カテゴリーアーカイブ:仕事の仕方

話す力、自分との対話を重ねる

2023年3月1日   岡本全勝

2月21日の朝日新聞夕刊「取材考記」、大阪スポーツ部、堤之剛記者の「16歳で全豪テニス準V 自ら俯瞰し培う「話す力」」から。

・・・16歳とは思えぬ「力」に驚かされた。
テニスの4大大会、1月の全豪オープン車いす部門男子シングルスに初出場した小田凱人(ときと)が準優勝した。攻撃的なスタイルも目を見張ったが、興味深かったのが記者会見やスピーチで発する言葉だった。
決勝後の会見。小田は優勝したアルフィー・ヒューエット(英)を巧みに言語化した。「アルフィー選手はコートの外からでもコートの隅を狙うことができる。警戒していたが、慣れていなかった。そのボールに対応できなかった」
4大大会4度目の出場で初の決勝を終えたばかり。並の16歳ならば興奮は冷めていないだろう。だが、この種目の最年少出場者は、試合の局面などについての質問に、丁寧にすらすらと答えた。大会を通じて自らを俯瞰していた。

なぜ、大勢の前でよどみなく話せるのか。「最初は全然話せなかった。ただ、10代で4大大会を経験し、記者会見という場を設けられたことで話すのが苦でなくなった」
とはいえ、10歳で競技を始め、昨年5月の全仏で4大大会デビューを果たしたばかり。スピーチトレーニングもしていない。言葉に詰まってもおかしくないが、そんなそぶりは見せない。心がけていることがあるという。「答えるときに、自分の気持ちをどう伝えるかを考えている」

取材を続けていくうちになぜ「話す力」があるのか、少しわかった。一つ一つのプレーに明確に根拠があり、内なる自分と対話を重ねているから。だから、他者に聞かれてもすぐに答えられる。
小田は対戦相手と自己を分析しながら、試合を進めていた。相手を上回る方法はあるのか。指導者に頼ることなく、コートの状況に合わせて勝機を探った。

他競技の高校年代の選手を取材すると、「自分たちの野球」「自分たちのサッカー」といった言葉を使う。それが具体性を欠き、目指しているものが不透明なことがある。小田は「自分のテニス」とは言わない。具体的で柔軟な思考。こんな高校年代の選手が増えれば、日本スポーツ界は変わると思った・・・

「うその勤勉」やめ生産性上げよ

2023年2月21日   岡本全勝

2月14日の日経新聞私見卓見は、「勤め人改革」アドバイザー・安田直裕氏の「「うその勤勉」やめ生産性上げよ」でした。

・・・日本人は勤勉な国民といわれ、頑張る姿は好感を持って評価される。また、他人の目を意識し、どうすれば自分に有利かを考えて行動する。「勤め人」は人事評価で好印象を得ようと勤勉さを競い合う。生産性を上げるための「本物の勤勉」であれば良いが、一生懸命働いているふりをしてしまう。
ムダな仕事を増やし、忙しく見せることに腐心する。残業をいとわず、有給休暇を取得せず、勤勉さをアピールする。例えば周囲が、特に上司が帰らなければ、進んで退社しない。目配せしながら時間調整して働くことは、非効率だ。まさに「うその勤勉」である。これではエンゲージメントは上がらず、生産性は改善しない・・・

・・・「勤め人」全体が、自分の評価を下げまいとムダな仕事をつくり、忙しく動き回っている。特に、部下を管理する上司自らが「うその勤勉」を実践していては始まらない。今の状況を早く変えなければならない。
日本の時間あたり労働生産性は悪化し、2021年は経済協力開発機構(OECD)加盟38カ国中27位である。主要7カ国(G7)中最低で、金額は米国の6割弱だ。このまま手をこまぬいていては、企業の生産性は改善しない。それどころか、日本の経済力は衰退の一途をたどる。罪を犯さないためにも「うその勤勉」はもうやめよう。同調圧力に屈しないで、率先して行動を変革する「最初の一人」になろう。部下を持つ管理者なら、なおさらである・・・

ケアレスミスを防ぐ

2023年1月30日   岡本全勝

1月17日の日経新聞夕刊に、精神科医の和田秀樹さんの「入試本番 ケアレスミスどう防ぐ」が載っていました。これは役に立ちます。原文をお読みください。ケアレスミスとは、不注意による失敗、うっかりミスのことです。すっかり日本語になっていますね。

・・・入学試験でケアレスミスをどうすればなくせるかというのは大切なことだ。経験的に言われるが、ケアレスミスがなくなれば偏差値が10変わるとされる。
実際に十分に合格できる学力がありながら単純な計算ミスや問題文の読み間違いなどで不合格になる受験生は後を絶たない。
原因も不注意によるミスと考えられているようで、対策というと「気をつけろ」「見直しをしっかりやれ」など精神論が多い。
長年、受験生をウオッチしている立場からいうと、少なくとも本命校の入試ではミスしないように受験生たちは気をつけている。だが、それでも注意不足による失点は生じてしまう。
以前、「失敗学」を提唱した東京大名誉教授の畑村洋太郎先生と対談して本を作ったことがある。注目したのは、失敗は成功のもとなどではなく、放っておくと同じ失敗を繰り返すということだ。繰り返さないために、自分や他人の失敗を肝に銘じる必要がある・・・

