『ストレスのはなし』

ストレスのはなし メカニズムと対処法』(2017年、中公新書)を紹介します。
著者は、防衛医大卒、自衛隊で精神科医官を勤め、現在は開業医です。イラク駐留にも派遣され、隊員の相談や診察にも当たった経験があります。戦場は、ストレスの高い場所です。

現代人に広くお勧めします。特に、管理職には必読です。新書なので、読みやすいです。
「ストレスとは何か」「ストレスにどう対処するか」のほかに、「事例紹介 ストレス障害発症のきっかけ」として、7人の事例がが載っています。
パワハラ、育児ストレス、夫婦げんか、スケープゴート、セクハラ、借財、嫁姑関係です。これが、わかりやすいです。「このような場合に発症するんだ」と、納得したり驚いたり。この部分だけでも、お読みください。

ストレスについては、皆さん、ぼんやりとした知識はお持ちでしょう。しかし、風邪を引いたり骨折したりしたら、どのようにしたらよいかは、たいがいの人は知っていますが、ストレス障害にはどう対処して良いか。ほとんどの人は知りません。
また、発症には個人差があり、よくわかりませんよね。同じような仕事の負荷でも、折れる人とそうでない人と。新著『明るい公務員講座 管理職のオキテ』にも、注意点を書いておきました。「コラム3 精神の体力」
この本を読むと、「なるほどそうなんだ」と、一通りの知識を得ることができます。
そして、「こんなことは、してはいけない。避けるべき」という予防法と、対処方法がわかります。対応の男女差、体を動かすことの重要性、他人と話すこと、家族関係の重要性などです。
ストレスやうつ病。現代社会では珍しくなく、避けてとおることのできない課題になっています。本人が発症しないようにするとともに、職場で発症例が出ないように対応しなければなりません。また、起きた場合の対処も。
昔のように「根性が足らない」「弱い奴だ」では、通りません。

そのような観点で見ると、学校では教えてもらわない、「現代人の暮らしのリスク」はたくさんあります。
いじめ、不登校、引きこもり、児童虐待、DV、セクハラ、パワハラ、ブラック職場、インターネットやSNSの危険(犯罪被害に遭うことなど)、災害時の行動(備蓄や帰宅困難)、振り込め詐欺、花粉症、ノロウイルス・・・
これらを、どのように子供たちに教えていくか。大きな課題になっています。「よい子になりましょう」という教育だけでは、十分ではないのです。