26日の日経新聞「経済教室・新政権に求める3」は、西尾勝元東大教授の「三位一体こそ改革の本丸」「首相が指導力を、公共事業の補助金削減も」でした。
「来年度予算の編成過程のなかで最も重要な懸案事項は『三位一体の改革』の着実な前進である」「この三位一体の改革の方が郵政民営化以上に直接的に中央省庁官僚機構の既得権益に鋭く切り込む構造改革であり、その波及効果も郵政民営化よりもはるかに広く、国・地方を通ずる行財政構造の全般に及ぶ改革である。本来はこちらの方こそ『改革の本丸』と位置づけられてしかるべきものであった」
「三位一体の改革を曲がりなりにもここまで進めてきたのは、第2次小泉内閣の功績であった・・・しかし、昨年の地方6団体の提案から政府与党合意に至るまでの混乱と迷走の過程では、遺憾ながら小泉首相の積極的な介入は見られなかった・・」
「三位一体の改革の具体案は、国の責任において改革案を策定すべきものである。そしてそれは、首相の強力なリーダーシップの発揮によって、財務省をはじめ関係省庁の官僚機構とこれを取り巻く族議員集団を承伏させなければ、実現困難な構造改革である。その反面、これを成功裏に成し遂げさえすれば、それは国・地方を通ずる歳出削減に最も有効な方策となりうる。小泉首相はその任期いっぱい、この構造改革に全力を傾けてほしい。」
ぜひ全文をお読み下さい。(9月26日)
26日に小泉総理は、衆参両院で所信表明演説をされました。その大半は郵政民営化で占められていましたが、その次は三位一体改革でした。「『地方にできることは地方に』という方針の下、4兆円程度の補助金改革、3兆円規模を目指した税源移譲、地方交付税の見直しの三位一体の改革について、地方の意見を真摯に受け止め、来年度までに確実に実現いたします」。郵政民営化の次は、いよいよ三位一体改革(その1)の仕上げです。(9月26日)
27日、小泉総理は官邸に文部科学事務次官を呼んで、義務教育費国庫負担金について「地方にできることは地方に、地方の意見を尊重してやるから、しっかりやってくれ」と指示されたそうです。「地方案に沿ってやってくれという趣旨か」との問いには、「そうですね」と答えられたとのことです(28日付朝日新聞、日経新聞)。(9月28日)
4日の日本経済新聞は、「義務教育国庫負担金8500億円。首相、全額地方移管狙う」を大きく解説していました。読売新聞は、「中教審、国庫負担制を堅持。8500億円の削減、焦点に」と「調整は首相ペース。文科省は強権警戒」を2面に分けて書いていました。
いよいよ、決着をつける時期が来ましたかね。いつも書いているように、これは単なるお金の取り合いでなく、内閣のリーダーシップが各省・官僚の抵抗を乗り越えられるか、地方の意見が中央政治を動かせるか、中央集権を地方分権に転換できるか、これまでの日本型政治を改革できるかなど、日本の政治の焦点・試金石なのです。
共同通信社によると、「小泉純一郎首相は4日夜、国・地方財政の三位一体改革で焦点になっている義務教育費国庫負担金の削減問題について『地方の意見を尊重しなければならない』と述べ、削減を求める全国知事会など地方6団体の意向に沿って2006年度予算編成を進める方針をあらためて示した」とのことです。(10月4日)
「地方六団体の代表の方々においでいただきまして、真の地方分権のための三位一体の改革の実現に向けて、ということで、地方六団体からの御要望といいますか、お話をお伺いいたしました。地方からは、幾つかの項目が紙に出ておりますけれども、3兆円の税源移譲を確実に実施してほしい、補助金の削減等についてしっかりと地方の改革案の中から実現してほしい、建設国債対象経費である施設費についても、しっかりとそれを実現してほしい等の御要望が出されました。最後に総理は、この三位一体の改革は、地方の意見を尊重して行う、というような御挨拶をされました」
5日の朝日新聞は、「三位一体も首相ペース?補助金削減『地方案を尊重』」「族議員後退、力学に変化。中央省庁なお抵抗」という見出しで、大きく解説していました。図では、義務教育について首相対文科大臣、公共事業について岩手県知事対財務大臣、生活保護について横浜市長対厚労大臣を対立の構図として載せていました。毎日新聞も、2面に分けて解説していました。
諮問会議で地方団体代表が意見を述べるとか、首長が大臣と対立の構図で取り上げられるとか、少し前までは考えられなかったことです。それが今や普通のことになりました。政治が、確実に変わってきています。
もっとも、対立の構図のなかで、「首相対文科大臣」は事実としても、変ですよね。文科大臣の任命権者は首相ですから。(10月5日)