カテゴリー別アーカイブ: 再チャレンジ

行政-再チャレンジ

やればできる。女性の就業

7月31日の日経新聞に「女性就業 残る待遇差 初の3000万人、パート多く 正規雇用や昇進に壁」が載っていました。そこに、いわゆるM字カーブのグラフがついていました。
これは、縦軸に女性の労働力率を、横軸に年齢階級を取ります。すると、15歳から立ち上がったカーブが、30代になるとへこみ、40代で再び上がり、60代から下がります。アルファベットの「M」の形になるのです。子育て期にいったん離職し、子育てが一段落した40代で働き始めるからです。

過去はこのMの形が明瞭だったのですが、近年へこみが小さくなり、台形に近づきつつあります。1979年、1999年、2019年の3年を比較してあります。この間の変化がよく分かります。文章より、グラフの方が一目でわかります。
寿退社や、子供ができたら退職するという「常識」が変わってきたのです。また、子育て中の母親も働きやすいように、保育施設も増やしてきました。

さて、記事が指摘しているように、課題は残っています。
1 女性の職場は、非正規が多いのです。55%で、男性に比べ2倍以上です。全体では30%台です。
2 正社員でも、まだ男性と同じような仕事、昇進ではありません。女性の管理職比率は13%です。欧米では3割から4割だそうです。

広がるゲーム障害、日本で500万人

7月24日の日経新聞夕刊「ゲーム障害 向き合い方は? 国内500万人 ネット依存の恐れ 無理にやめさせない/孤立させないケアを」から。
・・・オンラインゲームなどのやり過ぎで日常生活が難しくなる「ゲーム障害」を世界保健機関(WHO)が疾病と認めた。患者数は明確ではないが、「ネット依存」の疑いがある人は国内に500万人ほどおり、増加の一途をたどっている。ゲーム障害にどう向き合えばいいのだろうか・・・

・・・ゲーム障害は日常生活に支障が出たり健康に害が及ぶ疾病だ。厚生労働省は、中高生の14%にあたる約93万人がゲームなどのネット依存の恐れがあると推計する。5年でほぼ倍増した。
東京都は小中高生や保護者などを対象に、ネットやゲームとの付き合い方を考える講座に専門家を派遣している・・・
・・・「ゲーム障害を抱える子供にとってゲームは心のつえ。無理にやめさせる必要はない」と周愛荒川メンタルクリニック(東京)の八木真佐彦・精神保健福祉士は話す。ゲーム障害の子供は家庭で問題を抱えているケースが多いという。「相談下手、孤立した頑張り屋さんの方がゲーム障害になりやすい」(八木氏)
ゲームにのめり込むのは快楽にふけっているのではなく、落ち込んだ気持ちを治そうと「自己治療」をしている場合が多いと八木氏はみる。こうした状況でゲームを取り上げても問題の解決につながらず、アルコールや薬物など別の対象に依存したり、最悪の場合、自ら命を絶ったりする危険性すらあるという。
「孤立しているゲーム障害の子供たちが安心できる環境を提供することが重要」(八木氏)。ゲームにのめり込む根本の要因を見つめ直す必要があり、それには家族のケアが重要になる。「家族へのカウンセリングを繰り返す中でお子さんに会わずして回復に至るケースもある」という・・・

世界保健機関では、病気に分類されています。
子供に、どのようにしつけたら良いか。両親も困っているでしょう。親の世代は経験していない「危険」なのです。子供への接し方も、教えてもらっていません。
新しい社会の課題です。

階級社会日本

7月17日の朝日新聞朝刊1面は、「階級社会 中間層襲う転落不安」でした。

・・・「階級」という言葉には古めかしい印象が付きまとう。だが、昨年1月に世に出たその本は、筆者の予想をはるかに上回る反響を呼んだ。
「新・日本の階級社会」(講談社現代新書)。
閉塞感が漂う日本社会の現状をみるには階級という視点が不可欠、という警鐘だった。不安定な雇用で収入も低く、結婚や子育て、老後の蓄え、といった営みもままならない新しい階級「アンダークラス(下層階級)」の出現に注目するべきだ――。
本のヒットに、「何が起きているのかと思った」と誰よりも驚いたのが筆者だ・・・

佐藤 俊樹著『不平等社会日本―さよなら総中流 』(中公新書) が社会に衝撃を与えたのは、2000年でした。「一億総中流」と信じていた日本社会が、実は「格差社会」に変化しつつあることを提示したのです。
橋本先生が、2006年に「階級社会」という本を出版した際には、反響はほとんどなかったそうです。その言葉が、今や現実味を帯びて、社会に広まっています。

詳しくは本文を読んでいただくとして。私も、戦後日本が達成した成功の一つに、平等と全国での均一な公共サービスを上げていました。しかし、平等は過去のものになりつつあります。
なぜ、佐藤先生の時点では「階級」が自覚されず、近年になって自覚されるようになったか。それは、二つの要因があると思います。

一つは、「経済成長があれば格差は縮まる」という信念が持てなくなったことです。昭和後期、一億総中流と言われた時代にも、実は格差はありました。しかし、経済成長すると「私も豊かになれる」との思いで、それは前面に出なかったのです。しかし、経済成長が止まると、「私も豊かになれる」とは思えなくなりました。

