カテゴリーアーカイブ:社会と政治

日本の開国を妨げるもの

2010年3月29日   岡本全勝

厚生労働省が、26日に、経済連携協定(EPA)に基づき来日したインドネシア人とフィリピン人の3人が、看護師の国家試験に合格したと発表しました。初めて門戸を開いたことは良いことです。しかし、3人という数字を、どう評価しますか。
27日付け日経新聞によると、昨年は受験者は82人で合格者はゼロ、今年は254人が受験して合格は3人です。全体の合格率が90%に対し、EPAで来日した外国人の合格率は1%でしかありません。日本人ならほとんどの人が合格するのに、彼らが合格しないのは日本語の壁によります。外国人にとって日本語が難しいことと、さらに専門用語が難しいのだそうです。
また、認められた滞在期間は3年で、受験機会は3回までです。介護福祉士にあっては滞在期間が4年ですが、3年の実務経験が必要なので、受験機会は1回になります。
日経新聞の記事には、各国の労働力人口に占める、外国人の割合が図示されています。アメリカが15%、ドイツ・イギリス・フランスが5~10%です。それに対し、日本は1%です。もちろん、移民でできた国アメリカ、植民地からの人を受け入れたイギリス・フランス(もっともこの人たちの多くは、イギリス国籍やフランス国籍を持っていますから外国人ではありません)、労働力不足の時にトルコなどから労働力を受け入れたドイツというように、歴史が違いますが。
「失業者が多い時に、外国人労働者を受け入れるのか」という意見もあります。しかし、介護の現場や3Kの職場で、日本人労働者が不足し、外国人労働者に頼っている、頼ろうとしていることは事実です。

続・日本はどこへ行くのか

2010年3月27日   岡本全勝

26日の日経新聞経済教室に、小宮山宏前東大総長が、課題先進国日本の戦略について書いておられました。小宮山先生の「課題先進国」は、このHPでも何度か紹介しました。「海外に出て行かなかった日本」「輸入商社としての東大と官僚」など。
日本や韓国の例から見て、中国の高度成長は今後5~10年しか続かない。新興国の需要は、いずれ飽和する。需要には、飽和に向かう「普及型需要」と、まだ姿を見せていない需要である「創造型需要」がある。日本は、自らの課題解決をする中で創造型需要を掘り起こし、新産業を生み出し、世界に輸出して、先行者利得を得ることを目指すべきだ。低炭素社会と活力ある高齢社会が、重要分野になる。
・・これまでの日本は、所得倍増計画に代表されるように、政府主導で産業を導入し、GDPを増やして国民の暮らしをよくするという途上国型の体制で歩んできた。導入する産業がなくなった時点で、この体制は破綻している。今必要なのは、課題解決に向けて「日々の暮らし」を自ら創る、その結果新産業が生まれるという逆向きの流れである・・
詳しくは原文をお読みください。

その時代の意味

2010年3月21日   岡本全勝

歴史書の表題をみていると、うまい表現だなあと、感心するものがあります。例えば、講談社の「日本の歴史」シリーズ(2002年頃発刊、講談社学術文庫に収録中)には、次のような本があります。
「文明としての江戸システム」「維新の構想と展開」「明治人の力量」「日本はどこへ行くのか」など。単に「××時代の歴史」といった表題と違い、視角が鮮やかで、その時代の特徴を一言で切り取っています。もちろん、視角がはっきりしているということは、その他の見方を切り捨てているということですが。
これらの表現に触発されて、現在の日本はどれだけの構想を持ち、力量を持っているのか、考えさせられます。また、後世の人から、どのような時代であったと評価されるのか、これまた想像してみます。
その他、講談社の「興亡の世界史」シリーズ(現在刊行中)には、「大英帝国という経験」「東南アジア 多文明世界の発見」「モンゴル帝国と長いその後」などもあります。これらも「なるほどね」と、思います。東京大学出版会の「新しい世界史」シリーズ(1987年頃)の「支配の代償 英帝国の崩壊と「帝国意識」」なども、表題だけで歴史の見方が変わりますね。

