先日、日比野大和証券社長が、若いときに泊まり込みで仕事をして、「会社の備品」と呼ばれたことを、紹介しました。私も若いときに泊まり込んだのですが、「自治省の備品」とは呼ばれなかったと書きました。読者から、反応がありました。
「自治省の消耗品と呼ばれなくて、よかったですね」と(苦笑)。確かに、戦前の日本陸軍では、備品は大切に扱われ、兵隊は消耗品と考えられていたという説もあります。
でも、彼も曰く「若いときは、なぜあのように、仕事がおもしろかったのでしょうか」。その彼も、職場で出世しているのですが。上に立つと、しんどいことが多いです。無我夢中で与えられた仕事をしているときは、満足感があるのでしょうね。上に立つと、悩むことが多くなります。
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生き様-仕事の仕方
会社の備品?
日経新聞7月27日夕刊「こころの玉手箱」、日比野隆司・大和証券グループ本社社長の回顧から。
・・社長室での初仕事は、内外全拠点の幹部社員が集まる会議の資料作りだった・・社長室での仕事は、書類作りに尽きた。限られた時間の中で報告事項をまとめ、役員や監督官庁などに出す。文章を書くのはもともと嫌いではないが、筆力はここで大いに鍛えられた。
主任から課長代理になったばかりの私は、社長室でも最年少、次から次へと仕事が降っている。会社に泊まり込みもしょっちゅうで、いつしか私は口の悪い先輩から、「会社の備品」と呼ばれるようになった・・
私も、職場に泊まり込みを続けた、若い時を思い出します。2週間分の着替えを持って、泊まり込んでいました。1週間、一度もビルを出なかった記録を作ったり。夜になったら、近鉄バッファローズのユニフォームに着替えて仕事していました。さすがにこれは、上司に「教育的指導」を受けました。
「自治省の備品」とは、呼ばれませんでしたが。毎日、終電間近になると(タクシー券は貴重でした)、主任さん(庶務担当補佐)が、「みんな早く帰れよ~。全勝君は泊まるだろうから、よろしくね」と言って、帰って行かれました。当時は、ちっとも苦痛では、ありませんでした。
難しい判断をする基準
「全勝さんは、ある難しいことを判断し、決断するときに、何を基準にしていますか」と、問われることがあります。私は、次のように、答えています。
私が、難しい判断をする場合に、視点は3つあります。過去、現在、未来です。
1つは、過去の事例であり、歴史です。前例があるなら、それを参考にするべきです。もちろん、その前例通りにしろ、というわけではありません。
ある事案には、そこに至る歴史があります。いろんないきさつと関係者との関わりの結果、ここまで来ているはずです。だいたい、私のところに持ち込まれるのは、関係者の間でもめた案件ですから。それを無視して、白地で判断することは無謀です。
また、専門家がいるのなら、その人の意見を聞いてみるべきです。
第2は、現在であり、部外者です。すなわち、周りの人が、私の結論をどう思うかです。私が正しいと思っても、国会議員やマスコミなどが、「なるほど」と思ってくれないと、収まりません。上司と部下とで、「これくらいが、よいですね」といっても、外部の人が納得しないと、意味がありません。
もちろん、それらの人におもねる、ということではありません。官僚ですから、筋は通す必要があります。
第3は、未来です。未来の人が、どう評価するか。将来の子どもたちに、どのような説明ができるかです。
筋を通す場合、それが正しいかどうか。それは、未来の人たちが評価します。10年後や20年後の人たちに、「私は、このような理由で、このような判断をした」と、説明できるかどうかです。
これは、次のような表現をする場合も、あります。
岡本全勝Aの斜め後ろに、岡本全勝Bがいて、Aに向かって「おまえ、そんなことを言ってよいのか」と、牽制するのです。難しい判断の時は、一人になって、この3つを頭の中で「体操」します。
かつて、このホームページでも、書いたことがあるはずなのですが、検索しても見つからないので、書いておきます。最近も、そのような事態があったので。
7月も忙しい
7月の第1週も、終わりました。今週も、忙しかったですねえ。国会が終了し、参議院選挙が始まって、少しは通常の仕事のペースになるかと、期待していたのですが。
各省の人事異動があり、挨拶に来てくださる方が多かったです。その場で、早速仕事の打ち合わせをしたり。
また、各省とともに、平成26年度予算要求の作業が始まっています。復興庁は、「前年通り」という概念がないので、未来の予測と、その際に必要となる経費の想定をしなければなりません。これは、かなり難しい仕事です。そして、それらの内容を決めるとともに、8月末の概算要求に向けての段取りが、必要です。締め切りに間に合わない仕事は、意味がありません。
もちろん、今年度の各種予算の執行、新たな課題への対応、さらには「新しい東北」のモデル事業を組み立てる作業と、結構盛りだくさんの仕事が待っています。
私の仕事は、それら課題を一覧表にして、各担当参事官に実行の工程表を作ってもらうこと、その進行管理をすることです。そして、その状況を大臣に随時報告することです。「前年通り」とは行かないので、決まっていることの実行だけでなく、未来予測をしながらの執行管理が重要です。
職員には、年休を取ってもらいたいのですが。「国会が終わったので、休みを取れよ」と言ったすぐ後に、「あの資料、まだできないかなあ・・」と催促しています。悪い上司です。
復興の現状を見える化する
(復興の現状を見える化する)
「復興に向けた道のりと見通し」(最も簡単な図)を、更新しました。ご覧頂くとわかるように、がれき片付けや住宅着工など、着実に事業が進んでいます。もちろん、工事が進むと、新しい課題も見えてきます。
ところで、霞が関では、各省で夏の定期人事異動が行われました。異動した人が、挨拶回りに来てくださいます。ありがたいことに、これまで多くの省の方と仕事をし、知り合いになったので、さまざまな方が来てくださいます。今の事務所は、霞が関から少し離れている民間ビルですが、そこまで来てくださるのです。昇進される方の裏で、退職される方も多いので、寂しいものもあります。
ある官庁の幹部が、私の部屋の前に貼ってある、この「復興に向けた道のりと見通し」を見て、「全勝さんらしいなあ・・。一目でわかるね」と、お褒めの言葉を頂きました。この図のアイデアは私ですが、仕上げて、さらにわかりやすくしてくれたのは、A君とI君です。