イギリス政党の混迷

若松邦弘著『わかりあえないイギリス 反エリートの現代政治』(2025年、岩波新書)を紹介します。議会制民主主義、そして二大政党が交代で政権を担う「手本」とされるイギリスで、大きな変化が起きています。戦後は、保守党と労働党の二党が、支持基盤もはっきり分かれ、政策も多くの点で共有しつつ対抗してきました。ところが、支持基盤が揺らぎ、また二大政党が有権者を分け合うことも崩れつつあります。

かつては、二大政党は、経済的な社会勢力の違い、階級を代表していました。そこに、第2の軸として、保守とリベラルという社会文化的な対立が出てきているのです。二大政党の指導者たちエリートに対する、地方からの反感が出ているようです。事前の予想を裏切った、EU離脱がその象徴です。そして、社会の分断が大きくなっています。その一つの要因が、移民の増加です。イギリス政治のこの20年の動きは、そんな簡単なものではないのですが。詳しくは、本をお読みください。近藤康史著『分解するイギリス―民主主義モデルの漂流』(2017年、ちくま新書)も、よかったです。

私は、連載「公共を創る」の執筆で、近年の日本の政治、行政、経済、社会の停滞を論じていて、いまはちょうど政党を書いているところです。
アメリカはまだ二大政党が頑張っているようですが(とんでもない主張をする大統領が選ばれていることはさておいて)、西欧諸国では21世紀に入ってから、従来の政党地図が書き換わり、有権者の意識も大きく変化しているようです。

それを見ると、イギリスの変化も、日本の政党の諸課題も、同じような歴史の流れにあるのかもしれません。社会の変化で、二大政党制を目指すことが難しくなっているのでしょうか。そうだとしても、日本の各政党は、どのような社会集団を代表して、どのような社会を目指しているのでしょうか。その点で、イギリスの各党は、支持者獲得・拡大のために、政策を練り、他党との違いを際立たせています。また、地方組織、地方議会を通じて、支持者を獲得しようとしています。日本の政党には、その努力が見えないのです。