もう一つは、貧困層の顕在化です。かつても、貧しい人はいました。母子家庭や生業に就けない人です。しかし、世間では「それはあの人たちに責任がある」と考え、我がことではなかったのです。
ところが、正規と不正規の処遇の格差、解消されない年長フリーター、結婚できない派遣職員、子供の貧困が増えて、身近に目に見えるようになりました。「他人ごと」ではなくなったのです。個人責任ではなく、社会の課題になりました。
「勝ち組と負け組」という言葉が、「一億総中流」に取って代わったのです。

企業の採用面接に見る「日本型雇用」その2

企業の採用面接に見る「日本型雇用」」の続きです。

・・・まず、面接で学生に何を聞いているのか。「学習(研究)」「サークル・体育会」「アルバイト」「旅行や読書などの趣味」「その他」の選択肢から、それぞれにかけている時間の合計が10になるよう配分してもらった。顕著な差がみられたのが「学習(研究)」である。
事務系総合職の面接経験者のうち、日系非グローバル企業勤務者は10のうちの3.47を、日系グローバル企業は3.53、外資系企業は4.65を「学習(研究)」に充てている。
技術系総合職の場合、日本企業は非グローバル4.15、グローバル4.38と割合はやや高まるが、外資系5.08には及ばない。面接時間の約半分を学習の質問に割く外資系企業と、サークル活動、アルバイト、趣味などの学生生活を総合的に把握する日本企業という明瞭な差異がある。

これには、多様な仕事をローテーションする日本企業、特定の知識・スキルを求めるジョブで構成されている外資系という構造の違いがあろう。
自社に大学での専門との関連が明瞭な事務系総合職のポストが「ある」企業は、日系非グローバル26.0%、日系グローバル44.0%、外資系56.5%だった。技術系総合職ではやや増え、日系非グローバル43.9%、日系グローバル65.9%、外資系78.0%である・・・

日本の企業文化とともに、レジャーランドと化した大学についても、考えさせられます。採用面接の際に、会社は「大学でどのような学問をしたか」ではなく、「学生時代に一番力を入れたことは何ですか」と問うのだそうです。
先日、ある大企業の方に教えてもらいました。新入社員に聞いた結果です。「学生時代にもっとも力を入れていたことは何ですか?」との問に。部活動やサークル活動が約5割、アルバイトが約3割、学業は1割です。日本の大学がどのような場所かが、よくわかります。恥ずかしいことですが。
学問に励まない学生、卒業生という「製品」に品質保証をしない大学、大学に学問を求めない企業。三者のなれ合い構造です。そしてそれを当然と思っている国民も、同罪です。

企業の採用面接に見る「日本型雇用」

7月15日の日経新聞教育欄、吉田文・早稲田大学教授の「日系企業の採用「空気読む人材」優先続く」が、興味深かったです。日本の企業(国内型)が、学生に学校で得た知識や学問でなく、空気を読むことを期待していることが分かります。

・・・近年の大学教育改革の喫緊の課題は「学修成果の可視化」、すなわち、学生がどのような能力を獲得したのかをエビデンスで示すことである。ここには、新たなタイプの人材を求める産業界からの要請があるという。確かに、グローバル人材、イノベーション人材という言葉はすっかり人口に膾炙した。
しかし、企業はそうした学生を求めているのか。新卒総合職の採用面接経験がある企業人を対象に行った調査(2014年10月実施、調査会社のモニターから過去5年間の経験者を抽出し、ウェブで調査。有効回答2470人)から検討する。
日本企業の特性を浮かび上がらせるため、回答者の勤務先を日本企業と外資系企業に分け、日本企業も事業をグローバル展開している企業と、そうでない企業に区分し、日系非グローバル企業、日系グローバル企業、外資系企業の3つのタイプ別に比較する・・・

・・・だが、それだけではない。そもそも企業が求める人材が異なっているとも考えられるからだ。その一例を表に示す。日本企業の採用担当者は事業のグローバル展開の有無にかかわらず、事務系総合職には「空気を読んで、円満な人間関係を築くことのできる人材」の方が、「論理的に相手を説得できる人材」よりも望ましいと考えている。
外資系は70%が「論理的に相手を説得できる人材」が望ましいとするのと対照的である。技術系も事務系ほどではないものの同様の傾向がある。面接で学習だけでなく、サークル、アルバイト、趣味などを聞くことで、空気を読める者を選ぼうとしているのだろう。
ところで、空気を読むという、暗黙裡に状況を推察しての行動が重要だとするのは、それを可能とする同質的な空間があるからではないだろうか。「男子、学部卒、日本人」から構成された環境である。
そこで、その対極にある「女子、大学院生、外国人留学生」に抱いているイメージを見よう。自社で「採用したい者が多くいると思う」か否かを聞くと、全カテゴリーにおいて、見事なほどに日系非グローバル企業、日系グローバル企業、外資系企業の順で「多くいる」比率が高くなる・・・
この項続く