移植できない言葉の背景

日本語の脱亜入欧」の続きです。

言葉は、常に変化します。
そして日本は、1500年ほど前から中国と朝鮮を憧れ、漢字を輸入した国です。明治以来の西欧語の取り込みは、第二の国語変革期とも言えます。
しかし、千年以上慣れ親しんだ漢字は、日本語の基本になっています。そこに、系統の違う、語源が違う欧米系の単語や、表記方法と発音が決まっていない(学校で教えてもらえない)アルファベット語が入ると、日本人も外国人も困るのです。

言葉は、社会的背景、歴史を背負っています。それを切り離して、単語だけ輸入しても、日本語の文章の中に、しっくりと収まらないのです。
例えば「インターネット」という言葉。「インター」「ネット」それぞれに、英語としての故事来歴があります。日本語ではふだん使われている、高速道路のインターとかゴルフ練習場のネットを思い浮かべる人が多いでしょう。この2つを想像する限りは、インターネットが何か、思い至りません。
「電網」なら、なんとなく想像できます。しかもこの方が、文字数も少ないのです。もっともこの単語では、配電線網も想像しますが。

その点、日本語にある単語から取った言葉なら、その単語の背景を知っているので、おぼろげにでも理解できます。漢字で表した単語なら、漢字が表意文字なので、さらに意味がわかりやすいです。例えば、水や食といった漢字を含んでいると、何に関するものが想像がつきます。
四文字熟語などなら、その起源である漢文や日本の古典を知っています。しかし、私たちの多くは、シェークスピアや古代ローマのキケロなどの、西欧の教養を知らないのです。