カテゴリー別アーカイブ: 社会

社会

入社するまでどんな仕事に就くかわからない

7月25日の日経新聞夕刊「就活のリアル」、栗田貴祥さんの「就活で入社後の配属先希望、配慮すれば選ばれる企業に」から。

・・・入社するまでどんな仕事につくか分からない――。そんな不安な状況に「配属ガチャ」という言葉が生まれるなど、配属先の決定は多くの学生にとって重大なテーマである。
入社後の配属先の確定状況について、2023年大卒者を対象に3月卒業時点での調査をしたところ、卒業時点で配属先が確定している学生は就職確定者のうち46.5%だった。確定する時期を聞くと「入社後に決まる予定」が35.2%ともっとも多く、「内定式以降〜入社前まで」が21.9%。「配属確約での応募(募集時に配属先を提示)」は11%、「選考時に確定」が7.6%などだ・・・

・・・ただ、入社後の配属希望がある学生に、「入社予定企業に希望を伝えたかどうか」を聞くと、23.6%は伝えていないと回答している。希望を伝える機会の有無について、「面談など口頭で伝える機会があった」(43.9%)、「アンケートなど文面で伝える機会があった」(24.3%)という声の一方、「希望を伝える機会がなかった」という回答も35.3%にのぼる。配属先が確定していても、その意図の説明がなかったという声も40.1%あった・・・

次のような記述も。
・・・そもそも、学生は入社後の希望業務を具体的に持っているのだろうか。就職活動開始前に「明確にやりたい仕事があったかどうか」を聞くと「あてはまる」「どちらかというとあてはまる」の合計が45.8%だった。
就活を経て、3月卒業時点で入社後の配属希望部署・部門について「明確な希望があるか(確定前に明確な希望があったか)」という質問への回答では計58%に高まり、「あてはまらない」「どちらかというとあてはまらない」の計19.1%を大きく上回る。就活を通じて、具体的な希望や働くイメージを持つようになった学生が一定数いることが分かる・・・

人工知能が新たな人類の脅威に

6月18日の読売新聞「あすへの考」、大塚隆一・編集委員の「生成AI 新たな人類の脅威」から。

人間が書いたような文章を作ることができる生成AI(人工知能)の利用が急拡大している。一方で「人類や文明の存続を脅かす」などの警鐘も相次ぐ。なぜ、それほど恐れるべきなのか。核兵器や気候変動など他の脅威と何が違うのか。それらとの比較で何が見えてくるのか。

「人類存亡の脅威」と聞くと、何を思い浮かべるだろうか。
自然がもたらす破局的な脅威には小惑星の衝突や超巨大火山の噴火などがあるが、ここでは人間の活動、特に技術や産業の発展で生じた脅威を取り上げたい。
具体的には「気候変動」「核兵器」「遺伝子の改変」「人工知能(AI)」の四つだ。程度の差はあるが、どれも人類の存続を揺るがすリスクをはらむ。

一方、「遺伝子の改変」は「命」の謎解きに挑む生命科学が生んだリスクだ。特に近年、遺伝子を自在に操作できるゲノム編集が登場したことで懸念が強まった。
この技術を人の生殖細胞や受精卵に使い、遺伝子を望み通りに変えた「デザイナーベビー」を誕生させるとどうなるか。改変の影響は子々孫々まで残る。専門家は人類の多様性や進化に未知の問題を生じさせかねないと危惧する。
もちろん科学技術や産業の発展は多大な恵みをもたらしてきた。
数次の産業革命で私たちの暮らしは豊かになった。核エネルギーは原子力という新しい電源を生んだ。核融合にも期待が集まる。
遺伝子の研究は難病の治療や新薬の開発、作物の品種改良などでめざましい成果を上げてきた。
だが人類は、恵みと引き換えに、扱いを誤れば自らの生存を危うくするリスクを背負った。
いわば、災いが詰まった「パンドラの箱」を開けてしまった。

