復興の源は雇用

大震災からもうすぐ半年になることから、各紙が特集を組んでいます。朝日新聞は、9月6日から連載を始めました。6日は、雇用・企業です。このページでも何度か書いているように、道路や住宅を復旧しても、街は復興しません。働く場があってこそ、生活が戻るのです。
記事でも紹介されているように、工場が休業した場合、まずは失業手当が給付されます。これも、震災に限った特例を作りました。しかし、失業手当は、期限が来ると終わります。企業が事業を再開し、求人をしないと、新しい仕事は見つかりません。岩手県と宮城県では、事業を再開した企業数は、約6割です。もう6割が再開したというべきか、まだ6割しか再開していないと見るべきか。
今回の災害で、政府が取った雇用政策に、雇用創出基金があります。被災した住民を市役所が雇ったり、市役所の委託を受けた企業が雇う制度です。約5万人の半年分を用意しました。事務作業だけでなく、がれきの片付けや、高齢者の見回りなどの作業にも、使ってもらっています。

もっとも、これはつなぎの制度です。安定的な雇用のためには、事業所の再開が必須です。一方で、被災地に新しく進出を決めた企業の例も、報道されています。ありがたいことです。
政府や自治体によるインフラの復旧、NPOやボランティア活動による支援、企業の支援も重要ですが、企業が活動してくれること。それ自体が、復興なのです。税金を納めてくれなくても、従業員を雇ってくれることが、復興になります。そして、その従業員を相手として、商店や飲食店などの自営業も再開できます。

なお、企業活動についていえば、被害は被災地だけに限りません。この記事も取り上げているように、大震災による経済への影響は、日本経済全体と世界経済への影響もあります。部品工場が被災し、全国のあるいはアジアの自動車工場が、操業を一時停止しました。さらに、原子力発電所事故は、電力供給を削減させ、工場の稼働率に影響を与えています。
今回の大震災からの復旧復興を見る際には、いろんな広がりや次元があります。災害と復旧のいくつもの次元については、いずれ解説しましょう。