統計に表れない人的資本の価値

3月15日の日経新聞経済教室は、前田佐恵子・日本経済研究センター主任研究員の「人材教育の充実、成長のカギ」でした。

・・・停滞をどうすれば打破できるのか。本予測では「改革シナリオ」も描いた。労働力を質と量の側面から高め、供給制約を取り払う必要がある。
労働の質の面では、日本企業は人材教育の劣化が目立ち、00年代に人件費の削減とともに教育訓練費も削ってきた。1980年代は雇用者報酬の0.4%程度を教育訓練費に充てていたが、16年では0.2%と半減している。
職業教育などの人的投資を増やし、労働の質が向上すると、生産性を高める効果が期待できる。
機械や設備などの有形固定資産に対し、生産の付加価値を高める情報やブランド、人材などの価値は無形資産と呼ばれる。ソフトウエアや研究開発費など生産資産として統計に表れるものもあるが、人材に蓄えられた技能を含む人的資本は計上されていない・・・

そうなんですよね。人的資本(能力)は、統計に出てこないのです。話を広げると、社会の質も、数字化されていません。汚職のない社会は、経済発展に不可欠です。また、治安の良い、つながりの強い社会は、暮らしやすいです。道路や鉄道の延長距離より、はるかに重要です。GDPや国富は、経済的価値、それも数値化できるものしか計上されません。ここに統計や経済学の限界があります。

・・・経済産業研究所が公表している日本の無形資産に関する推計では、企業の人的資本への投資などにあたる「経済的競争力投資」が示されている。各国の同様の推計値と比較すると、日本は経済規模に対し著しく低いことが分かる・・・
として、「経済的競争力投資の各国比較」が図として載っています。う~ん、「日本は人を大事にする国」ではありませんね。