三位一体改革33

【基本的枠組み決定】
18日に、政府与党で「基本的枠組み」を決定しました。内容は各紙が伝えているとおりです。「補助金3兆円削減は明記、具体的内容は先送り」というのが、大方の見方です。昨日、私が示した評価基準で見てみましょう。
①3兆円の補助金削減と税源移譲は、明記されました。この点は合格。
②補助金廃止の各論は先送り。この点は来週の決定まで、判定はできません。ただし、補助金廃止各論の枠組みは、地方団体案を基礎としています。この点は評価。
焦点の義務教育費は、「含まれる」と官房長官が記者会見していますが、どうなるかわかりません。国民健康保険に新たに県負担を導入するとのことですが、これも詳細が不明で判定できず。公共事業費も一部含まれるとのことですが、税源移譲問題は先送りで、これも判定できず。
③交付税は、17、18年度は「財源措置を行う」として、大幅な削減は無いとのことで、これは評価できます。
もう一つの「決定過程論」ですが、あれほど隔たりがあった「総理・麻生大臣・地方案」vs「各省・自民党」が、一定の方向を合意したことは大きく評価できます。今後の具体化の過程でも、よい影響を与えるでしょう。しかも、ゼロ回答に近かった各省・自民党案に対し、基本は地方団体案になっています。
問題は、これから1週間の詰めです。それがいい結論だと、今回の決定はそれに至る過程として、良いことだったと評価されるでしょう。私がよく使う「ホップ・ステップ・ジャンプ論」です。そうでない結論だと・・。
さて、総理は「最後は私が決断する」とおっしゃっていました。今のところ、方向を示しつつも、総理の決断の場面は出てきていません。、朝日新聞は「融和 根回し 新小泉流」と書いていました。
各紙とも、社説で取り上げていました。朝日新聞は「教育を変える好機に」、毎日新聞は「最終決定に首相は指導力を」、日本経済新聞は「補助率引き下げは構造改革に値しない」、産経新聞は「原点に戻ってつくり直せ」、東京新聞は「地方案の骨は抜くな」です。いずれも、改革を後押しする論調です。読売新聞は、青山彰久記者による「見えぬゴール」を解説していました。(11月19日)
【関係者の誘導と新聞のミスリード】
各紙がそれぞれ勝手に予測記事を書いていること、そして一部の関係者の誘導に乗せられていることは、何度かここで批判しました。前日まで「義務教育費は補助金廃止対象外」と書いた社もありました。そのような記事は誤報であるばかりでなく、抵抗勢力に加担し世論を誤った方向に誘導しています。
この時期に合わせて、財務省が「地方財政には過大なムダがある」と新聞を使ってキャンペーンしたこと、各省が「補助金がなくなると、こんなに地域間で差がつきますよ。事業が無くなりますよ」と書かせたことは、賢明なる読者は既におわかりだと思います。極めつけをご紹介します。15日の経済財政諮問会議の議事録p3の麻生大臣の発言部分です。
「それでは、お手元に配付してある『三位一体の改革の推進のための地方税財政制度』について説明する。この資料について、最初にぜひ確認をしておいていただきたい。私が出した交付税改革の資料が11月13日の土曜日に一部の新聞に掲載されている。金曜日にマスコミにリークされ、財務省の反論を含め、土曜日に掲載されたのだろう。こういった重要なタイミングでこの種のことがおこるのはルール違反である。このようなことが度々あると、情報は出せないということになる。そういった意味では以後慎重にしてもらいたい。ぜひお願いを最初に申し上げておく」。(11月20日)
20日の日本経済新聞は「財政攻防」で動きを、21日の「視点」で義務教育費国庫負担金一般財源化を解説していました。21日の朝日新聞は「文科相に包囲網」で解説するほか、「時々刻々」で市町村合併を解説していました。(11月21日)
21日の産経新聞「解答乱麻」は、小川義男高校長の「義務教育費国庫負担は聖域か」を載せていました。「これほどの経費が学習塾に支出されているとすれば、何のための義務教育費無償化だったのかと、考え込まざるをえない。文部科学省はどのように受け止めているのであろうか」「学習指導要領が守られている限り、教育水準の維持や全国的均質性が害されるものではない」。
21日の毎日新聞「発言席」は増田寛也知事の「地方が自立できる最終案に」を、22日の「グローバル・アイ」は「三位一体の時代的意味:分権、米欧の流れと通底」を載せていました。22日の日本経済新聞「インタビュー領空侵犯」は、渡辺正太郎経済同友会副代表幹事の「分権で新小日本主義:日本人である前に地方人」を載せていました。
23日の日本経済新聞は、「大詰め三位一体、地方から問う」で増田知事のインタビューを載せていました。「地方案を軽視、約束違反」です。また、11月9日のシンポジウム「地方分権と地域の創造」の概要を全面広告で載せていました。(11月23日)