カテゴリーアーカイブ:仕事の仕方

組織運営の要諦2

2022年9月6日   岡本全勝

組織運営の要諦1」の続きです。組織を動かす要諦の2つめは、「社風」です。

霞が関の各省は、民間企業から見ると「公務員」として、同じような「人種」に見えるでしょう。同じ公務員試験を受け、国家と国民のためという同じ目標に向かって仕事をしています。ところが、省によって社風・組織文化がかなり違うのです。新しいことに挑戦するか、しないか。上司への相談の仕方や、内部での決裁の仕方など。
これは、他省に出向すると痛感します。しかし、郷に入っては郷に従う必要があります。でないと、仕事が進みません。

難しいのは、各省からの出向者で構成された組織であり、新設組織です。
核となる省の社風がないので、それをつくらなければなりません。放っておいても、自然と社風はできあがりますが、それは困ったものとなる可能性があります。
職員たちは、よるべき社風がない、言ってみれば暗闇の中を手探りで進みます。ある案件について、積極的に進めるのか、しばらく様子を見るのか。そのような困ったときに、誰に相談したらよいのか。これが分からないのです。
すると、多くの職員は、しばらく様子を見ることになります。それでは、任務は進まないのです。他方で、意欲に燃える職員は張り切りますが、周囲から「浮いてしまう」ことがあります。

どのようにして、社風をつくるか。既存の組織なら、幹部は個室に入っていて、部下が決裁や相談に入ってくるのを待ちます。しかし新設組織や混成職員からなる組織では、それでは部下たちがどのような社風をつくっているのか、そのまえに何に困っているのかが分からないのです。幹部が自分から部下のところに出ていって様子を聞く、あるいは機会を捉えて事情や困りごとを聞く必要があります。
参考「組織の能力、6。仕事の仕方と社風を作る、2

組織運営の要諦1

2022年9月5日   岡本全勝

私は官僚になってから、組織を動かす立場や、新しく組織をつくって動かす経験をしました。その経験と、他の組織でうまくいっていない事例を比べて、組織を動かす要諦は、「集権と分散」「社風」の二つだという結論に達しました。企業にも当てはまると思いますが、ここでは役所を念頭に説明します。

「集中と分散」は、幹部がすることと、部下がするべきことを、はっきりさせることです。幹部が組織の目標を提示し、それを部下に割り振ることです。そして、部下の動き把握し、問題があれば修正し、新しい課題が見つかればそれに対応すること(新しい部下を置き、指示を出すこと)です。
幹部が何を処理するか、何を部下に任せるかの判断が、最も重要です。幹部がすべてに指示を出すようだと、部下は自主性を失い指示待ちになります。部下にすべてを任すと、部下は迷走します。

各省や自治体の組織の多くは、長い歴史と経験を持っています。その間に、各組織は何をしなければならないかが、幹部が明示しなくても、構成員と外部に共有されています。
ところが、新しく作られた組織や、××本部のように臨時で編成される組織は、下部組織や構成員が何をしなければならないかが不明確です。幹部が部下に対して、はっきり明示しなければならないのです。
既存組織で管理職だった幹部が、新しい組織に来て「何で、部下は動かないのだろう」と悩むのは、ここに原因があります。既存組織では暗黙知だったことを、新しい組織では明示しなければならないのです。

もっとも、幹部も、全体の方向性は理解していても、下部組織にどのように割り振るとよいのか、誰だどれだけ仕事ができるのか、できないのかは、分かりません。だから、常に部下との対話を通して、進んでいるのかいないのか、どこに問題があるのかを把握する必要があります。自分一人ではすべてを把握することは困難なので、代行してくれる「手下」が必要です。
また、部下からも、自主的に問題点が申告されるような仕組みと雰囲気をつくる必要があります。これは、要諦の2「社風」につもつながります。「組織運営の要諦2

さらに検討を求める人

2022年8月16日   岡本全勝

最善の策と次善の策」の続きです。
賛成派と反対派がいて決着がつかない場合、あるいは問題点を指摘して(代案を出さないので)先に進まない場合があります。
このような場合に、「さらに検討しよう」と収める人がいます。困ったことです。ちっとも収めたことにならないのです。先送りしただけです。「あの人は慎重だ」ではなく、「あの人は決断できない人だ」なのです。

