17日の日経新聞は、連載「再編5年目、診断霞が関」「内閣府」を載せていました。内閣府は、省庁改革の目玉の一つです。経済財政諮問会議もそうですし、政治任用も期待されていたことです。それらが、これまでの霞が関流の仕事に対し改革を挑むとき、その事務局をどうするかは、難しいことです。
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法律ができるまで9
【大臣の種類】
①行政事務を分担管理する「各省の長」
総務大臣、法務大臣など
②法律上の事務を分担する大臣
ⅰ防衛庁長官、国家公安委員会委員長
ⅱ特命担当大臣(内閣府設置法第9条)
例:金融担当大臣、経済財政政策担当大臣
③その他の担当大臣(内閣法第3条第2項)
例:郵政民営化担当大臣、行政改革担当大臣、国民スポーツ担当大臣
なるほど。ありがとう、北原君。この大臣の種類といい、大臣の国会出席ルールといい、本に書いていないことを解説し、役に立つHPです(自画自賛、笑い)。(4月17日)
今日、衆議院総務委員会では、「迷惑メール規制法改正案」の提案理由を読みました。質疑は26日の予定です。総務省提出法案は、あと5本残っていましたが、「外資の間接支配規制のための電波法改正案」を19日に国会に追加提出したので、あと6本です。そのうち、公職選挙法改正案は、政治倫理と選挙特別委員会で審議されるので、総務委員会では5本です。
本来なら、予算関連である電波法改正(当初提出分)の審議が先なのですが、電波法改正を追加提出したので、電波法審議は後にして、まず迷惑メール規制法を審議していただけることになりました。(4月21日)
26日は、衆議院総務委員会で、「迷惑メール規制法改正案」を質疑採決、本会議に緊急上程して、可決していただきました。審議の冒頭、麻生大臣が、昨日の尼崎での列車事故について、消防の救出活動状況などを報告しました。消防の緊急援助隊が活躍していますが、列車事故に出動したのは初めてだそうです。
残る法案審議は、連休明けになります。(4月26日)
明日10日から、国会審議が再開されます。参議院総務委員会で、迷惑メール法のお経を読みます。(5月9日)
10日の衆議院議院運営委員会で、与党が「郵政民営化法案を審議するために特別委員会の設置」を提案しましたが、野党は応じず、物別れになりました。別途、総務委員会の理事懇談会が開かれましたが、野党は「議運で特別委員会設置が提案されているが、郵政民営化は総務委員会で議論すべきもの。どのように考えるのか」と問題を提起し、次の審議日程の協議に入れませんでした。
参議院総務委員会では、迷惑メール規制法の提案理由説明を読み、12日に審議していただけることになりました。(5月10日)
今日も、衆議院総務委員会の理事懇談会が開かれましたが、進展はありませんでした。(5月12日)
衆議院本会議で、郵政民営化特別委員会設置が可決されました。民主党・社民党がその他の委員会も含めて、審議を拒否しています。それで、総務委員会の目処は立ちません。(5月20日)
郵政民営化特別委員会が開かれ、与党のほか共産党が出席して、委員長と与党理事を決めました。民主党と社民党は出席しませんでした。(5月23日)
衆議院本会議で郵政民営化法案の趣旨説明と質疑があり、引き続いて郵政民営化特別委員会で提案理由が読まれました。与党のほか共産党が出席しましたが、民主党と社民党は、その他の委員会も含めて審議を拒否しています。依然として、総務委員会の目処は立ちません。(5月26日)
衆議院郵政民営化特別委員会で質疑が始まりました。民主党と社民党は、審議を拒否しています。(5月27日)
国会が正常化しました。民主・社民両党が要求していた項目のいくつかを、政府与党が回答し、明日から全党がそろった審議が行われます。まず、今日は郵政特委で、野党理事が選ばれ、もう一度竹中大臣が提案理由(と同じもの)を読みました。要求があった本会議の再度の開催はしない代わりに、明日、総理出席の予算委員会が開かれます。そして、明後日には、全党そろっての郵政特委が開かれる予定です。(6月1日)
国会が正常化したことを受けて、衆議院総務委員会理事懇談会が開かれ、来週の審議日程が協議されました。(6月2日)
2日は総理出席の予算委員会、3日は総理出席の郵政特委が開かれました。この後も、郵政特委は開かれますが、日程は前日にならないと決まりません。これを「日めくり」というのだそうです。毎日、毎日、翌日のことを決めていくからだそうです。麻生総務大臣は、郵政特委に常時出席することが要求されているので、総務委員会との日程調整が難しくなります。(6月4日)