2番手をやめ、世界一を目指せ

2010年3月20日   岡本全勝
梅澤高明さん(A.T.カーニー日本代表)が、日経新聞のサイト「BIZ+PULUS」で、ビジネスコラム「グローバル超競争時代の成長戦略」を連載しておられます。日本企業が、世界経済の競争の中で、どうしたら生き残れるかについてです。
3月16日は、「グローバル化加速に向けた変革」でした。グローバル市場で勝ち残るために、自前主義では限界がある。その際、技術、生産拠点などを買収や提携で手に入れる企業は多いが、もっと重要な「経営人材」や「ブランド」を、海外から手に入れて活用している企業は少ないことを指摘しておられます。私は門外漢なので、正確なところはわかりませんが、なるほどと思うことが多いです。
17日には、野村ホールディングスが、旧リーマン・ブラザーズ出身者を経営陣に抜擢する人事を発表しました。2008年に、破綻したリーマンから部門を買収したことと合わせ、これにあてはまる事例です。
さて、その記述の中で、韓国サムスン電子の取り組みが、紹介されています。
・・同社は過去十数年で、低コストを武器とした「日本企業のフォロワー」モデルから脱却し「グローバルリーダー企業」に進化した。前会長は1993年、「変えよう」経営を掲げ、「ナンバー2精神を捨てろ。世界一を目指せ」と号令を発した・・
との記述があります。その後に、どのようにして人材を確保し、組織をグローバル化したか説明しておられます。
このページで書いている「ガラパゴスからの脱出」「日本はどこへ行くのか」の参考事例として、引用しておきます。

日本はどこへ行くのか・その7

2010年3月10日   岡本全勝
これからの日本を規定する要因として、「国際環境」「国民」と「リーダー」を解説してきました。リーダー論の1は、リーダーが戦わなければならない「敵」についてでした。その2は、リーダーの役割でした。その3は、誰がリーダーになるかです。
3 誰がリーダーになるのか
誰が、新しい時代を切り開くリーダーになるか。それは、まだ見えていません。
大きな改革期には、旧秩序を破壊する人と、新秩序を作る人の、二種類のリーダーが必要なのでしょう。
前二回の改革は、憲法を書き換える改革であり、統治者が入れ替わる改革でした。今回は、統治体制を変える革命ではありません。前二回と同様に、「この国のかたち」を変える改革ですが、体制改革ではなく、「書かれていない憲法」を変える作業です。日本人と日本社会の基底にある考え方、無意識のうちに行動を規定する意識を変える作業です。それ故に、誰がどのようにして改革するのかが、わかりにくいのです。
政府や政治家を考えると、ここで期待されるリーダーは、サービス提供者としての政府でなく、国民に進むべき道を示す思想家としての政治家でしょう。この半世紀の間、そのようなことをしなくてすんだので、これまでの型の政治家と政党では、担い手になりません。
また、現時点では、日本の主な政党は、国民の階層や集団を代表しているように見えません。もちろん、旧来の社会階層という分類が、役に立たなくなっているので、階層を代表する政党であっても、新しい時代のリーダーにはなれないでしょう。
多くの学者や研究者は、欧米の思想を輸入することを主な仕事としてきたので、そのような延長では、担い手になりません。マスコミも、日々の事件を追いかけるだけでは、大きな期待はできないようです。
新しい時代を開くリーダーは、どのような集団から出てきて、どのような集団が彼を支えるのか。繰り返しになりますが、日本人の思考形態、社会の仕組みを変えるのですから、リーダーが提唱するだけでなく、国民、企業家など様々な人と集団が関わってくる必要があります。
そして、その際には、様々な勢力のせめぎ合いになるのでしょう。後から見れば、あるいは離れて見れば、「なぜ内輪でもめているのだろう」「効率の悪い競い合いをしている」と見えるでしょう。しかしそれは、試行錯誤、諸集団のせめぎ合いであるので、致し方ないことです。
自虐的な見方をしているだけでは、良くなりません。革命待望論でも、解決しません。日々の政治や経済社会活動を、積み上げていくしかありません。はなはだ抽象的、歯切れの悪い話になりました。