・・・このような失敗学や企業の失敗対策をテストでのケアレスミス防止に応用できないかを考えてきた。そこで私が監修する通信教育で受験指導をしている10人ほどの東大生に、受験生がしやすいミス事例を50個集めて分析してもらった。
これらを参考に「ケアレスミスをなくす50の方法」という書籍をまとめた。図表で詳しく記したが、ミスが起きる原因は「油断」「思い込み」「焦り」「見切り発車」「集中力の低下」の主に5つに分類できる。
対策で重要なのはケアレスミスを書きだして、それを自覚したり、原因を分析したりして回避できるよう頭にたたき込むこと。そのために常日ごろやってほしい具体策は3つある。
①返却された答案用紙にケアレスミスによる失点数を目立つように赤字で明記する。つまらないミスでどれだけ損をしたか、意識して自戒するためだ。
②ミスした問題は必ず解き直す。ケアレスミスで誤答しても重く受け止めない人が多い。どんなささいなものでも、解き直すと自分が繰り返してしまう過ちのパターンが見えてくる。
③防止のためのノートを作る。「数式で移項する場合は必ず正負の逆転をチェック」などポイントをまとめて見える化する。内容を目に焼き付けておくことで、ケアレスミスを大幅に減らすことができる。
これらの対策を地道に実践することで、試験を受けるたびにミスをしない体質に変えられる。

試験の本番時にできる対策もある。
例えば、指さしをしながら答えを確認する。文字や数字の写し間違いを防げる。また思い込みによるミスをなくすために、違う角度から問題をみることも必要。検算する場合は逆から計算するのも有効だ。
選択問題では、すぐに答えを導き出せたとしても、もう一度、消去法で確認するという方法もある・・・

プロの経営者のいない日本

2023年1月25日   岡本全勝

1月13日の日経新聞経済教室、久保克行・早稲田大学教授の「企業トップのスキルを問う 経営者の市場を確立せよ」から。

・・・まず、当然のことながら上場企業の経営者には、経営陣に参画する時点で実質的な経営スキルを保有していることが求められる。「実質的な経営スキルを保有している」ということの解釈は様々だが、一つの考え方は、過去に企業経営の経験があるかどうかだろう。
現在の大企業トップは、難易度の高い多くの意思決定が求められる。ふさわしい経験や能力を持つ人が経営者に就くことは、その企業だけではなく社会的にも望ましいといえよう。
ここで疑問が浮かぶ。そもそも日本の経営者は就任前に経営者としてのトレーニングをどの程度受けているのか、言い換えると経営スキルをどの程度保有しているのだろうか・・・

・・・図は2つの指標を示している。一つは「資本関係のない他の上場企業で経営の経験がある経営者」の割合、もう一つは、「資本関係の有無を問わず他の上場企業で経営の経験がある経営者」の割合である。前者が真の意味で経営のプロフェッショナルを示す指標と考えられる。なお、ここでは社長・最高経営責任者(CEO)などの肩書を持つ役員を経営者とした。また非上場・海外企業での経営経験は集計から除外した。
結果は驚くべきものだった。一言で言うと、日本では狭い意味での経営のプロ、すなわち資本関係のない他の上場企業で経営の経験をした経営者によって経営される企業は、全くと言っていいほど存在しないということである・・・

・・・現時点で、経営者の労働市場が機能していない理由の一つは、諸外国と比較して日本の経営者が概して高齢であり、退職後も企業や団体の様々な役職に就いていることがある・・・

オンライン会議の機能と限界

2023年1月24日   岡本全勝

先の日曜日の午前中、オンライン会議に参加しました。ある学術出版について、執筆者と編集者による打ち合わせです。私も、そのうちの1章を分担しています。
この企画が昨年春に始まって以来、様々なやりとりは、電子メールでの連絡と、オンライン会議を組み合わせて行われています。執筆の際の形式などそろえるべき要素は編者から指示があり、執筆者はそれに従って分担執筆します。とはいえ、進めていくうちに、相互に調整をとらなければならないこと、統一した方がよいことが出てきます。そのための、オンライン会議でした。
執筆者が20人を超えます。この人たちが集まるのは、かなり難しいことです。各地から集まるとなると、時間もかかります。それを考えると、自宅から参加できるのは、便利なものです。

参加して、便利なものだと思いつつ、違ったことを考えていました。
参加者は、著名な学者さんたちです。久しぶりにお目にかかる方や、初めてお目にかかる方もおられます。会議が始まる前に、簡単な挨拶はできるのですが、それ以上はできません。
集まっての会議の「効用」は、そのような人たちと挨拶を交わすこと、雑談ができることです。そして、気になっていることを相談したり。親しくなるということは、そういうことですよね。場合によっては、会議後に席を移して話すこと、食事に行くこともあります。

毎年秋にニューヨークで国連総会が開かれ、都合がつく限り総理が出席されます。ところで、総会では各国の代表が入れ替わり、それぞれ主張を述べるだけです。他の国の代表はほぼ出席しておらず、各国の外交官が座って聞いています。それはそれなりに意義はあるのですが、これがどれだけの効果があるのか疑問に思うこともあります。それだけなら、ビデオでの出席と同じです。
ところが、国連総会に各国首脳が出席する意義は、本会議だけではなく、その前後に開かれるいくつもの各国首脳同士の1対1の会議が重要です。これを個別に行おうとすると、日程の調整や各国間の移動など、大変な労力が必要になります。会合に集まるというのは、そのような付随機能があるのです。