カテゴリー別アーカイブ: 2017年秋学期・地方自治論Ⅱ

慶應義塾大学、地方自治論Ⅱ期末試験講評

82人の答案の採点をしました。全体について講評を書いておきます。

問1と問2は、大半の学生が、基本的なことを理解して答えていました。もっとも、「自治体の歳入の概要と特徴と地方税の概要を述べよ」という問に対し、(問に例示した)語句を羅列し、(問に例示した)分類をするだけの答案が多かったです。それだけでは、「概要と特徴」を答えていません。
問3は、機能については大半の学生が記述していましたが、果たしてきた成果について書いている学生は多くはありませんでした。
それらをしっかり書いている答案にはAをつけました。

地方税を述べる際に、所得税や法人税を上げている学生がいました。これらは、国税です。
「3割自治」を述べる際に、現在の税収が収入の3割だという答案が多かったですが、授業で取り上げたように現在は4割近くになっています。もちろん、これは自治体総額での割合です。自治体間でばらつきが大きいことを、しっかり書いていた学生もいます。

地方交付税の機能と成果を問う問題に、地方財政平衡交付金制度(地方交付税制度の前身)を書いている学生が数人いました。(試験に持ち込みを許した)私が授業で配付した資料にも出てこない、かなり専門的な話です。何か間違った参考書を見たのでしょうか。

慶應義塾大学、地方自治論Ⅱ期末試験

今日は、慶應大学で地方自治論Ⅱの期末試験。82人が受験しました。
予告したとおり、自治体の収入や地方税について基礎的知識を問う問題と、財政調整制度の機能と成果を問う問題です。
私の授業に出ていたら、難しくない問題ばかりだと思います。
3問とも、記述式です。択一式にした方が採点が楽なのですが、大学である以上「書く能力」を育てたいと思い、記述式にしています。
さて、明日には答案が届く予定なので、採点に頑張りますわ。

慶應義塾大学、地方自治論Ⅱ第14回目

今日は、慶應大学で地方自治論Ⅱの第14回、最終の講義でした。
前回、今学期のおさらいをし、期末試験の予告もしました。今日は、分権の進展と課題という観点から、春学期の地方自治論Ⅰと秋学期の地方自治論Ⅱを通した、論点整理をしました。
制度の分権をしても、財政の裏付けがないと、実体が伴いません。地域のことは地域で決める、自分たちのサービスは自分たちの負担でといっても、経済力・財政力に地域間格差がある現状で、全国各地で同様のサービスを実現するのは困難です。

学生に書いてもらった意見には、今日の授業を含め今学期の感想がたくさん書かれていました。
・制度だけでなく、実態の話が良く分かった。
・財政の分権が簡単でないことが分かった。
・これまで興味がなかった税財政の概要や問題が分かり、身近になった。
・配布されたレジュメで、ポイントがよくわかりました。教科書を読む際に、理解が早かったです。
・実態論や経験談が、他の先生と違い、勉強になりました。
・岡本先生の経験談や社会人のあり方の話が、とても役に立ちました。

私の意図が、通じたようです。さて、来週は、期末試験です。

慶應義塾大学、地方自治論Ⅱ第13回目

今日は、慶應大学で地方自治論Ⅱの第13回の講義。これまでの講義のおさらいをしました。
私の12回の講義が、どのような部分から成り立っていて、全体から見るとどのような配置になっていたかを、目次を見せながら説明しました。そして、どこが地方財政論の肝かも。学生の感想文には、「全体がよくわかりました」というものが多かったです。
そうですね。私も学生の時、あるいは分厚い本を読んでいて、全体像が分からないことから、理解が進まないことがありました。

慶應義塾大学、地方自治論Ⅱ第12回目

今日は、慶應大学で地方自治論Ⅱの第12回の講義。前回に引き続き、国の財政状況と、地方財政の赤字を説明しました。諸外国比較で、日本は高福祉低負担であり、その差を国債で埋めていることは、理解してもらえたようです。消費税や個人所得課税が、ヨーロッパ各国と比べ、低いのです。

ちょうど良い時期なので、先日閣議了解された「経済見通し」を説明しました。近年の日本経済がどうなっているか、GDPの見通しや、物価上昇率、失業率を説明しました。学校では習わないでしょうね。

さらに進んで、経済政策一般について解説しました。良い書物や解説がないので、経済政策に強い職員の知恵を借りて、レジュメをつくりました。
短期では、景気対策 です。需要創出の財政政策(ケインズ政策)と金融政策(金利誘導と資金供給)です。具体例として、ニューディール(1930年代、アメリカ)、リーマンショック対策(2008年、日本、世界)、アベノミクス(2013年~日本)を挙げました。すると、わかりやすかったようです。
長期・経済構造改革としては、国家政策として、
1 産業政策:特定産業の保護育成。補助金や関税障壁。
2 競争・規制改革:規制緩和や通商政策
3 財政政策:資源配分・所得再分配。大きな政府・小さな政府
4 生産性向上:人材育成
5 通商政策:関税引き下げ、知的財産権の保護
です。すっきりと分類できませんが。
具体例として、富国強兵(明治~)、所得倍増政策(1960年代、池田内閣)、新自由主義的改革(1980年代、サッチャー、レーガン、中曽根内閣)、TPPなどを挙げました。
ここは、学生から「よくわかった」と好評でした。この部分は、もう少し資料を精査して、今後も使いましょう。