「人工知能」のうち、いま話題の「生成AI」は「知」の分野の驚くべき成果だ。代表格の対話型AI「チャットGPT」は人間のような巧みさで「言語」を操る。
それゆえ、脅威にもなりうる。こちらの「パンドラの箱」はどんな災いをもたらすのか。
政府のAI戦略会議は先月、懸念されるリスクとして、偽情報の氾濫、犯罪の巧妙化、著作権の侵害など7項目を挙げた。
一方、イスラエルの歴史家ユヴァル・ノア・ハラリ氏は英誌エコノミストで、「言語」が人類の文明を築いてきたことを考えれば、生成AI問題はもっと「大きな構図」で捉えるべきだと論じた。
「民主主義は対話であり、対話は言語による。AIが言語を乗っ取れば、有意義な対話、すなわち民主主義は破壊されかねない」
さらに「核兵器は文明を物理的に破壊できる」が、生成AIは「私たちの精神世界と社会」を滅ぼす「新しい大量破壊兵器」になりうる、とまで指摘した。
もちろんハラリ氏も、生成AIが社会の抱える様々な課題の解決に役立つ可能性は認めている。
しかし今は、その能力を見極め、規制を優先すべき時だと訴える。

庭園の背景

今に残る大名庭園など、東京にも美しい庭園がいくつかあります。小石川後楽園、芝離宮恩賜公園、浜離宮恩賜公園、清澄庭園、新宿御苑、駒込六義園・・・。
私も好きで、いくつも行きました。東京の都心で、よく残ったものだと感心します。残してくださった関係者に感謝しなければなりません。

庭園の中を見ていると気持ちが良いのですが、少し目線を上げると、ビルやマンションなど高い建物が、目に入ります。それも、敷地の境界近くまで迫っています。庭園を紹介したパンフレットなどでは、それらが入らないように、上手に写真を撮ってありますが。マンションなどは、そこから庭園を見下ろす眺めを売りにしているものもあるのでしょうね。

中世の庭園に、借景という技法があります。京都のお寺で、庭木の向こうに比叡山が見えて、それと一体として広く景色を楽しむ手法です。他方で、この隣接高層マンションは、庭園の景色をぶち壊す、「破景」と言ったら良いのでしょうか。「法令の範囲内で建てているから問題ない」のでしょうが。

首相官邸も、同じ問題を抱えています。写真を撮ると、後ろに大きなビルが映るのです。なにか、味気ないですね。そして、周囲のビルから見下ろされる首相官邸って、威厳がなくなります。さらに、警備上の問題もあります。

サッカー・Jリーグ30年

1993年5月15日にサッカー・Jリーグが開幕し、30年になりました。報道がいくつも伝えていました。例えば、5月14日の朝日新聞「J30周年、スポーツをどう楽しむか道半ば 川淵三郎さん」(すみません、遅くなって)。

・・・1993年5月15日に開幕したサッカー・Jリーグは、日本のスポーツ界に大きなインパクトを与えた。「スポーツで幸せな国へ」という志が共感を呼んだのは間違いない。では、そんな社会は実現したのか。果たして社会を変える力はスポーツにあるのか。Jが30歳の誕生日を迎える今、初代チェアマンだった川淵三郎さん(86)に聞いた。

