読売新聞は13日から、「百貨店の挑戦」という連載を始めました。これまで有名ブランド店を入れることで客を集めていたのが、ブランド店が自前の店を開くことで、集客効果が薄れました。そこで、そのような「場所貸し業」から脱皮しようという動きです。
10年ほど前の小話に、近年もっとも地位を落とした業種として、一にデパート、二に銀行、三に官僚というのがありました。実は、この3つが取り上げられたのは、小話でも偶然でもないのです。共通点は、発展途上国・経済成長期に輝き、成熟すると(そのままでは)不要になることです。
銀行は企業に対しお金を貸すことで、産業を育成します。途上国では資金が足りず、銀行の役割は大きいのです。しかし、経済成長することで資金も豊富になり、また企業も株式や社債で直接資金を調達するようになります。企業にとっての銀行の役割は低下します。それが、先年の銀行の倒産です。
一方、デパートは豊かになる消費を見せてくれるところでした。お子様ランチのある食堂、電化製品・家具・食器・衣類・化粧品と、貧しい時代の人たちにはあこがれの品が並んでいました。しかし、日本が豊かになることで、デパートの品はそんなにあこがれではなくなりました。もっと高級な品は、専門店にあります。デパートの食堂より立派なレストランがたくさんできました。
官僚は、貧しい後進国を先進国に追いつかせるための設計士でした。これもまた、追いついたことで、従来の役割は終わります。発展途上国としてみると、銀行が生産側の代表、デパートが消費の代表、官僚が政治行政の代表だったのです。そして、経済成長に成功することで、それまでの輝きは失われたのです。生き残りのためには、別の道を探す必要があります。(12月13日)
17日の朝日新聞「補助線」で、辻陽明編集委員が「キーワードはCSO」を書いておられました。公民館が地元若者の団体運営に代わってから、がぜん活気が出て、貸し会議室から子ども達の遊びの場に変身したとのことです。そうですよね、公民館って使ってもらってなんぼのもので、大きさや立派さで勝負するものじゃないですよね。箱物行政の貧しさは、ここにあります。かといって、行政が人集めをするのも行き過ぎだし、税金の無駄遣いでしょう。
このような動きを生み出したのは、指定管理者制度です。しかし、辻記者も指摘しているように、企業に委託することで経費削減を目指すものと、市民団体に委託することで参加の輪を広げるものと、違った目的・ふさわしい施設があるようです。CSOとは、Civil Society Organization 市民社会組織で、NPOやNGOという括り方と違い、市民の自発的・公共的な活動を基準にした言葉とのことです。市役所と市民団体との関係は、「新地方自治入門」第8章で解説しました。