7日は、午前中は参議院決算委員会が開かれました。午後は、本会議と郵政特委の合間を縫って、衆議院総務委員会が開かれ、行政手続法改正のお経が読まれました。質疑の日程は、協議中です。(6月7日)
8日は、午前中に参議院本会議が開かれ、郵政特委が開かれませんでした。そこで、衆議院選挙特委が開かれ、公職選挙法改正が審議・採決されました。9日は衆議院総務委員会が開かれ、行政手続法改正案が審議されます。(6月8日)
10日には、衆議院本会議で、行政手続法改正と公職選挙法改正が可決されました。来週、参議院で審議していただくことになります。今国会の会期は、6月19日までです。早いもので150日、約5か月が経つことになります。もっとも、新聞で報道されているように、郵政民営化法案を審議するため、国会は延長されそうです。総務省も、あと6本法律が成立していません。(6月10日)
14日には、参議院総務委員会で行政手続法のお経を読みました。(6月14日)
16日には、参議院選挙特委で公選法のお経読み・質疑・採決が行われ、総務委員会で行政手続法の質疑・採決が行われました。通常だと、明日の本会議で成立しますが、今日、与党が会期の延長を申し入れ、野党が反発しているので、見込みが立ちません。(6月16日)
公務員制度改革
15日の朝日新聞で、辻陽明編集委員が「どうする縦割り行政」「公務員改革、経済界が仕切り直し提言」を解説しておられました。
公務員改革が、頓挫しています。「政府の改革が内容、手続きの両面で不評なのは、検討が変則的な形で始まったことが影響している」「事実上改革は棚上げされた。公務員制度改革の議論は、立て直しのめども立っていない」。
これに対し、経済界から、いくつも改革案が出ています。出井伸之経団連行革推進委員長と、西尾勝教授の意見が載っていました。
(問題は数より仕組み)
「骨太の方針2005」で、公務員総人件費削減が課題になっています。もちろん、財政再建のためにも、効率的な政府を実現するためにも、人件費削減は重要です。しかし、私は、量(単価と数)の問題より、質(仕組み)の問題の方が、大きな課題だと思っています(行革は、数を減らすことから、システムの改革に移っています。「省庁改革の現場から」p161)。
①部門間の「配転」がない
人数の問題も、単に一律に削減しても、良い結果は出ないでしょう。問題は、必要なところに増やしていない、不要となったところにたくさんいることです。社会の変化と仕事の見直しに、定数の見直しが追いついていないのです。
この問題は、地方自治体では、部門間配転でどんどん対応しています。霞が関ができていないのです(「新地方自治入門」p68,p290に少し書きました)。
②官僚のアウトカムの問題
公務員がよい成果を出していたら、数を減らそうとか単価を下げようという意見は、出てこないでしょう。国民の期待に応えていないから、官僚批判が続くのです。官僚は毎晩毎晩、遅くまで仕事をしています。しかしそれが、必ずしも国民の期待に応えていないのです。公共事業を続けることでは、国民は評価してくれません。
③改革の仕組みがない
官僚は、自らはこの見直しに、取り組めていません。そして、霞が関には、官僚制を考えるセクションがありません。専門家もいません(これが、今回の政府案とん挫の理由の一つです)。個々の官僚も、官僚組織全体でも、自己改革能力を欠いているのです。
経済成長がもたらしたもの・私たちが忘れてきたこと
朝日新聞は13日の夕刊から「戦後60年の投資図、第2部・イメージ空間」の連載を始めています。13日は「歌謡曲」でした。
「歌謡曲史を振り返ると不思議なことに気がつく。曲のタイトルから東京に限らず、町や土地の名前が消えていくことだ。『長崎ブルース』『京都の恋』『よこはま・たそがれ』。70年前後には、個性的なイメージを競いあう各地の町をうたう多くの流行歌が生まれた」「しかし、町の名前をタイトルに含む歌は、70年代の途中から姿を消していく」
「 『背景には、日本中が均質な消費空間におおわれ、歴史をもつ地域の風土が崩壊した変化がある』と消費社会研究科の三浦展氏は見る」「日本中が画一的な郊外の風景になってしまった。その結果、地域の固有の記憶は失われ、土地が匿名化した」
三位一体改革49
7日の読売新聞には、青山彰久解説部次長が「中教審、議論迷走」「義務教育国庫負担金で対立、公立校活性化の視点必要」を書いておられました。