――この30年の日本スポーツ界の変化を、どう見ていますか。
「地域に根ざしたスポーツクラブをつくり、いつでもスポーツを楽しめる場所を全国につくるのがJリーグの理念。30年前、日本は『スポーツ三流国』だと僕は思っていた。スポーツを本当の意味でエンジョイできる国ではなかったんでね。今は、二流国くらいにはなったかな」
――「スポーツでもっと幸せな国へ」と掲げました。
「スポーツすれば得しますよ、と伝えたかったんです。多くの人とコミュニケーションできて、知り合える。人生の楽しみが膨らむ。そういうことが(30年前は)なかなか伝わらなかったし、実感できる国ではなかった。会社人間でよほどのことがないと趣味も満喫できず、人生、損してますよと」
――Jリーグによるサッカーのプロ化は、日本代表の強化を進めたという評価が一般的です。
「みなさん、そっちが中心だと思い込んでいるけど、それより、草の根の多くの人たちがスポーツを楽しめる社会になってほしいというのが昔も今も僕の最大の夢であり、希望なんだ。地域社会に根ざしたスポーツクラブが中学校の数くらいできて、その中心にJクラブがあるというイメージを30年前に描いていたんですよ」
「この30年は、かなり良い30歩。予想外というか最大の喜びは(クラブが企業や行政とともに地域貢献に取り組む)社会連携活動だね。60に増えたJクラブが年間2万件以上も実施している。単純計算で各クラブが1日1回やっていることになる」
「これからは、全国に100のJクラブができて『する、見る、支える』の『する』に多くの人が参加することを期待しています」

当時のことを、覚えています。私も高校ではサッカー少年でした(下手なゴールキーパーです)。相撲と野球以外のスポーツが、プロとして成り立つとは思えませんでした。もちろん、ワールドカップに常時出場するなんて・・。
しばしば行った店で、川渕さんとお会いして話を聞く機会が何度かあり、その情熱に負けた思い出もあります。

他人の配偶者を何と呼ぶ。「妻さん」「夫さん」?

6月15日の日経新聞夕刊に「他人の配偶者を何と呼ぶ 「妻さん」「夫さん」悩ましく」が載っていました。

他人の配偶者を何と呼ぶか。記者が取材するときにも悩ましい問題だ。上下関係がにじむ「奥さん」や「ご主人」を使いにくいと感じる人は多い。だが、「妻」「夫」は相手には使えない。そこで「妻様」「夫様」という新語も出始めている。男女を限定しない「パートナーさん」や「お連れ合い」が広がる可能性もある。変化の現場を追った。

日経xwomanの2021年の調査では、他人の男性パートナーの呼び方では「旦那さん」が47%、「ご主人」が24.4%と多く、「夫さん」は7.3%。女性パートナーでは「奥さん」が73.8%と圧倒的に多く、「妻さん」はわずかに1.8%だ。

夫婦への接客が多い営業の現場はどうだろう。
積水ハウスでは「奥様、ご主人は使わず、何と呼べばいいか尋ねるケース、お名前で呼ぶケースがある」(広報室)という。京都の中村さんのお願いを先取りした形だ。また「目を見て話せば分かるので、あえて呼称を使わないこともある」。アンケートの続柄欄には「パートナー」を加える工夫もしている。
三越伊勢丹ホールディングスでは「お連れ様という呼称を使う場合もある」(広報・IR部)。社内では「ユニバーサルマナーのハンドブックを定めて呼称だけでなく接客レベルの向上に努めている」という。
全日本ホテル旅館協同組合の中村克次事務局長は「現場に指導しているわけではないが、個人的には男女の性別に関係なくフラットに使える『ご家族の方』がいいと思う」と話す。脱「奥様・ご主人」の動きは広がっているようだ。

「ご主人」への違和感を訴える声は昔からあった。有名なのは戦後間もない1955年に行われた第1回日本母親大会。評論家の丸岡秀子さんが「主人と呼ばず夫と呼ぼう」と提唱した。遠藤さんによると、「主人」が使われたのは明治以降で、「戦前まで、配偶者を『主人』『ご主人』と呼ぶ人は、インテリ層のごく一部の人だけだった」という。
つまり封建的な響きを持つ「ご主人」は戦後のわずか10年で定着していったと考えられるわけだ。遠藤さんは「戦後民主主義の中で、少し気取った言い方の『主人』をまねる人が増えたのではないか」と説明する。民主化の流れの中で「男言葉、女言葉はやめよう」という主張が男性からあったが、「女性リーダーが『女言葉は美しい』と、その平等主義の流れを止めてしまった歴史のパラドックスもある」と指摘する。