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地方行財政

三位一体改革44

中央教育審議会の委員問題について、地方6団体は、4日「このまま議論に参加しないわけにはいかない」として、審議会の本委員会への委員推薦はしないものの、特別部会に委員3人を推薦することを決めました。そして、「最終的な結論は、国と地方との協議の場で出す」よう、官房長官に申し入れました。
地方側の不信は、理解できます。このHPでも何度か書きましたが、中教審は文部省の機関です。文部大臣の意向に反する答申が出ることは、期待できません。しかも、会長が審議入りする前から、「国庫負担金堅持」を公言しておられるのです。「とほほ・・」ですよね。
審議会は「広く専門家の意見を聞く」という建前ですが、多くの場合、原案は官僚が書きます。「官僚の隠れ蓑」との批判は、当たっているのです。
このあと、どのような審議がされ、答申が出るのか。新聞もきっちり報道してくれるでしょうから、日本の政治過程の実例として、ご覧ください。そういう観点から見ると、国民が「審議会とは何か」を勉強する、良い機会です。(3月5日)
7日の日本経済新聞には、中西晴史編集委員が、世論調査をもとに、「三位一体改革わからない8割。分権の利点、地方に説明責任」を書いておられました。
三位一体改革を、「急ぐべき改革とは思わない」という人が52%、「早期に断行すべきだ」が38%です。前者は、「地方に権限を移しても、行政が良くなるとは思わない」「国と地方がお金の奪い合いをしているだけだから」という理由が多いです。
ただし、「地方より国の人材の方が優秀」の回答は3%しかありません。「税金の使い道を国、地方いずれで決めるべきだと思いますか」という質問に対しては、地方が43%、国が12%でした。
「既得権益を握る者が、自ら手放さないのは古今東西共通の現象だ。ならば、国民が追い込む以外にないが、盛り上がりに欠ける」「税金の無駄遣い排除に三位一体改革が役立つのかどうか。地方側が分権の利点を国民にわかりやすく訴える必要がある」という主張です。
毎日新聞は「知事たちの闘い、地方分権は進んだか」連載3「新段階へ発言と行動」を、載せていました。(3月7日)
3月11日、小泉総理大臣は、衆議院文部科学委員会に出席しました。これは、義務教育費国庫負担金改革についての、総理のこれまでの発言に対し、野党が真意を質したいと要求したもので、異例のことです。NHKニュースによると、次のとおりです。
〈総理は、「わたくしは、地方に裁量権を拡大しても教育の軽視にあたらないと思っている。全国知事会など地方団体も『任せてもらえばできる』と言っており、その考えは今後も尊重していきたい」と述べ、平成18年度以降も、国の負担を削減し、地方に移譲すべきだという考えを示しました。ただ、小泉総理大臣は、「この問題で、意見の対立があっておかしくない」と述べ、中教審での議論に加え、国と地方の協議の場での意見も聞いて、結論を出していく考えを示しました。〉
総理は、ぶれておられません。心強いことです。一般財源化反対論者からすると、総理を呼びだしたのは、やぶ蛇でしたね。(3月11日)
新聞記者さんとの会話
記:最近、三位一体の話題がなくって。
全:そうだね。3月いっぱいは、知事さんも議会があるし。
記:でも、今からいろいろ仕込んでおかないと、これからの戦いに勝てませんよ。
全:新知事会長も、いろいろ考えておられると思うよ。
(3月15日)
21日の毎日新聞は、連載「知事たちの闘い・地方分権は進んだか」4を載せていました。三位一体改革のスタート時に、地方自治体が参加していなかったことが取り上げられています。このような検証は、どんどんしてほしいですね。(3月22日)
26日の日経新聞は、「三位一体改革、国と地方対立再燃」を書いていました。4月から新たな議論が動き出すことや、義務教育・生活保護・公共事業についての国と地方の対立を解説していました。(3月26日)
27日の日経新聞は、「義務教育費国庫負担、堅持へ与党攻勢」を書いていました。負担金維持派の主張は、相変わらず、「教育水準と教職員の質を維持するため、負担金が必要」ということです。しかし、ここで何度も解説したように、またこの記事も書いているように、「国庫負担金は教員給与の問題で、教育論とは関係がない」のです(三位一体改革17三位一体改革26)。
こんな主張をされたら、負担金を受けていない高校の教員や私学の先生は、怒るべきです。いつまで、こんな「変な理屈」を主張し続けるのでしょうか。(3月27日)

