3月8日の朝日新聞オピニオン欄に、五百旗頭真先生の「防災復興庁の創設 次なる天災の安全保障を」が載っています。
・・・この時代の日本に生きる者の責任として、私は新たな国の機関「防災復興庁」の創設を提言したい。
東日本大震災と東京電力福島第一原発事故からの復興のため、2012年2月に現在の復興庁が発足した。震災発生から10年が経過する21年3月に設置期限を迎えるが、その後も、福島を中心に、継続的に取り組まねばならない課題がなお存在することは広く知られている。
しかし、ここで私が提言したいのは、すでに起きた災害からの復興だけではなく、これから起こることが予想されている南海トラフ巨大地震や首都直下地震といった「国難」ともいえる災害を、この国が乗り越えていくための体制づくりだ・・・
・・・これまで復興庁はよくやってきたと思う。しかし、他省庁から異動してきて数年で元に戻るのではなく、将来の大災害に立ち向かう防災復興庁には、腰を落ち着けて働く専門家が必要である。気をつけたいのは、新たな役所をつくるとなると、既存省庁のどの部門を移すのか、どの省庁が主導権を握るのか、といった官僚政治ゲーム的な関心が優越することだ。関東大震災の際に後藤新平内相が復興院という強大な新組織を試み、わずか4カ月余りで破綻した・・・
・・・財政面の課題も大きい。古くから復旧費は予算のやりくりや寄付で賄われた。近代の関東大震災や阪神大震災では大規模な公債という借金が中心だった。巨大な復興費を要する東日本大震災では、初めて復興税が加わった。被災地の復興のために国民が増税を受け入れたことは注目に値する。日本国民は被災を他人事とは思わず、全国民で支えることを了承した。それによって、将来の世代を津波から救うための高台移転や海辺のまちの多重防御といった創造的な復興が可能になった・・・
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