5月10日の朝日新聞別刷りbe「フロントランナー」は、中島美鈴・臨床心理士の「夢かなえる「時間管理」」でした。詳しくは記事を読んでいただくとして。3ページ目の「精神論ではなく、仕組みを整えればいい」から。
ご本人が、発達障害のひとつ、注意欠如多動症(ADHD)と診断され、それに特化した認知行動療法と出会います。「考え方のくせ」ではなく、整理整頓や計画立てなどの「行動」と「環境調整」を訓練する内容でした。「困りごとに合わせて、仕組みを整える。できないのは、脳の特性が理由であって、その人が悪いのではない。そして、対処法がある」。それを、広めておられます。
ここでは「時間管理」と書かれていますが、私が言う「段取り」(「明るい公務員講座」)と共通するところがあります。
――なぜ、時間の管理に着目を?
自治体職員や大学の相談室、医療機関、主宰する心理相談所などで、心の悩みを聞く仕事を続けてきました。離婚、解雇、友達との絶縁などの困りごとって、実は時間管理が原因で起こることが多いのです。
例えば、遅刻が多い、書類が期限までに仕上げられないなどで解雇。生活リズムが整わず、家事や育児が回らなくて離婚。友達に借りたお金を返すのが遅くなったりLINEの返事が遅すぎたりして絶縁……。先延ばしや時間管理の問題で行き詰まっている人は多く、高学歴や、社会的に地位のある仕事をしている人たちにもいました。
――時間管理ができる人と、できない人の違いはどこにあるのでしょうか。
目に見えない「時間」という概念をあつかう時間管理は、脳の働きの中でも一番高度なものです。
時間管理は、脳の「実行機能」がうまく働くとできて、四つのステップがあります。まずは「スタートする」、次に「計画を立てる」。そして、時計などを見ながら「進捗をモニタリングする」。最後に「脱線を防止する」。この四つがすべてそろわないと、時間管理はできません。
ADHDの特性があると、この実行機能がうまく働かないことがわかっています。日常生活への支障が大きいと診断につながります。ただ、ADHDの場合、薬を飲んで集中力を増すことはできても、時間管理のように高度で複雑なはたらきを改善するには限界があります。
どこが苦手かは、人それぞれです。でも、どこでつまずいているかがわかれば、手を打つことができます。
――どのように対処するのでしょうか。
例えば、スタートが切れないなら、最初のステップを小さくします。計画を立てる時は、まず自分の時間を把握するところからはじめます。それから、やるべきことを書き出してToDoリストにしたら、それを何月何日の何時にやるのか、まで決めて手帳に書き込みます。未来の自分に予約を入れる。ここがすごく大事です。
やり始めたら、スマホのアラーム機能などを使って時間を確認します。脱線しやすい人は、カフェなど自分が集中できる環境で取り組むことも一つの方法ですね。
苦手なのは、性格ではなく脳の特性のせいですから、精神論ではなく、仕組みを整えればいいんです。「自分を責めないで」と伝えたいですね。