変えなければ変わらない

「東日本大震災は日本を変えたか」という問いがあります。私は、拙著「復興が日本を変える」(2016年)の「はじめに」で、次のように述べました。
・・・「東日本大震災が大きな被害をもたらしたのに、日本社会は変わっていない」という人もいます。しかし、私は、この言い方について、次の2つの面から疑問があります。
まず、大災害が起きたら、社会は変わるものでしょうか。確かに、大震災は日本社会に大きな衝撃を与えました。大津波はたくさんの街並みを飲み込み、多くの人命を奪いました。原子力発電所の事故は、原発の安全神話を吹き飛ばすとともに、科学技術への信頼も揺るがしました。自然の脅威や科学技術への信頼について、国民の意識を変えたことは、間違いありません。しかし、社会に大きな衝撃を与え、国民の意識を変えたとしても、それだけでは社会は変わりません。無常観や不信感が広がるだけです。その衝撃をきっかけに、国民が行動を起こし仕組みを変えなければ、日本社会は変わりません。
第2次世界大戦の敗戦は、日本社会を大きく変えました。それは、戦後改革が行われ、民主化や自由化が進んだからです。阪神・淡路大震災で、ボランティア活動が社会に認識されました。それは、多くの若者が支援活動に駆けつけたからです。社会が変わるには、私たち日本人が変えようとしなければならないのです。
次に、東日本大震災によって、日本社会は実際に変わったのかどうか。私は、日本社会は変わったし、変わりつつあると考えています。その中で、私たちには今、何をどのように変えようとしているのかが、問われているのです。「大災害が起きたら社会は変わる」というだけでは、何がどう変わるかがわかりません・・・

3月27日の読売新聞夕刊「東日本大震災10年 変わらぬ日本 考える人作り」では次のように書かれています。
・・・東日本大震災から10年を機に、多くの報道があふれた。批評家の東浩紀さんに、この10年の日本を振り返り、課題を挙げてもらった。
「震災で日本は変わるのかなと思っていた。脱原発社会やライフスタイルの変化などが盛んに吹聴され、デモも行われるようになった。だが、ほとんど何の結果も出せず、社会は何も変わらなかった」・・・

3月29日の朝日新聞社説「若者の力と社会課題 大震災後の潮流を育みたい」は、次のように述べています。
・・・その東日本大震災は、もう一つ、いまに連なる変化が顕著になった節目でもある。日々の生活で抱える様々な問題は、災害など非常時に深刻さを増す。課題に直面する人たちへの支援を行政任せにせず、自らかかわりたい。そんな思いを持ち、実際に動く人が目立ち始めた。
特に注目されるのが、若い世代の意識と行動だ・・・