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出版社「ぎょうせい」から、シリーズ「地方税財政の構造改革と運営」の発行が始まりました。「第4巻 行財政運営の新たな手法」と「第2巻 三位一体の改革と将来像・地方税・地方交付税」が、すでに出版されました。
第4巻は、自治体の管理と運営の、新たな動きや手法についてです。組織マネジメント、人事管理改革と行政評価、アウトソーシングと地域協働、PFI、公営企業改革、地方独立行政法人、規制改革、特区、地域再生などについて書かれています。第2巻は、三位一体改革の成果とこれからの課題、将来像のうち、地方税と交付税について書かれています。
(時代の変化)
地方行財政については、出版社「ぎょうせい」や第一法規から、これまでも何度もシリーズの本が出ています。自治の仕組み、行政分野ごとの制度、財政の仕組み、税制の仕組みなどです。私も公務員になったころ、買って勉強しました。もちろん、とてもすべては読めませんでしたが、興味のある分野は通読し、その他は必要に応じて参照するという読み方です。今も、何冊かは捨てずに持ってます。
それを見て、時代の変化を感じます。かつては、制度の解説が主で、教科書でした。一昔前の百科事典のように、本棚に鎮座していました。装丁も頑丈でした。近年のは、制度の解説より、何が変わったか、これからの課題は何か、進むべき道はという、論文集に近いです。体裁も、コンパクトになっています。かつては、数年並べておけましたが、最近のは次々と新しくなり、耐用年数が短くなりました。
(制度の解説から課題と将来像の提示へ)
これはもちろん、大きな制度の改正が続いていること、また運用も変化の時代に入っているからです。執筆者も、制度の解説だと、制度や先達の本をお勉強すれば書けました。今やその上に、課題を整理し、自らの考えを述べなければなりません。かつての本には私見は不要でしたが、今は私見のない論文は、役に立たないのです。
10年以上前、まだ私が自治省の課長補佐だったころ、若手補佐を糾合して、新しいシリーズを編集したことがあります。「分権時代の地方財政運営講座」です。編集代表は湯浅利夫財政局長(後に自治事務次官、宮内庁長官)にお願いしました。刊行の辞には、次のような文章があります。「従来の地方財政の解説書、教科書とは、形、内容とも大きく異なったものとなっている。まず、これまでのような制度、仕組みの解説ではなく、テーマ別にその実績、新たな動き、今後の課題と展望を論じる論説方式を採用した。実績については評価を、課題については政策を重視した記述、分析を求めたため、各論文とも執筆者の見解を踏まえたものとなっている」。
今と同じようなことを、言ってますね。この「論説方式」は、当時刊行されていた岩波講座「日本通史」にヒントを得ました。通史と銘打ちつつ、そこでは通史的な記述ではなく、テーマを立てて論説する方法をとっているのです。
財政運営講座は、各巻の構成も、地方財政の新たな展開、地域振興の戦略的展開、高齢社会、地域経済、地域経営、行政管理、資金管理と、それまでにないユニークなものでした。
こんな講座を考えたのは、地方行財政は拡大と安定の時期を過ぎ変革の時代に入ったこと、そして制度の解説では十分でなく課題と解決策を提示しなければならない、と危機感を持ったからです。もっとも、私たちが編集した講座が、それに成功したかは、やや心もとないです。後輩達が書いた本を見ながら、こんなことを思い出し、考えました。