土屋了介・東京財団上席研究員の「TPPをこう考える」(7月30日)から。
・・混合診療
現在の保険適応の審査体制が健全なものとは思われないが、科学的な検証が十分に済んでいない医薬品・医療機器を保険適応することは不適当であり、科学的根拠に基づく合理的な保険審査体制が必要である。しかし、リスクを承知で検証中の医薬品・医療機器を使いたいという患者の当然の要求も忘れてはならない。これこそが混合診療の対象となる診療であり、その適否は(専門家集団としての)医師が症例ごとに特性と条件を検討し判断すべきである。すなわち、現在、行われているような、先進医療として厚生労働省が一律に適応を定め混合診療とするという仕組みは、医療上の判断としては間違っている。医療法制上は混合診療を全面解禁とし、その適応は責任ある自律した専門家集団の医師が行うべきである。
・・混合診療はすでに導入されているが、その適否は医療行政の専門家ではあっても診療の専門家ではない厚生労働省が行っている。保険適応の判断は単に医学的にあるいは科学的に判断するのではなく、費用対効果などが絡むので行政的・政治的判断が必要だが、まだ科学的検証が十分でない診療に対して、患者が希望して混合診療として個人負担となる場合に、行政的・政治的に一律に基準を設けるのは不適当である。科学的検証が十分でないのであれば、医師が個々の患者の置かれた医療状況を勘案して判断すべきであり、専門家集団として周囲の医師が判断の援助をする体制が必要である。すなわち、専門家集団としての医師(複数)が自律して医療的判断を下し、その判断に反する者に対しては自浄作用を有してなければならない。
したがって、医師が厚生労働省にガイドライン作成を請願したり、厚生労働省の省令、通知を求めたりするのは間違いであり、医師が自らガイドラインを作り、自らが遵守し、患者・国民の信頼を得ることが必要である・・