カテゴリーアーカイブ:仕事の仕方

反論は3度目に、2

2026年2月3日   岡本全勝

2月1日の「反論は3度目に」について、肝冷斎が教えてくれました。「礼記」曲礼上に、次のようにあるとのことです。

為人臣之礼、不顕諫、三諫而不聴、則逃之。子之事親也、三諫而不聴、則号泣而随之。

人臣の礼たる、顕諫せず、三たび諫して聴かれずんば、すなわちこれを逃る。子の親に事(つか)うるや、三たび諫して聴かれずんば、すなわち号泣してこれに随う。

臣下のやり方としては、あからさまな諫言はしてはならない(隠喩でしなければならないんです)。三回諫言しても言うことを聞いてくれなかったら、その国(会社)を去りなさい。子どもが親に仕えるときは少し違います。三回諫言しても言うことを聞いてくれなかったら、大声を出して泣きながら親の指示に従わねばなりません。

反論は3度目に

2026年2月1日   岡本全勝

成沢光著『現代日本の社会秩序: 歴史的起源を求めて』(1997年、岩波書店)、138ページに、次のような記述がありました。江戸時代、武家社会に作法や規律がどのように広められたかを書いた章です。暴力を生業としていた武士が、平和な時代に宮廷のような作法を求められます。
・・・上司の命令が理不尽な場合、二度までは反論せず、作法通り挨拶し、三度以上に及んで初めて目付に申し出るべきところ、違反した者は処分された・・・
出典は、氏家幹人著『江戸藩邸物語ー戦場から街角へ』(1988年、中公新書)とのことです(この本も読んだけど、覚えていません。本もどこに行ったかなあ)。

私は旧自治省に採用された際に、先輩から「起案の処理などに不満があったら、二度までは異論を言ってよい。三度目は、はんこを押すか(同意するか)、辞職するかを選べ」と教えられました。何度も異論を唱えましたが、勇気がなくて、一度も辞職しませんでした。総理大臣の前では、異論を言うのは一回にしました。
この武士の作法と少し異なりますが、「二度は耐えよ」という点では、共通しています。今から思うと、「すぐに熱くならず、頭を冷やして考えよ」との意味があったのだと思います。

私なら、「まずは、同僚などに相談してみよ」と助言します。その上司に直接言っても、相手にしてもらえない場合もあります。上司が間違ったことをしていたら、指摘しても聞き入れてもらえないでしょう。本人が故意に違法行為をしていたり、あるいは部下に指摘されて気づいたりする場合もあります。いずれにしても、自分の間違いを認めたくはありません。
『現代日本の社会秩序: 歴史的起源を求めて』については、別途、紹介したいと思います。

居は気を移す

2026年1月25日   岡本全勝

市町村職員中央研修所学長を退いてから、主な執務場所が自宅の書斎になりました。
以前も、書斎でも執筆をしていたのですが。難しい書類などは、勤務先で読んでいました。なぜか、その方が集中できたのです。「酸素が多いから」(空間が広いから)と説明していましたが、職場は仕事をするところという観念が、気持ちをそのように向けるのだと思います。
居間には広い机があるのですが、ここでは執筆や読書には身が入りません。食事をしたりテレビを見る場所と、体が覚えているのでしょう。朝食の後、キョーコさんに紅茶やコーヒーを淹れてもらって、数メートル先の書斎に「出勤」しています。やる気を出すためです。

「居は気を移す」という言葉があります。住む場所や周りの環境によって、心の持ちようや考え方が変わってくるという意味とのことですが、私流に言えば、「場所によって気分が変わる」ですね。
しかし、職場のようにはいきません。自宅は誘惑が多いことです。職場のように「仕事以外のことはしてはいけない」という拘束がありません。パソコンでも、職場なら仕事以外のページを見ることはできないし、見るには気が引けますが、自宅書斎なら気になりません。読書に集中するなら、パソコンの画面を落としておくこともできますが、パソコンで文章書いているときは、誘惑の海に囲まれています。そして、数歩歩くと居間に行けます。読みたい本も、たくさんあります。
もう一つは、通勤は生活にリズムを生むことです。外出や移動をせず家にいると、のんべんだらりとなってしまいます。メリハリがつかないのです。

「居は気を移す」は、肝冷斎によると、もっと広く深い意味があるようです。「大哉居乎(孟子)

数字は未来を語ってくれない

2026年1月24日   岡本全勝

日経新聞夕刊コラム「こころの玉手箱」、1月19日の宮原博昭・学研ホールディングス社長の「戦闘機のジャイロ」から。

・・・学研ホールディングス(HD)の社長に就任した際、防衛大学校の同級生だった親友の渡辺誠が祝いの品としてフランス軍戦闘機のジャイロを贈ってくれた。防衛大では、航空自衛隊のパイロットを志していた。社長として学研HDの操縦席に座ったばかりの自分にとって、ぴったりの贈り物だった。
ジャイロは戦闘機で最も大事な部品だ。機体の傾きを教えてくれる計器で、操縦席に備え付けてある。上空まで飛ぶと、目の前にある雲は斜めに見えるため、上下左右の方向が分からなくなることもある。
特に夜間や悪天候など視界が悪い時は、ジャイロが示す数字だけが頼りだ・・・

・・・学研HDの操縦席に座ったものの、視界の先は一筋の光もない真っ暗闇のような気持ちだった。社長に就いた2010年当時、学研HDは出版不況と少子化の打撃を受け、売り上げが20年間で半分ほどに減っていた。経営者として、1万人の社員とその家族を路頭に迷わせないことがいつも頭から離れなかった。
だが経営危機を乗り越える光が見当たらず、会社はもがいていた。ジャイロの数字だけを信じて戦闘機を操縦した経験は企業経営に大きく生きた。
客観的な数字に基づいて判断することは、戦闘機の操縦でも経営でも不可欠だ。決算資料の数字を何度も読み返し、経営再建という飛行プランを立てた。

数字は足元の状況を正確に教えてくれるが、未来は語ってくれない。だから現場の声やライバル会社の経営状況、社会情勢という外部の景色を見ることを忘れないようにしている。
少子高齢化という外部環境を分析してたどり着いた飛行プランは、当時の主力事業だった学習塾や出版と全く異なる介護事業の拡大だった。
社長就任後の3年間はサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の新設に集中し、M&A(合併・買収)や学習塾の校舎新設をストップした。
暗闇の中でつかんだ介護という光は、今や売上高の約半分を占めるまでに成長した・・・

村井章子さん「翻訳業という仕事」

2026年1月23日   岡本全勝

翻訳家の村井章子さん、みなさんも一度は読んだことがあると思います。もっとも、著者名は気にしても、翻訳が誰だったかは、覚えていませんが。
翻訳業という仕事」という講演録を、インターネット上で見つけました。「2019 年城北会千葉支部総会講演」 とあり、都立戸山高校同窓会での講演のようです。講演内容は、興味深いです。知らない世界は、勉強になります。