カテゴリー別アーカイブ: 連載「公共を創る」

校閲さんの驚異

連載「公共を創る」の執筆裏事情です。毎回難儀しながら書き上げていること、そして右筆が内容を精査するとともに文章を磨いてくれていることは、「連載「公共を創る」執筆状況」でしばしば紹介しているところです。

もう二人、お世話になっている人がいます。一人は編集長です。私の原稿を適当な長さに切って1回分に収め、3本目の表題を作ってくださいます。
もう一人は、校閲さんです。文章の間違いを正すとともに、読みやすいように加筆してくださいます。それが、神業なのです。
毎回、鋭い指摘を受けて、倒れています。先日は、図表を撃たれました。「調査対象30か国中32位」という表記があったのです。この図表は、この3年ほど講演会で使っていたのですが、ついぞ気がつきませんでした。「そんなのも気がつかないのか」とあきれるでしょうが、間違いとはそんなものです。

「職人の矜持」と言えば良いのでしょうか。脱帽です。
文章も、多分もっと気になるところがあるけれど、執筆者の意向を尊重してくださっていると思われます。「遠慮なく手を入れてください」とお願いしたら、ズタズタになるかも。
私が執筆する際に、「どうせ直してくださるので、原稿はいい加減でも良いか」と思ってはいけないのですよね(苦笑)。

で、全体を振り返ると、執筆割合度は次の通り(編集長を除く)。
私60%、右筆30%、校閲さん10%でしょうか。

連載「公共を創る」第169回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第169回「政府の役割の再定義ー日本型の雇用・職場慣行がもたらした悪影響」が、発行されました。日本経済と官僚が昭和の素晴らしい発展の後、この30年間に停滞したことに、共通の理由があることを説明しています。それは、新たな目標の設定の失敗とともに、日本型の職場慣行です。

前回説明したように、日本の職場慣行(係で仕事、引継書、人事課による人事異動など)は、経済成長期に誠に効率的でしたが、大きな欠点も持っていました。目標を変えるときに、うまくいかないのです。職員も上司もそれに慣れていません。そして近年はパソコンが一人一台行き渡りました。係で仕事をすることから、事実上個人で仕事をする形に変わっているのです。しかし、職場のやり方は従前の係単位を続けています。そして、上司が指示を出すこと、職員が上司と打ち合わせることに慣れていません。ここに、不慣れな職員が悩むことになります。

さらに、人事異動を人事課に依存している仕組みでは、職員の仕事や職場に対する満足度が下がり、技能についても自ら研鑽しないのです。これらは「昭和の経済成長の終わり」と「長い明治時代の終わり」を表しています。

連載「公共を創る」第168回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第168回「政府の役割の再定義ー日本の経済と働き方の特徴」が、発行されました。

行政機構の目標と評価について、官僚の説明責任を論じています。官僚ももっと自分たちの仕事を記録して、公表すべきだということです。私が素晴らしいと感じた著作を挙げました。一つは、黒江哲郎・元防衛事務次官の「防衛事務次官 冷や汗日記 失敗だらけの役人人生」です。この本については、このホームページでも紹介しました。
もう一つは、大村慎一・前総務省新型コロナ対策等地方連携総括官兼地域力創造審議官の執筆による「新型コロナウイルス感染症対策に関する地方連携推進の取組」です。これについては先月紹介したばかりです。

続いて、日本の経済発展と停滞の原因が日本型の職場慣行にあるとして、その説明をしています。日本の経済力、生産性の低さ、長時間労働を説明するために、図表も付けてあります。

連載「公共を創る」第167回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第167回「政府の役割の再定義ー組織における評価のあり方」が、発行されました。行政が国民の期待に応えるよう方向転換するために、行政組織にも目標設定と評価の仕組みを導入すべきであることについて議論しています。

各省が出す白書は、政策の動向と成果を整理したもので有用ですが、組織や政策の中長期評価には、1年単位ではなく、5年や10年での評価が必要でしょう。その際に、自己評価も価値がありますが、第三者による評価も重要です。

政策や組織の評価を行うのは、それらが与えられた目標を達成国民の期待に国民の期待に応えているかを判断するためです。そのような評価は、各政策と組織を単体として、かつ時系列で見て課題解決の状況を知ろうとするものです。
他方で評価には別の機能もあります。複数の政策を並べて評価し、資源(人と予算)をどのように配分するかを考えるというものです。もっとも、これは異なった政策目標間の比較であり、数値化による比較は不可能です。

組織の業績評価について、もう一つの評価があります。それは、何を達成したかでなく、何をしなかったかに注目するものです。「新しい社会の課題に答えていない」という官僚批判は、何を達成したかではなく、何に取り組んでいないかによるものだと考えられます。各省が「これをしました」「あれもやりました」と実績を誇っても、国民が期待している新しい課題への取り組みを行っていなければ評価は上がりません。これを防ぎ、是正するためには、どのようにすればよいのか。
まずは、各局長が所管範囲を見渡し、新しくどのような問題が生じているかを発見し、取り組むべき課題として俎上に載せることとでしょう。

連載「公共を創る」第166回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第166回「政府の役割の再定義ー組織の目標と評価ーそのあるべき姿を探る」が、発行されました。

各行政分野での方向転換を行うため、各省の局長による所管行政の課題と取り組み方針を公表してはどうかと提案しています。局長が発表した事例として、2つを紹介しました。
一つは、 藤井直樹・国土交通省自動車局長(当時。その後に国土交通省事務次官)が、季刊『運輸政策研究』(運輸総合研究所)2016年10月号に寄稿した「自動車を巡る課題―コンプライアンスと技術革新」です。そこには、自動車行政直面している新しい課題が取り上げられています。
もう一つは、吉川浩民・総務省自治行政局長の論文「協調と連携の国・地方関係へ~コロナ禍とデジタル化を踏まえて~」(月刊『地方自治』(ぎょうせい)2022年1月号)です。そこには、局長の体験を基に考えた、地方分権改革から20年間の成果と課題、喫緊の課題では新型コロナ対策で見えた地方行政の課題、自治体の大きな課題である電子化への取り組みが書かれています。