カテゴリー別アーカイブ: 2017年春学期・地方自治論Ⅰ

慶應義塾大学、地方自治論第6回目

今日は、慶応大学で地方自治論の講義。
先週提出された、小レポート(79人分)の講評から始めました。今日、5人が遅れて提出してくれました。
公共政策論での講義と同じように、2ページにわたる講評(箇条書き)を配り、口頭で説明しました。こちらの課題は、自治体を選び、首長の政策を取り上げ概要を書くとともに、自分の意見を述べることです。自治体の首長の施政方針演説など、まずは見たことがない学生たちに、関心を持ってもらうことを狙ったのですが。大成功でした。
みんな、さまざまな自治体と政策を選んで、自分の考えを書いてくれました。中には、他の自治体と比べたり、その市長の主張を3年分並べてその進捗を検討した、すばらしいレポートもありました。

学生たちは、レポートを書く機会は多いようです。しかし「講評をしてもらったこと」や「書き方の指導をしてもらったこと」は、ないようです。多くの学生に、喜んでもらえました。じっくりと時間をかけて解説した甲斐がありました。
今日の出席カードには、「先生が指摘した悪いレポートの例に、私のレポートは該当します。次回は、改良して書きます」という自己申告が、いくつも書かれていました。

授業では、5月15日の朝日新聞社説「憲法70年 地方自治を成熟させる」をとりあげ、解説しました。地方自治の現状を良くまとめてあるので、学生に理解してもらうには、良い教材でした。
彼ら彼女らは、革新自治体はもちろん知りませんし、公害対策や福祉、情報公開などで自治体学により先行したことも知りません。
この社説は、少々厳しい見方で書かれていますが、日本の地方自治の良い点は、私が授業で補いましょう。

慶應義塾大学、地方自治論第5回目

今日は、慶応大学で地方自治論の講義。今日も大勢の学生たちが、熱心に話を聞いてくれました。教師にとって、学生たちの真剣なまなざしが、講義の際の一番のご褒美です。
前回の授業で、いくつも的を射た質問をもらっていたので、今日の授業もそれへの回答から始めました。良い質問は、うれしいですね。
私の授業は「通信教育」ではないので、学生たちの反応を確かめつつ、話を進めています。地方自治の知識だけなら、教科書を読めばすみます。生の授業の勝負は、本を読んだことを前提に、それにどれだけの「付加価値」をつけることができるかです。配付資料も、工夫をしています。
今日から、国と地方の役割分担に入りました。実態がどうなっているか、法律の定めはどうなっているか、ここまで進んだ分権の歴史、そしてあるべき姿は・・・。
ここは、自治論の主要テーマの一つです。

連休前に課した小レポートを、提出してもらいました。合計79人が提出してくれました。さて、これをすべて読まなければなりません。レポートは、書く学生も大変ですが、読む教師はもっと負担が大きいです。

慶應義塾大学、地方自治論第4回目

今日は、慶応大学で地方自治論の講義。早いもので、もう4回目です。前回の出席カードに、たくさんの質問を書いてもらったので、それへの回答から始めました。
・ドイツの自治制度が、第2次大戦後の占領国の違いによって、4種類の型になったことについて。
より詳しく知りたい人や、外国の自治制度に関心ある学生がいたので、自治体国際化協会の資料(抜粋)を配りました。日本の制度が唯一のものではないこと、また、首長の直接公選制を導入したことの長所と短所を勉強してもらうのに、ちょうど良い資料でした。
・「自治体が定めた条例を、誰が執行するのか。裁判所が自治体にないので、それは誰がするのか」。これは、国と自治体との役割分担について、きわめて良い質問です。
国が定めた法律に基づく事務でも、通常の執行は国だけでなく自治体も行います。例えば、義務教育は自治体が行います。他方で条例で定めた事務はその自治体が行い、国が行うことはないようです。
法令違反があった場合はどうするか。多くの取り締まりは、自治体の警察が行います。麻薬取り締まりのような、国が行う場合もあります。そして、刑事訴追は、国の機関である検察が行い、裁判も国の裁判所が独占しています。自治体には検察はなく、裁判所もありません。
そこで、条例で罰則を定める場合は、自治体は検察に協議することになっています。
・「国政においても、三権分立ではないのですね」。
そうです。分かれてはいますが、独立しているのではなく、相互に「牽制」する仕組みが組み込まれています。さらに、国会を国権の最高機関と定めているので、三権が平等でもありません。「三権分立」と聞くと、それぞれが独立して、同等かと思ってしまいますが、そうではありません。

