「仕事の仕方」カテゴリーアーカイブ

生き様-仕事の仕方

頼み事が来たら「はい」と言う

6月2日の日経新聞夕刊「人間発見」、舞台プロデューサー 吉井久美子さんの「ブロードウェーで生きる 4」から。

・・・「ウエスト・サイド物語」や「オペラ座の怪人」など数多くの名作の制作や演出を務めたブロードウェーの巨匠、ハロルド・プリンス氏(故人)。同氏の半生を振り返る「プリンス・オブ・ブロードウェー」(2017年上演)を手がけた。
雲の上の人だったハルとの初対面は忘れもしません。劇場で紹介してもらったとき、私のような若手のあいさつに、ハルはさっと立ち上がるのです。同じプロデューサー同士、対等だという彼の気配りでした。当時とてもうれしかったと後に伝えたら「そんなの当たり前じゃないか」と笑っていました・・・

・・・ハルから学んだことはたくさんありますが、一つは「何に対しても『NO(ノー)』から入らないこと」です。もちろん無責任に引き受けてはいけませんが、仕事でも何でも頼み事がきたら最初に「YES(イエス)」と言う。
ハルは他人に「YES」と言ってもらえる話し方も心得ていました。おだてられると頑張ってしまうのは私の元来の性格かもしれませんが、人間はポジティブな気持ちが原動力となるものだと思います・・・

締め切りが仕事を進める

5月16日の日経新聞夕刊コラム「プロムナード」、声優の池澤春菜さんの「我、締め切りを買えり」から。

・・・締め切りとは不思議なもの。
おそらく、締め切りが好き、って人は少数派だと思う。その数少ない1人が、わたし。
あ、でも、好き、というのとはちょっと違うかも。締め切りがないと駄目。締め切りが適度にある生活が好き。締め切り後の解放感が好き。
だって人は怠惰な生き物。いつでもいいよ、と言われれば、一生やらない。プライオリティを上げるには、外圧が必須なのだ。あとは脳の報酬系への刺激。締め切り後の「やったーーー、今回も乗り切ったぜ!」、これが何より効く。やらなきゃ、という緊張とそれからの解放、この繰り返しですっかり中毒になる。下手な嗜好品より遙かにヤバいかも・・・

「楽」と「楽しい」は違う

5月16日の日経新聞「先輩に聞く」は、医療法人社団焰の安井佑さんの「「楽」と「楽しい」は違う」でした。そこに、次のような発言が載っています。

・・・人は、今やっている仕事が自分の人生を豊かにしてくれると思えれば、どんなにキツくても楽しくなる。「楽」と、「楽しい」は違う。1日20時間の手術も楽しかった・・・

仕事もそうですが、スポーツなどもそうですね。楽な練習では強くなれず、強くなれると思うときつい練習も楽しくなります。登山も、低い山では楽でも楽しみは小さいです。
鉄棒の逆上がりは小学校の体育の授業で必須科目ではなくなっているようですが、多くの学校で、練習して成功体験を得させるために続けているとのことです(NHK「チコちゃんに叱られる」)。なるほど。

竹内行夫さんの外交証言録

竹内行夫さんが「外交証言録 高度成長期からポスト冷戦期の外交・安全保障 国際秩序の担い手への道」(2022年、岩波書店)を出版されました。500ページ近い大著です。
かつては、官僚も回顧録を書くことがありましたが、最近では少なくなりました。残念なことです。政治主導は望ましいのですが、例えばこの本のように、この30年間の日本外交の軌跡を話し、書ける政治家はいるでしょうか。

竹内さんが活躍され、本書の対象となったのは、冷戦後期から、冷戦が終了し、その後の変動期です。日本外交も、アメリカに追随しておればよい時期から、大変動の時代を迎えました。
この間の日本外交を外から分析することも重要ですが、当事者の語る中からの記録も重要です。もちろん、一人の外交官が日本外交すべてを語ることはできませんが、携わった事案については最も詳しいのです。ただし、書けないこともあるでしょう。

「はじめに」で竹内さんも書いておられますが、回顧録は自己弁護や美化という恐れがあります。竹内さんはそれを避けるために、残してあった膨大な記録を基に、記者と学者の聞き取りに臨まれたそうです。

竹内さんは、奈良女子大附属高校の先輩です。宮沢内閣で総理秘書官を勤められ、私は宮沢内閣の村田自治大臣秘書官で、お世話になりました。その後、定期的にお話を聞く機会があり、尊敬する先輩です。

内永ゆか子さん、リーダーに必要な4要素

4月21日の日経新聞夕刊「私のリーダー論」は内永ゆか子・J-Win理事長の「部下をもっと好きになる」でした。

――部下との関わりで印象に残っていることは。
「役員になる前の40代前半、数カ月ごとに副社長補佐、担当部長などを転々としていた時期がありました。いつも100人以上の部下がいましたが、ほとんどが男性で、その分野での経験が長い人も多かった。私は『バカにされたくない』と思っていました」
「あるとき次の部署への異動が決まり、長い間課長を務めていた男性に『私へのアドバイスがあったら言ってください』とお願いしたことがあります。すると彼から『内永さん、私たちをもっと好きになってください』と言われ衝撃を受けました」

――その後、行動は変わりましたか。
「当時の私は、部下が素晴らしい発言をしても、もっと良いことを言おうとしたり、部下たちと張り合ったりすることがあった。部下を好きになるよりも、負けたくないと構えてしまっていたのです。そうすると相手にも構えられます。それからは仕事で誰かと対立することがあっても、心の中で『私はこの人が好きなの』と思うようにしています」
「そうすると不思議なことに、自然に顔がにこやかになり、相手との関係もほぐれます。この言葉は長らく私の座右の銘になりました」

そこに、リーダーに必要な4つの要素が示されています。
――内永さんが考えるリーダーに必要な素質は。
「第1にきちんとしたビジョンを持てる人。夢を語るだけでなく、実現するためのマイルストーンまで考えられることです。2つ目は自分なりの価値判断があり、適切に決定を下せるかどうか。3つ目は顧客はもちろん、社員も大事にできることです。リーダー1人でできることは限られていますから」
「そして4つ目は前向きに考えられること。頭が良くてもリーダーに向かないタイプの典型は、問題指摘優先型です。批判は上手だけど、ゼロから新しいアイデアを考えて計画することは苦手という人は適任ではありません」

――これまで出会ったなかで「真のリーダー」と感じた人はいますか。
「女性役員を集めた米国での講演会で、英国のサッチャー元首相にお会いしたことがあります。近くで話しているときは優しいおばあちゃんという印象だったのですが、一度舞台に上がり、英国の政治や産業に自分がどう取り組んできたかを話し出すと、強烈なエネルギーを感じました。『鉄の女』と呼ばれるだけあって、自分の信念を確立している方なのだと感じました」