自信をつけたアジア各国

速い速度で変化する社会や経済を追いかけるために、なるべくそれらの本を読むようにしているのですが、時間が取れなくて、買ったまま積ん読も多いです。そしてそれらの本は、1~2年も経てば、時代遅れになるものも多いです(反省)。最近は新幹線での出張が増えたので、少し時間が取れます。もっとも、疲れて寝ていることも多いですがね(これまた反省)。
NHKスペシャル取材班『NHKスペシャル 灼熱アジア』(2011年、講談社)は、私の問題関心に合う本でした。2010年の8月と11月に放送された番組を、本にしたものです。タイの経済発展と買収される日本企業、中東でのエネルギーをめぐる闘い、インドネシア市場の争奪戦、中国の環境市場を巡る日韓の闘いを取り上げています。
1997年の通貨危機、2008年のリーマンショックで大きな打撃を受けながら、復活できない先進国をよそ目に、大きな成長を続けるアジア。そのアジアの勃興に対し、減速する日本企業がテーマです。
そこにあるのは、後発国の追い上げを見ながら、なお自信を持っていた先進国日本は、過去のものになったということです。日本に追いついただけでなく、ある部分では追い抜いた韓国と中国、彼らの自信。まだ一人当たりGDPは少ないながらも、先進国へのコンプレックスを払拭し自信をつけたアジア各国の姿です。

日本だけがなぜ、欧米にキャッチアップできたか。かつて日本人は、日本の優秀さや後発国のメリットを指摘しました。しかしそれは、一面しか見ていませんでした。私は、一人当たりGDPの各国の軌跡を示すグラフで説明する際に、「日本がキャッチアップに成功したのは、日本の優秀性によるが、日本だけがこのメリットを享受したのは、アジア各国が経済発展に目覚めなかったからだ」と解説しています。韓国は北朝鮮との対峙、中国は共産党の政治優先、インドシナ半島はベトナム戦争など、政治を優先し経済開発を後回しにしたのです。彼らが政治的安定を得て、経済開発に舵を切った時、日本の一人勝ちは終わりました。
手前味噌に言うと、日本が「政治より経済が重要だ。独自路線は必要ない、欧米にまずは追いつけばよい」というお手本を見せたのです。
幸いなことに、その時点では日本は世界のトップグループに仲間入りしていました。
私は、ヨーロッパは歴史的背景とともに、同程度の豊かさなので共同体ができるが、アジアはいつのことになるやらと、考えていました。しかし、いずれ近い将来に、アジア各国が同じような豊かさになるでしょう。その時に、日本は何で優位性を保つか。また、対等協力の関係ができたことを、どう活かすかが、次の課題です。