日経新聞「私の履歴書」、9月は宇宙飛行士の向井千秋さんです。11日の「搭乗決定」に、次のような話が書かれています。
選ばれた有能な宇宙飛行士でも、このように訓練します。「火事場の馬鹿力」という表現もありますが、通常の人は異常事態が起きた場合に、想定したこと、訓練したことしか実行できません。いえ、訓練したこともできないのです。東京電力福島第一原発事故も、そうでした。
・・・訓練は大変でしょうとよく聞かれるが、このミッションではこういう実験をやると決まっていて、訓練の手順も決まっている。何回か訓練するとできることをやっていて、一歩一歩やっていって気がつくと打ちあげ当日になっている。NASAではそうした仕組みがしっかりできていて「すごい」と感心した。
大変なのは計画通りに行かないときだ。予定が狂ったときにどう対応するかが訓練のキモで、考えられる限りの異常事態を想定して対応する訓練を繰り返した。訓練の途中で不測の事態が発生したことを知らせる「グリーンカード」が差し入れられると、時間内に対策をとらねばならない。
例えばショウジョウバエ10匹を使う実験の訓練で「容器を開けると3匹しかはいっていない」といったカードが差し入れられる。真剣にやっているので実際の事故か訓練かの区別がつかなくなるほどで、訓練が終わるとぐったりしてしまった。打ちあげ前の2年間はこうした訓練をぶっ続けでやった・・・