日々の三位一体改革
【躍り出た知事会】
最近の新聞の記事は、知事会が中心です。19日の日本経済新聞は、「知事会夏の陣」という見出しで、「結論先送り、合意点探る」でした。20日の東京新聞は、ずばり「闘う知事会」「補助金改革リストで主導権」「財源大幅削減怒りバネに結束」です。「国には判断能力がない」とも。
これほど、知事会や地方団体が政治の一面に躍り出たのは、初めてでしょう。優先順位をつけることができない官僚組織に対し、知事会が日本国の意思決定をするチャンスを得たのです。
国は、今月末に予算のシーリングを決めます。でも、それは「枠」でしかなく、地方団体の方が、実質を決めるということです。(7月20日)
【日本の行政の在り方の再検討】
22日付け読売新聞には、伊藤裕記者による解説「補助金削減」が載っていました。「地方自治体による補助金削減案の取りまとめが、中央省庁の抵抗と地方の足並みの乱れで難航している」というものです。「これまで『お願い知事会』だったので、現状では、国と対等に協議するだけの体制が整っていない」との指摘もあります。
しかし、「補助金は地方の個性を失わせ、各省縦割りの弊害の方が目立つ。補助金の見直しは、戦後日本の行政の在り方を再検討する意味がある」とハッパをかけています。そして、「小泉総理自身が、何のために今、この改革が必要なのかを、改めて国民に説明する必要があるだろう」と主張しています。(7月22日)
【補助金改革は制度改革と一体で】
23日付朝日新聞朝刊は、大きく、新藤宗幸千葉大教授と古川康佐賀県知事の対談「分権どうする、どうなる」でした。司会は、坪井ゆづる論説委員です。
「補助金の一部が一般財源化されても、霞が関は痛くもかゆくもない。制度改革案と一体で提案しなくちゃ」「義務教育を一般財源化・・と同時に、教育委員会をなくす」
「地方団体に国政参加の機会を設けようと、11年前に地方自治法を改正したのです。だから知事会はもはや単なる任意団体ではない。まともな意見を出したら、内閣はそれを法案化する政治責任が生じるし・・」などなど。
【史上初の霞が関パッシング(素通り)の予算編成】
日本経済新聞夕刊には、「ニュースなるほど」に「補助金削減リスト難航」という題で、中西晴史編集委員の解説が載っていました。
地方団体、正確には知事会の補助金削減案づくりの混乱振りを紹介した後、「全知事が、3兆円削減の優先順位をつけた案を示したらどうだろう」という提言です。そして、次のような指摘もあります。
「省益や権限保持の呪縛から逃れられない官僚たちが、補助金廃止の優先順位をつけるのは不可能だ。『史上初の霞が関パッシング(素通り)の予算編成』の幕が一部ながら開こうとしている意義を、知事たちは忘れてはなるまい」。
(7月23日)
【麻生大臣:中央集権、縦割り省庁では、優先順位はつけられない】
「本来、補助金削減は国が決めるべきだとの意見もあるが、時代は変わっている。・・補助金は、補助金を出している中央省庁の縦割り行政の中において、自分の地位、権力を維持するために必要な手段だ。それが必要か必要でないか、みなさんの方がよくご存じだから、・・決めるのはみなさんだというのが基本だと思う。」
「中央集権では、補助金が強力な武器であり、省庁縦割りでは、補助金廃止の優先順位をつけるのは難しい。その点で、知事会の力が問われている。ボールは総理の方から投げられている。地域主権、地方分権、地方自治などをすすめていく上で千載一遇のチャンスだ。ぜひ、取りまとめていただきたい。」(7月24日)
【小泉総理の発想:もっと出せ】
27日の閣議で、次のようなやり取りがあったそうです(28日付け朝日新聞など)。
金子大臣:地域再生のために補助金を統合簡素化して、自治体が使いやすくする。交付金にする。
麻生大臣:補助金統合は、補助金の温存に利用される懸念がある。
小泉総理:補助金廃止は、3兆円にとどまる必要はない。20兆円でもいい。中央官庁は、自らの権限を維持しようとして、地方への移譲を渋る動きも多い。それじゃあ、いけないんだ。自分の思想、考え方は、できるだけ仕事は地方にやってもらうということなんだ。
記者会見での細田官房長官の発言
総理は、「できるだけ仕事は地方にやってもらうんだ」ということを、強く発言しておられました。「20兆円でもいい」なんておっしゃっていましたけどね。まあ、それは勢いで言われたんでしょう。
心強いですね。総理は、「ぶれて」おられません。
ある人曰く、親父に「3万円分、買いたい本のリストを出せ」といわれた学生が、3万円分出しますか。私なら、親父に「本当はもっと買いたいんだけど、とりあえず」と言って、6万円分要求しますよ。(7月27日、28日)