国民に響かない政治家の言葉「安全安心」「緊急事態」

朝日新聞デジタル記事「いつも緊急、信じられない安全 金田一秀穂さんが感じた言葉の無力さ」(9月24日掲載)、金田一先生の発言から。

・・・「クラスター」や「ウィズコロナ」など、本当はもう少し時間をおいて、わかりやすい言葉にしたほうが良かったけれど、コロナの蔓延に社会が追いついていないのでしょう。「ステイホーム」なんて、犬に命令しているようですよね。

コロナという、えたいの知れないウイルスがあることは、もうどうしようもない。現状をどう言えば良いかわからないから、「コロナ禍」と名づけることで私たちは整理がついて、少し安心できるわけです。「コロナ禍」とまず認めて、ではどうしたらいいだろう、と次に進むことができる。それが言葉の働きなのでとても重要です。でも、実際のひどいコロナ禍というのは言葉では言い尽くせない。

政治家は言葉を乱発する。必死になって「安心安全」と言う。でも、実は本人がそれを信じていないですよね。実際は安心安全ではないですものね。いま、言葉がぞんざいでありすぎると感じます。政治家が言っているはしから、「本当じゃないでしょ」と人々はすぐわかってしまう。いい加減なんだな、とはっきりわかっていますよね。

だから、「緊急事態」はちっとも効果がないわけでしょう。いつも「緊急」なので。毎年毎年、「異常気象」と言っているようなものですよね。緊急事態という言葉自体が、実質的に意味をなくしている。言葉が消費されて、私たちに響いてこない。そういう言葉にうんざりしてきていて、素通りしてしまう・・・