三位一体改革43

9日の読売新聞に、「地方財政計画」が解説されていました。「スリム化改革どこまで、巨額の使い回し検証なおざり」という副題でです。いかにも、地方財政にムダがあるかのような解説でした。
財務省の主張は載せながら、地方団体や総務省の主張はまったく取り上げていません。まるで「××省の広報紙」みたいでした。解説という形を取っているだけに、よけいたちが悪いですね。たとえ××省の主張が正しいとしても、両方から取材し、「被告」側の主張も載せるべきでしょう。それが記事の基本であり、解説ならなおさらです。読売新聞らしくないですね。(2月9日)
【国の基準】
10日の朝日新聞は、厚労省による児童福祉司の配置基準見直しを伝えていました。児童虐待など児童相談を行う、県や大都市に置かれている専門職員です。
記事にもあるとおり、地方交付税では「人口6万8千人に1人」の基準で計算(交付税が配られるように)しています。一方、厚生労働省は「10万~13万人に1人」を配置基準にしてあるそうです。
交付税の計算基準も、かつては厚生省の基準に合わせていたのですが、近年、問題が大きくなり、各県の要望や実態に合わせて人数を増やしてきました。現場では、国の基準の改定など待っておられないのです。これが、分権が進んだ一つの形でしょう(私は、厚生省も基準を変えていたと思ってました)。(2月11日)
17年度の地方財政計画、地方交付税法等の改正案、地方税法改正案が、8日に閣議決定され、国会に提出されました。審議を待ちます。自治財政局のHPに載りました。(2月13日)
12日の産経新聞は、「三位一体改革論議再起動」として、1面を使って解説していました。読売新聞は、「知事講座シンポジウム、地方はどう自立するか」を載せていました。また、毎日新聞は社説で「全国知事会、国と闘う力量をつけよ」を主張していました。(2月14日)
全国知事会長が決まりました。記者さんたちとの会話です。
「会長選挙がこんなに注目されるのは、初めてですね」
「それだけ、知事会が力を持った、しかも中央政界が気にするようになった、ということでしょう」
「でも、穏健派の麻生知事では、急進派の増田知事に比べ、三位一体改革は進みにくくなりませんかね」
「それは違うだろう。穏健派が会長になると、急進派の突き上げを気にせざるを得ない。急進派から『手ぬるい』と批判されないために、積極的にならざるを得ない。逆に急進派が会長になったら、穏健派と妥協しなければならないから、ペースを落としただろうけど。『軍縮ができるのはタカ派』と同じだね」
新会長と知事会に期待しましょう。このHPでも書いているように、地方団体から次々と仕掛けていかないと、この改革は進みません。(2月17日)
今朝の新聞各紙は、知事会長選の結果を解説していました。「分権改革、重い公約」(朝日)、「政府、地方無視できず。三位一体改革、協議を継続へ」「存在感を増す知事会、分権の具体像カギに」(日経)、「国との交渉力増す、投票手続通じ」「求められる施策能力」「自民に安どと警戒感」(毎日)、「政策能力持つ組織へ変革必要」(産経)などです。読売は、青山彰久記者の「意見提出権で内政に積極関与を」を載せていました。
社説は、「痛み覚悟で結束を保てるか」(日経)、「新会長に三つの注文」(朝日)、「地方の時代、調整型では通らない」(毎日)でした。
知事会への期待がいかに大きいか、そして何を期待しているかがわかります。(2月18日)
19日の読売新聞社説は、「全国知事会長、自己改革への指導力も大事だ」を書いていました。21日の毎日新聞は「知事たちの闘い、地方分権は進んだか」連載1を、日経新聞は「麻生知事会スタート、懸案山積の船出」を載せていました。(2月22日)
24日の産経新聞は「知事会長、昔名誉職、今は激職」を書いていました。日経新聞夕刊は、中西晴史編集委員の「全国知事会長に麻生氏、容易でない改革の成果」を載せていました。(2月24日)
28日の毎日新聞は、「知事たちの闘い・地方分権は進んだか」連載2を載せていました。主張は「国民の共感を味方に」です。
2日の朝日新聞では、坪井ゆづる論説委員が「三位一体決着なるか。改革3年目、今後の行方探る」を書いておられました。「改革は3年目に入り、いよいよ決着のときを迎える」です。問題点を、切れ味よく分析しておられました。ご一読ください。(3月2日)
3日の朝日新聞夕刊には、新藤宗幸千葉大教授が、「全国知事会、制度構想で官僚と闘え」「地方分権改革の政治勢力へと成長」を書いておられました。(3月3日)

2005.02.17

伊東弘文地方財政審議会会長の編著による「現代財政の変革」(ミネルヴァ書房)が、出版されました。この本は、先生の還暦記念として出版されました。詳しい目次は、HPをご覧ください。執筆者は豪華メンバーで、内容も近年の地方財政の変容を反映したもの、かつ多岐にわたるものとなっています。