連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第233回「政府の役割の再定義ー首相を支える事務秘書官の仕事」が、発行されました。政治家と官僚との関係に関して、前回から、首相秘書官の役割と育成について説明しています。
私は、麻生太郎内閣(2008年9月~09年9月)で約1年間、事務秘書官を務めました。総務省出身者が就くことは異例でした。そして、私は首相や政務秘書官と相談の上、政策統括担当と位置付けてもらいました。
その目的の一つは、事務秘書官間の縦割りの解決です。各省案件は事務秘書官が分担するのですが、バラバラに処理案を首相に上げるようでは困ります。いま一つは、首相の政治判断について、お手伝いをすることです。首相肝煎りの政策を進めるにも、首相の下での政策を統一するためにも、統括役が必要だと考えました。その成果の一つが、「麻生内閣の主な政策体系」です。
私は首相秘書官に就任する4年前に、麻生総務大臣に官房総務課長として仕え、その後も政策の勉強に呼ばれていました。そこで麻生氏の政治姿勢を理解し、首相秘書官に就任すると直ちに簡単な打ち合わせだけで、所信表明を含めて首相発言の原稿を書くことができました。それに首相が手を入れます。しかし、このような経験を有して、任命直後から対応できる秘書官候補は多くはいません。
各省でも、総理秘書官候補の人材を準備しているはずですが、明確に総理秘書官を育てる職や業務などの「経路」があるわけではありません。また、どなたが首相になるか予想も容易ではなく、また予想ができたとしても、候補者がその方と「密な」準備をしておくことも難しいでしょう。
首相、閣僚、与党、各省の結節点である首相秘書官候補者をどのように育成するかは、政治主導に対応するための行政側の課題の一つです。
次に、内閣官房で働く職員について考えますが、その前に、内閣官房について解説します。内閣官房がどのような組織か、多くの人は知らないでしょう。