばれる。
ただ、イカのくちばしは、もろくて壊れやすく、岩石に化石が含まれていたとしても、取り出すのが難しい。チームは北海道の各地で見つかった約1億~7千万年前の海でできたこぶし大の岩石35個を、全自動装置で少しずつ削りながら写真をたくさん撮影。それを積み重ねてフルカラーの3次元画像データを作り、データを分析した。

調査の結果、長さが平均3・87ミリのイカの下あごのくちばしが263個見つかった。形などの特徴からイカの新種39種を含む40種に分類できることがわかった。大きさは現在のイカとだいたい同じで、15~20センチと推定された。
岩石からは、特徴が異なるアンモナイトやタコが持つくちばしの化石も見つかったが、イカのくちばしが最も多く、アンモナイトが絶滅する前から、イカが栄えていたことがわかった。伊庭さんは「白亜紀の海は、従来の定説に反してイカだらけだったことが明らかになりました」と話している・・・

ナメクジなども化石が残らないでしょうから、いつ頃からどのくらいいたのかは、よくわからないのでしょうね。

歴史を捏造する人工知能

6月5日の朝日新聞オピニオン欄「生成AIと歴史」、大知聖子・名城大学准教授の「コスパ社会の危険な「知の革命」」から。

―歴史学者として、生成AIの急速な進化をどう見ていますか。
「研究者が評価・検証することが前提ですが、情報処理や単純作業など、歴史学研究で生成AIを活用すると便利な場面はあります。ただ、一利のために百害を生み出しかねない、というのが私の感覚です。生成AIが作り出す『歴史』が、現実社会の歴史認識をゆがめる可能性があるからです」
「グーグルなどで調べものをすると、生成AIの『答え』が上位に出てくる時代です。歴史的な写真や映像のフェイクも既に生成されているようです。例えば、過去の日本軍の侵略を美化する画像が大量に流布したら、多くの人の考えに影響を与えてしまうのではないかと危惧しています」

―歴史の捏造や改ざんは有史以来あります。生成AIの何が特別なのでしょうか。
「リスクが三つあります。(1)偽情報を誰でも簡単に低コストで大量生成できる(2)生成されたコンテンツは『公平・中立で正確』と誤解されやすい(3)近い将来、権力者を含め、誰も制御できなくなる恐れがある、です」
「生成AIは、人間の過去の創作物を集め、バラバラにして並べ替え、吐き出すにすぎない。ブラックボックスから出てくる、生成過程の分からない『答え』を多くの人がうのみにするのは、占いで意思決定をしていた前近代に近い状態と言えます」

―ブラックボックスというのは。
「生成AIが学習する手法の中には、技術や仕組みが開示されていないものがある。プロセスが不明なので、私たちからはどうやってその答えにたどり着いたのか検証できず、偏った意見に調整されていても検証できません」
「歴史学は、科学的手法を用いて史料の信頼性を見分けてきました。経験的証拠、再現性、反証可能性の三つの観点から、ある仮説が本当にあり得るものかを検証していきます」
「経験的証拠とは、いつどこで誰が書いたかが分かる『史料』のこと。複数の研究者から見ても、同じ史料から同じ仮説が得られるのが再現性です。反証可能性とは、ある仮説が経験的証拠によって否定される可能性があるということ。何度も検証や反証される過程で、有力視されたり覆ったりします。生成AIがつくる『歴史』はそもそも経験的証拠、再現性、反証可能性の手続きを経ていないので史実とはみなされません」

―生成AIによる偽歴史が巧妙になり、研究者もだまされる日がくる?
「歴史学では、先述の手続きを経ない仮説は史実として扱いません。が、偽史料にはだまされるかもしれません。史料の検証がより重要になってきます。専門家の声よりセンセーショナルな偽画像の方が拡散力があるので、世間に偽歴史が広がり収拾がつかなくなることもあり得ます」

タイヤもマイクロプラスチック発生源に

4月25日の朝日新聞に「マイクロプラ汚染、タイヤからも 摩耗し粉じんに、海や森の生き物から検出」が載っていました。

・・・近年、プラスチックによる汚染が環境問題の一つとして指摘されている。その中でも、私たちの移動手段として欠かせない自動車が汚染源となっている。
汚染源として懸念されているのが、「タイヤ摩耗粉じん」だ。車の走行時にタイヤが路面と摩擦することで発生する、タイヤの「トレッド」という表面の素材と道路の舗装材が混ざった微小な粉じんのことをいう。
多くの粒子の大きさは約0・1ミリで、髪の毛の太さと同じくらい・・・
・・・粉じんは、大気中や土壌へ、雨に流されれば川から海へ流れ込む。国際自然保護連合(IUCN)の2017年の報告書では、海へ流出するマイクロプラスチックの約28%がタイヤ由来だと推計されている・・・

・・・国内でも生き物の体内から検出された。熊本大などの研究チームによると、沖縄本島の北部に生息する飛べない鳥、ヤンバルクイナの体内から、タイヤのゴム片が見つかった。184個のゴム片が体内にあった個体もいたという。えさとなるミミズからも検出されたことから、えさを介して摂取されたと考えられる。

「森の中に生息するヤンバルクイナの体内から検出されたことは驚くべきことだ」
熊本大の中田晴彦准教授(環境化学)は、人間から離れた場所でくらす生き物にも影響が出ている可能性を危惧する。「タイヤから毒性のある化学物質を減らすなど、環境負荷の少ない物質に代替することが必要だ」と話す。
タイヤ摩耗に一部含まれる、2・5マイクロメートル以下の粒子(PM2・5)は、人の呼吸器系に影響を与えるおそれもある・・・