「生き方」カテゴリーアーカイブ

生き様-生き方

あなたにとってかけがえのないもの、お国柄の違い

10月25日の朝日新聞国際面「サマータイム ドイツの憂鬱」。この記事は、ヨーロッパで実施されていたサマータイムが、来年で終わる見通しになったこと、特にドイツでは嫌われていたことを紹介した記事です。紹介したいのは、その本筋とは異なった部分です。次のような文章がありました。

・・・世論調査会社フォルザが3年前「あなたにとって、かけがえのないものは何か」とドイツ人に複数回答で尋ねた。最も多かったのが「時間厳守」で90%の人が選び、2位以下の「子ども」(73%)、「セックス」(68%)、「クリスマス」(67%)を大きく引き離した・・・

ふ~ん、ドイツ人にとっては、こうなるのですね。夫や妻が上位に出てこないのは良いのでしょうか。
では、日本人ではどうか。国際比較、年齢別比較などを見てみたいですね。そして、私やあなたならどうでしょうか。

また、この質問の興味深いのは、時間厳守、子供、クリスマスなど、信条、行為、ものなど、およそ比較対象としては同一に並べられないものを、比べていることです。
しかし、日常生活そして人生では、比較不可能なものを選択しなければならないことがしばしばあります。「難しい判断、比較不能なものの選択

匿名の投稿

10月31日の読売新聞1面コラム「編集手帳」に、次のような文章が載っていました。本の通販サイトで、一般の人が星の数やコメントで批評を行う、「レビュー」についてです。
・・・短いコメントながら吟味された感想がある一方で、その通りとはうなずけないものも少なくない。いい本(小欄の勝手な評価ではあるが)なのに、面白い、面白くないといった購入者としての感想ならまだしも、本当に読んだのかどうか、的外れで悪口にしか見えないものものまで目立つ位置に掲示されることがある・・・

同感です。匿名の投稿なので、このような「無責任」な発言ができるのでしょうね。実名、写真入りなら、どこまで書けるか。これは、書評に限りません。
匿名なら無責任なことも書ける。逆に、野菜などで、生産者の名前と写真がついているものがあります。これは安心できます。

鎌田浩毅先生『座右の古典』

鎌田浩毅先生の『座右の古典』(2010年、東洋経済新報社)が、文庫本(2018年、ちくま文庫)になりました。

論語、チャーチル「第2次大戦回顧録」、九鬼周造「いきの構造」など、50冊の古典が、次の8つの分野に分けて紹介されています。
私たちはどう生きるか、私たちは何者か、君たちはどう学ぶか、発想法を転換せよ、人間関係のキモ、情熱・ときめき・モチベーション、リーダーの条件、読書が変える人生。

皆さんが「名前は聞いたことがある」という、古典が並んでいます。しかし、たぶんこのほとんどを、読んだことはないでしょう。私もそうです。
この本は、それぞれの古典の概要、社会に与えた影響などが、簡潔にまとめられています。優れた読書案内です。古典そのものに挑戦することも良いことですが、その本か描かれた背景やその本が社会に与えた影響などを知らずに読むと、苦労します。

しかも、何人かの専門家が分担執筆したのではなく、先生が一人で書かれたのです。
それにしても、鎌田先生がこれだけの読書家だとは。改めて、尊敬します。しかも、先生は理科系の研究者で、社会科学や人文科学の専門家ではないのです。
先生が、時間とお金と脳みそを費やして読まれた成果を、840円の文庫本で読むことができるのです。ありがたいことです。
この本を読んで、原本に当たろうという人や、かつて途中で投げ出したけれど再度挑戦しようという人も、出てくるでしょうね。

スマートでないスマートフォン

スマートフォンって、スマートと名前がついているのに、使っている人にはスマートでない人が多いです。歩きながら操作している人や、電車中で操作している人です。この話題は何度も書いていますが、最近も嫌な思いをしたので。

1 画面に集中することで、周囲への気配りがおろそかになっています。
通路の真ん中に立っていて、周りの人の邪魔になっている人。電車の扉付近に仁王立ちして、通行の邪魔になっている人。
特に、イヤホンやヘッドホンをしている人が困ります。自分の世界に没頭しています。「通してください」と言っても、聞こえていないようです。

先日は、扉が開くと同時に乗ってきて、空いている席に突進し、操作を続けた人がいました。後から、高齢者や子供連れが、乗ってきました。全く素知らぬ風で(実際、気がついていないのでしょう)、操作に集中していました。

2 公衆の面前でゲームをしたり、つまらない画面を見るのは、恥ずかしいと思いましょう。朝の出勤時、きちっとした身なりの会社員が、ゲームに熱中している姿を見ると、と心配します。勉強の本を読んでいる人なら、「感心、感心」と思うのですが。

「私の勝手でしょ」と言えば、それまでですが。あなたが、パートナーとして選ぶ際に、また一緒に仕事をしたい人を選ぶ際に、そんな人を優先しますか。
人前での立ち居振る舞いは、あなたをきれいに見せたり、下品に見せたりします。自分を安く見せることは、やめましょう。
趣味や娯楽は、自宅など他人が見ていない場所で、乗り物なら指定席でやってください。
この項続く

神野直彦先生の人生と思想

神野直彦著『経済学は悲しみを分かち合うために』(2018年、岩波書店)をお勧めします。先生から贈っていただいて、読み終えたのですが、このホームページで紹介するのが遅れました。
先生には、地方分権改革、特に税源移譲の際に、お教えを乞いました。その後、親しくしていただいています。

この本は、先生の自叙伝です。特に、先生がどのようにして財政学を志したか、そしてどのような財政学を目指したかが、書かれています。
経済学、特に財政学が客観的な分析の学ではなく、人の生活と切り離すことができないことが、よくわかります。人間を幸福にする経済であり、そのための学問であると、喝破されます。
既存の財政学・経済学とは違った学説を掲げられ、ご自身でおっしゃっているように、批判を受けられました。しかし、既存の経済学が数字や理論に走り、何のための経済学かを忘れたように、私にも思えます。

そのような部分を詳しくする、算式を詳しくするのではなく、先生は、財政学がどのようなものかについて、新しい枠組みを提示されます。すなわち、財政を、経済システム、政治システム、社会システムという三つのサブ・システムの結節点ととらえます。
私は、公共政策論で、官共私の3元論を唱えていますが、我が意を強くして、授業や著作では先生の財政学を引用しています。

先生の必ずしも順風でない人生も、語られています。回り道をされた学者人生。網膜剥離による視力の減退、これは資料を読む学者にとっては、致命的なことです。それを乗り越えられた苦労。そして、奥様への並外れた愛情(ここは私も負けました)。この項続く