10月12日の朝日新聞オピニオン欄「電話が怖い」から。
電話に苦手意識を持つ人は、どのような心構えで向き合えばいいのでしょうか? 約15年間コールセンターで働き、電話応対コンクール全国大会で優勝した経験がある「ケーブルテレビ」(本社・栃木市)カスタマーサポート担当課長の三沢教子さんに、会話を円滑にする電話応対術を聞きました。
――電話が怖いと思ったことはありますか?
「当然あります。今もドキドキしながら緊張感を持って対応しています。うまく説明できる自信がないとか、クレームに発展してしまったらどうしようとか。でもそうした不安は、相手に対しての謙虚さの表れでもあると思います」
――どうすれば克服できるでしょうか。
「電話応対の基本技術を身につけることが何よりも大事だと思います。名乗りから始まって、相づちをちゃんと打つこと。私たちは『笑声(えごえ)』と表現していますが、笑顔であることが伝わるような声で話すこと。適切にお礼やおわびを言う、復唱する、寄り添う姿勢を示すこと。これらをしっかり身につければ、相手のトーンや言葉に乗る感情が柔らかくなる瞬間が見えてきます」
「基本技術は自分自身を守る『武器』になります。何のよろいも武器もなく、丸腰の状態で『とりあえず電話を取れ』と戦いに臨まされたら、弾があたって傷つけられ、誰だって『電話が怖い』『逃げたい』と思うでしょう」
――敬語や丁寧な言葉遣いが正しく使えず、電話に苦手意識がある人へのアドバイスは?
「まずは本やインターネットなどで情報収集をして、電話での応対にふさわしい言葉を知っておくことです。また、お客様から『間違った日本語だ』と指摘をいただいたら、それをスルーしないこと。私たちは、それは自分たちがスキルアップするために必要なものだと受け止めています」
「例えば『なるほど』は相手に対して失礼にあたることがある。『勉強になります』『私も同じように思います』が適切ですね」
――急にかかってきた電話だと、用件も、相手が誰かもわからないので不安を感じる、という人への心構えを教えてください。
「相手や用件がわからないからこそ、基本を押さえることが大事です。相手に安心してもらえるようなトーン、笑声で会話をスタートさせることが重要です」
「具体的には、私は電話を受ける前に口角を上げるようにしています。身ぶり手ぶりが伝わらない分、ウェルカムな気持ちを表すために、笑声を崩さずに話します」
「また、実際にわからない内容のことを尋ねられたときのために、わからないなりのフレーズをおぼえておくことです。『間違いがあってはいけませんので担当に確認いたします』など、ポジティブな表現に言い換えましょう」