日本はどこへ行くのか・その5

リーダーには、目標(戦うべき敵)を示すことと、その道筋を示すこと、そして国民に納得させることが期待されると述べました。
どのような国と社会をつくるのか。キャッチアップ型発展に成功したので、もはや「欧米」といった便利なお手本はありません。目標にしろ、道筋にしろ、いろんな課題に取り組み、成功と失敗を繰り返しながら見いだすしかありません。具体的には、これからの試行錯誤の過程を経て、見えてくるのでしょう。しかし、基本的にしなければならないことは、見えています。それは、次のようなものです。
1 まず、リーダーと国民は、何と戦わなければならないか。すなわち、克服しなければならないことは何かです。
実は、目標を示すことより、戦うべき敵を示すことの方が重要です。なぜなら、日本を成功に導き、そして停滞をもたらした要素は、日本人の思考形態であり、日本社会の構造だからです。これは、これまでの「国際環境」と「国民」で書きました。敵は内にあるのです。「坂の上の雲」でなく、我が内なる病巣です。
しかし、自らの欠点を認め改革することは、困難なことです。しかもその要因が、かつての成功をもたらしたのです。関係者は、それを否定されることを拒否します。その仕組みに依存している既得権益者も多いのです。
戦わなければならない日本人の思考形態、日本社会の構造の一つは、繰り返しになりますが、「キャッチアップ型思考からの脱却」です。
日本は多くの面で、世界最先端の国になりました。日本がトップランナーになったのです。すると、先駆者として、新しい課題に最初に直面するのです。例えば、日本は世界一の長寿国です。そこで、どのようにして、高齢社会を活力あるものにするのは、日本が実験するのです。お手本はありません。
この点について、小宮山宏元東大総長が、「課題先進国日本」と言っておられます。「課題先進国日本―キャッチアップからフロントランナーへ」(2007年、中央公論新社)。
そして、お手本を見て追いかけることに比べて、試行錯誤は効率が悪いです。それに、私たち日本人は慣れていません。
また、その際に重要なのは、課題を設定することです。これまでは、課題は与えられました。その試験問題に、より良い答案を書くことでした。これからは、何が重要な課題かを判定しなければなりません。受験秀才ではダメなのです。
もう一つ戦わなければならないことは、「内向きの満足からの脱却」=「第3の開国」です。
この20年の日本の停滞は、日本のガラパゴス化によるものだと、何度もこのホームページで書きました。世界最先端の技術や経済を達成したことに満足しました。しかし、グローバル化が進んだ世界では、内向きに安定する考えでは、世界から取り残され、衰退します。活力を持つために、世界で引き続き挑戦し、競争する必要があります。
また、国際社会の秩序づくりやルールづくりに、貢献することも必要です。他国が作ったルールで勝負するようでは、その時点で、後れをとっています。先に述べた「何が重要な課題かを判定する」ことが、ここにつながります。(この項続く)