「今回の大震災は、地震津波災害と原発事故という、全く別の災害を含んでいます」と書きました(4月5日の記事)。発災後直ちに復旧に入ることができる地震津波災害に対し、原発事故はまだ終わっておらず、汚染の強い地域では復旧に入ることができません。
もう一つ、この本を読んで思ったことがあります。この本は、表題の通り、第一原発の事故を取り上げています。対象が、原発と東電、さらにエネルギー政策に絞られています。
私は、原発事故は、2つの側面があったと考えています。一つは、原発事故の収束と後始末です。もう一つは、被災者の生活再建と被災地の復興です。この本は前者を中心に書いてあって、被災者には筆が及んでいません。他方、私の仕事は後者だったので、この本に教えられることが多いものの、何か足りないなと感じたのです。
災害論として取り上げる場合、事故の収束と同様に重要なのは、被災者支援と被災地の復興でしょう。東電の救済もテーマでしょうが、被災者からするとそれよりは、賠償や生活の支援、被災地の復興が重要なテーマでしょう。そちらは、まだまとまった報告や著作が出ていないようです。
なお、同じく第一原発事故を詳しく取り上げたものに、船橋洋一著『カウントダウン・メルトダウン』(2012年12月、文藝春秋)があります。船橋さんの取材を受け、私も取り上げられています(下巻p332)。