授業の本論は、「統治としての地方自治」を終えて、「自治の仕組み」に入りました。まず、自治関連法令にどのようなものがあるかを解説しました。あわせて、「自治六法」の実物を見てもらい、法律とはどんなものかを実感してもらいました。
自治体と関連法人にはどのようなものがあるか、その種類。そして、地方自治体とか市町村と言っても、大きなものから小さなものまで、かなり多様だということを見てもらいました。たとえて言うと、一つ一つの花びらが不揃いな「あじさいの花」です。

慶應義塾大学、地方自治論第3回目

今日は、大学で地方自治論第3回目の講義。
前回の授業で、日本国憲法は、国にあっては議院内閣制をとり、地方公共団体にあっては大統領制をとっている。諸外国の例も引きながら、地方公共団体でも、議院内閣制をとることができるように憲法を改正するべきだと、私の主張を述べました。
昨日の衆議院憲法審査会で、斎藤誠・東大教授が同じ意見を述べておられます。今日はその新聞記事を元に、おさらいをしました。国会で議論されている、新聞記事を元に解説をする。学生には、興味を持ってもらえたと思います。

今日の授業は、統治の分割についてです。学校では「三権分立」を習いますが、これは日本国憲法が定めている一部です。
日本国憲法は、まず国と地方公共団体に、権力を「垂直的」に分権しています。そして、国にあっては立法・司法・行政に「水平的」に分権し、地方公共団体にあっては立法と・行政に「水平的」に分権しています。

小レポートを課しました。大型連休中に勉強してもらうためです。提出は連休明けにしてあります。
課題は、ゆかりの自治体の首長の施政方針演説などの中から、政策を一つ取り上げ、その概要とそれについて意見を述べることです。
インターネットで、自治体首長の主張を、簡単に見ることができるようになりました。しかし、学生にとっては、それを調べるのは、初めてのことでしょう。そして、首長の施政方針を読むことも。「東京都知事の場合」。
あわせて、レポートでは、その政策について、自分の頭で考えてもらうことを求めています。

本の読み方指南で、「書評が役に立つ」とお話ししました。例えば『東大教授が新入生にすすめる本』(2016年、東京大学出版会)は、学生にはちょうど良い読書案内でしょう。
授業で紹介した出版社のPR誌は、東大出版会『UP』、岩波書店『図書』です。年間千円ですし、大きな本屋ではただでもらえます。

今日も85人が、出席しました。出席カードには、様々な反応が書かれています。学生の関心や理解度も分かりますし、適確な質問もあって、手応えを感じます。その反応を踏まえて、来週も突っ込んだお話をしましょう。

慶應大学、地方自治論第2回目

今日は、慶応大学法学部、地方自治論の第2回目の授業でした。
今回から出席した学生もいたので、前回のおさらいと、日本経済新聞社に提供してもらった「わかる日経」というパンフレットを配って、新聞記事の読み方を教えました。

そして、本来の自治論に入りました。今日は、地方自治の概要、日本国憲法での規定ぶり、地方自治の意義、団体自治と住民自治など、基本の解説です。
これらは基本中の基本なので、どの教科書にも載っていることです。まずは、覚えてもらわなければなりません、基本は、私のレジュメと教科書を読んでもらうとして。
江戸時代の分権、アメリカやヨーロッパでの自治の運用の違いなど、エピソードを使って、理解してもらいました。所と時代が変われば制度は変わること、現在の日本の地方自治が「絶対的なものではない」ことを話しました。

また、授業の反応を見るために、出席カードに感想やら質問を書いてもらいました。カードの総数は85枚でした。「私の授業は難しいですよ」と話したのに、先週より受講生が増えています。
学生に受けているのは、次のようなものでした。
・新聞の読み方指南
・私の官僚時代、特に総理秘書官の経験
・外国や江戸時代との比較をした「自治」の意味
それぞれに、私でなければ話すことができないものと、自負しています。無味乾燥な理論や歴史を話しても、学生には興味を持ってもらえませんよね。まずは、食いついてもらうように、工夫しました。
さて、多くの学生から、質問をいただきました。これについては、このホームページや授業でお話しします。