『帳簿の世界史』第13章は、「大恐慌とリーマン・ショックはなぜ防げなかったのか」です。
大恐慌をきっかけに、アメリカでは、グラス=スティーガル法を作り、銀行業と証券業の兼業を禁止します。また、証券取引委員会(SEC)が設置されます。
1975年にSECは、「全国的に認知されている統計的格付け機関」を制度化し、ムーディーズ、スタンダード・アンド・プアーズ、フィッチの3社を指定します。この3社が、企業や国家の債権格付にお墨付きを与えたのです。ところが、その監査法人が、顧客である会社の監査とともにコンサルティングを行います。そこに癒着が生まれます。1999年には、グラス=スティーガル法の「銀行業と証券業の分離」規定も廃止されます。
エンロンの破綻により、粉飾決算に加担していたアーサー・アンダーセンが解散に追い込まれます。
・・・エンロンの一件で皮肉なのは、アーサー・アンダーセンが行った監査の一部は十分にまともだったことである。優秀な中堅クラスの監査担当者は、2001年に、エンロンの疑わしい取引と不正経理を明白な証拠とともに上司に告発した。ところが年間1億ドルのコンサルティング・フィーを失うことを恐れた幹部は、この告発を無視したのである・・・(p325)。