企業の場合は、新製品や新しいサービス開発で、このようなことを言っていると、競争相手に先を行かれ、負けます。
行政の場合は、「地域独占企業」であり、「先送りの罪」「不作為の罪」が見えにくいこともあって、しばしばこれが「決着」とされる場合があります。目の前に困っている人がいる場合は、先送りは罪です。

失敗する組織

2022年8月9日   岡本全勝

日野自動車がエンジン試験の不正を続けていたことの調査結果が公表されました。8月3日の日経新聞「「パワハラ体質」日野自の弊害」から。

「担当が明確な業務以外は積極的に引き受けにいかない雰囲気が醸成」
日野自内では部署間の連携がうまくいかず組織内で見落とされがちな業務を「三遊間」と表現。頻繁な組織変更で三遊間の業務を増やし、結果的に担当が曖昧な業務が増えたことを課題として指摘している。
今回の問題でも不正を認識していたのはパワートレーン実験部のみで他部署との人事交流やコミュニケーションは希薄だった。「日野の開発に関わる部署の役員や社員は試験内容をほとんど理解していなかった」

「開発遅れで『お立ち台』、担当者レベルで責任追及」
従業員へのアンケートでは「お立ち台」と呼ばれる行為の指摘も散見された。「問題を起こした担当部署や担当者が、他の部署も参加する会議の場で衆目にさらされながら説明を求められる」とされ、問題が生じて開発が遅れれば担当者レベルで責任をとらされる。
「助け合いではなく犯人捜し」、「言ったもの負け」という言葉でも表現されており、結果的に不正行為などの問題を隠蔽する体質醸成につながった可能性がある。

「上意下達の気風が強すぎる組織、パワーハラスメント体質」
燃費不正では05年11月、副社長を退任して技監となっていた元役員の指示がきっかけとなり、06年から導入される自動車取得税の軽減措置への対応として、大型エンジン「E13C」などで15年度目標の達成を目指す決定がなされた。
元役員の指示は「必達」と捉えられた。エンジン燃費の実力値が軽減措置の目標を達成できない見込みにもかかわらず、役員らから達成を強く求められ、開発担当者は専務や副社長に目標達成が可能だと報告した。

変化はチャンス、ピンチはビッグチャンス

2022年7月31日   岡本全勝

7月22日の読売新聞夕刊「言葉のアルバム」は、大山晃弘・アイリスオーヤマ社長の「マスク供給 応える使命」でした。

・・・2020年3月。前年に中国・武漢で確認された新型コロナウイルスの感染が、日本でも急速に拡大し始めた。情報が不足する中、人々はマスクを求めて殺到し、売り切れが続出していた。
「何としても安定供給しなくては」。アイリスオーヤマ自体、生産設備のある中国からの輸入が滞り、思うような供給ができなくなっていた。中国政府から、国外へは輸出しないように要請を受けたためだ。交渉の末、日本向けも一定量は確保したが、全く足りない。
家電からペットフードまで幅広い生活用品を手がけるメーカーにとって、消費者が必要としている製品を安定的に届けるのは使命だ。

日本政府からの要請もあり、3月下旬、マスクの国内生産を決断した。それからわずか4か月後の7月、角田工場(宮城県角田市)での本格生産にこぎ着けた。工場を報道陣に公開し、「国内に安全安心なマスクを届けたい」と力を込めた。現在、マスクの国内生産は月1億5000万枚。18年7月の社長就任後、最大のピンチを乗り切った。
グループ売上高8000億円の企業の先頭に立つ。胸に刻んでいるのは、半世紀にわたって社長を務めた父・大山健太郎会長の口癖だ。
変化はチャンス、ピンチはビッグチャンス・・・

・・・2011年3月、東日本大震災が襲った。晃弘さんも角田工場で被災。自ら復旧作業の陣頭指揮にあたりながら、被害を正確に把握し、的確な指示を出す父の姿を見た。震災後、父はLED照明の増産に取り組んだ。電力不足という「変化」に対応するためだ。省エネ性能に加え、大手メーカーより安い価格が支持され、大ヒット商品となった。
「会社がピンチに陥った時、経営トップに求められるのは行動力とリーダーシップであることを痛感した」。ピンチをチャンスに変える父のかじ取りを間近で見てきた経験が、マスク生産に生かされた・・・

この欄は、かつて私も出たことがあります。