三位一体改革27

【言論の自由と新聞の正確性】
28日のこのページで紹介しましたが、読売新聞に神野先生の改革推進論文と義務教育費堅持の全面広告が、見開きで載っていました。ひとしきり話題になりました。
「言論の自由だから、新聞広告には何を載せてもいいんですよね」
「ええ、ただし、倫理性は求められています」などなど。
私は、次のように思います。
読売新聞の社説は、三位一体推進です。それに反する広告を載せるのは、言論の自由と理解しましょう。でも、『公立学校教員給与の2分の1の国庫負担金を廃止したら義務教育が崩壊する』という主張は、とんでもない間違いです。こんな不正確な主張でも、言論の自由として掲載するのでしょうか。広告であっても「正確さ」は必要だと思います。よもや読売新聞は、私立学校や高校は教育が崩壊していると思っていないでしょうね。さらに、読売新聞社の品位の問題でしょう。
ただし、全面広告の下部に並んだ団体名(日教組、高教組も含め)が、「文部科学省-族議員-業界団体」の一覧表としてわかる、という効果はありました。この人たちには、給与の財源を熱心に議論するより、「教育の質の崩壊」について議論してほしいと思います。私たち事務屋は、先生の給与に責任を持ちます。教育の専門家は、教育の内容に責任を持ってください。
国民は教員給与の財源より、教育の内容に不安と不満を持っているのです。全面広告に名を連ねた方は、まじめに考えているんでしょうか。自分たちが一番責任を持たなければならない教育の内容・質の低下問題を避け、給与財源に「すり替えている」としか思えません。(10月31日)
31日の産経新聞には、中央教育審議会会長のインタビューが載っていました。趣旨は「中教審の意見が通らないと、辞任する」とのようです。この人たちが、本来議論すべき教育の中身と質を避け、教員給与論にすり替えていることは、何度も指摘しました。
「法律で定められた審議会とは何だろう」とおっしゃってますので、お答えしましょう。中教審の所掌事務は、「文部科学大臣の諮問に応じて意見を述べること」です(文部科学省組織令)。文部省の一機関でしかありません。今は、その文部省の主張を変更しようとしているのですから、中教審の意見が政府で覆されることは、当然です。
平成11年に省庁改革に関連して、次のように閣議決定されています。「・・審議会等は、有識者等の高度かつ専門的な意見等を聴くため設置されるものであり、行政府としての最終的な政策決定は内閣又は国務大臣の責任で行うものである・・」。
審議会は政治責任が曖昧で、「官僚の隠れ蓑」といった批判もあります。そこで、廃止しようとしました(不服審査を行う審査会は別です)。しかし各省の抵抗で、いくつも残っています。審議会委員が辞任されても、内閣は困りません。審議会は廃止する方針ですので、歓迎されるでしょう。困るのは文部省だと思いますが(参照拙著「省庁改革の現場から」)。
産経新聞の30日「主張」は、「補助金削減、首相は改革の初心を貫け」でした。これも、わかりやすい社説でした。11月1日の毎日新聞は、「三位一体改革の現場」第4回を載せていました。
1日の日本経済新聞は、全国の市を対象に行政サービス水準比較を載せていました。上下水道料金、ゴミ収集料金、乳幼児医療費助成など、主に金額面ですが。保育園の延長保育時間も調べてあります。今後の「主戦場」は、学校教育だろうと指摘しています。
このように、自治体が競うことで、サービスの水準が上がり、負担が下がります。どんどん、状況を住民に知らせて、競争して欲しいと思います。これが、地方分権です。(11月1日)
新聞の解説は、自民党と首相の対立をどう調整するかに、移っています。2日の日本経済新聞、東京新聞などです。読売新聞は、義務教育費国庫負担金について「地方・総務省vs文科相・与党」を解説していました。政府では、官房長官・総務大臣・財務大臣・経済財政担当大臣による4者協議が連日続けられています。(11月3日)
与党との調整が行われています。もし、政治家が官僚と一体となって補助金システムを温存しようとするなら、与党との調整は困難です。三位一体改革の困難さは、ここにあります。
既存の政治システムを変えようとするのですから、それは改革を超えた、「平時の革命」ともいうべきものです。幕藩体制という地方分権から、明治国家という中央集権システムに変えるには、維新という「革命」が必要でした。天皇制から民主制に変える時には、敗戦と進駐軍が必要でした。
日本社会が活力を取り戻すためには、地方分権が必要です。官僚にお伺いを立てているようでは、型にはまったドングリはできても、自由な発想と活力は出てきません。また国際社会で活躍するためには、国会議員と官僚には、××村の補助金ではなく、天下国家のことを考えてもらわなければなりません。
大きな議論を起こしつつも、三位一体改革は進むと思います。与党は柔軟であると思います。最後は時代の流れを読み、収束するでしょう。それが、これまでの自民党の強みです。平時の大改革を成し遂げ、日本と日本の政治の強さを見せてくれると思います。
多くの国会議員は、各省へのお付き合いから、また補助金行政へのノスタルジーから、補助金廃止に反対のポーズを示しておられます。しかし今、政権与党に課せられた責務を、みなさん充分に理解しておられます。少なくとも、私の存じ上げている先生方は。
これに関し、6日の各紙は「解けない対立」を書いています。特に義務教育負担金が、大きく扱われています(朝日新聞、日本経済新聞)。何度も指摘したように、「義務教育の維持」と「義務教育職員の給与負担制度の維持」が、意図的に混同して議論されています。
また、財務省による交付税大幅削減への批判記事もあります(日経)。朝日新聞は、「三位一体改革誰のために」で、公共事業についてその弊害と脱補助金の動きを解説していました。良い分析でした。
日経には、中教審会長のインタビューが載っていました。知事会の案に対しては「知事の理解度が低い」。公立学校不信に対しては「2万4千の小学校のうち私立はわずか170校」という答え。かなり「程度の低い」発言です。あきれを感じます。(11月6日)