「これまでの審議で見ると、論点の一つは『全国的な教育の水準と質をどう確保するか』であり、もう一つは『確実な財源保障をどうするか』になってきた」「だが、この(財源)論点だけでは、『財政再建に迫られる国の負担金制度と、改革が必要な地方交付税制度のどちらが安定的か』という水掛け論になる可能性もある」
「多くの国民が知りたいのは、どちらの方法なら、学力低下や不登校などの様々な問題を抱える公立小中学校がよくなり、現場の学校が活気づくか、という点だろう」
「地方側にしても、分権を言うなら、国庫負担金を地方税に変えるとどんな教育が今以上に実現するのか、最終的に市町村や学校の権限拡大につながる『都道府県内の分権』の制度設計案まで示されなければ、観念的な主張になりかねない」
指摘の通りです。
1 財源議論なら、一般財源化しても問題ない。いいえ、一般財源化すべきです。
負担金護持派の主張は、「交付税総額の先行きが不安」ということです。でも、かつて解説したように、地方財政より国家財政の方が赤字である=国家財政(国庫負担金)の方が心配なのです。
この主張なら、もし水掛け論になっても、国庫負担金を廃止した方がよいのです。なぜなら、国庫負担金をもらうために、あるいは配るために、膨大な人件費と事務費がかかっているのです。負担金制度を廃止すれば、それだけで大幅な経費削減になるのです。
もっとも、文科省は「職員がいらなくなる」から、一般財源化に反対しているのすが。
2 負担金がなくても、教育水準は変わらない。
どうやら、この点は理解されてきたようです。国庫負担金がない高等学校が、問題なく運営されていることについて、中教審の委員の方々は反論されませんね。
3 地方は、国庫負担金がなくなったら、今以上に教育がよくなることを示すべき。
そうです。一般の人が、三位一体改革を理解しにくいのは、「教育がこれだけよくなりますよ」という、説明が足らないからでしょう。
もっとも、1で述べたように、教育が今まで通りであっても、事務費と人件費が減って、日本にとってはプラスなんです。(6月7日)
月刊「地方財政」(地方財務協会)6月号に、遠藤安彦元自治事務次官の講演録が載っています。前に紹介した矢野浩一郎さんの講演の続きです。バブル期前後から現在までの交付税の歴史を語っておられます。交付税に関心のある方は、必読です。議論のある事業費補正についても、拡大のいきさつなどを知ることができます。私は、交付税課補佐として、財政担当審議官である遠藤さんにお仕えしました。
また、同号には、青木宗明神奈川大学教授が、フランスの地方分権を日本と比較して考察しておられます。「ともに単一制の国家形態をとりつつ、中央集権と官僚主導の代表国家、ワールド・チャンピオンとして名を馳せた末に、今や地方分権に向けた改革を進めている」「ところが、内面を凝視すると、両国の状況はまったくといって良いほど異なっている」「フランスからみて、昨年夏に我が国で繰り広げられた補助金削減をめぐる騒動はまったく理解できない。一国の総理大臣から要請され、地方が苦労の末に削減案を取りまとめたにもかかわらず、最終的には地方の意に反した政府決定がなされるというのは、フランスでは想像すらできない事態なのである」。
その他、井手英策横浜国大助教授の「義務教育費国庫負担金制度をめぐる政策論争史」、平嶋彰英地方債課長による「最近における憲法論議と地方自治、地方財政」なども載っていて、内容が濃いです。(6月13日)
「骨太の方針2005」の策定作業が、行われています。昨年この時期には、「3兆円税源移譲目標を書き込むか」が大争点になりました。また「補助金削減案は地方団体に考えてもらう」という「小泉・麻生ウルトラC」が提案され、すごく盛り上がりました。去年と違い、今年は地方財政・三位一体改革については、争点になっていません。
記者さんたちが、残念そうに「今年は静かですね」と、愚痴を言いに来ます。彼らは「記事を書いてなんぼ」ですから、活躍した去年が懐かしく、今年は力のふるいようがないのです。
今年が静かなのは、三位一体改革の目標数値は昨年すべて決めたこと、また18年度までの「全体像」を去年11月に政府与党で決め、実行中だからです。もちろん、全体像には積み残し(残る6,000億円の補助金廃止、義務教育国庫負担金の扱い)がありますが、これも別途作業がされているので、今回は新しく書き込むことがありません。
もっとも、三位一体改革は、地方団体が「口やかましく騒がないと」前に進みません。静かになって、先送りできたら、守旧派の勝ちですから。その点について、記者さんたちはみんな心配してくれています。「こんなに静かだと、火が消えますよ」。「6団体は何をしているんでしょうか」と。(6月14日)