社会はブラウン運動4 指導者の意図も行き当たりばったり

社会はブラウン運動」第4回です。
社会を導くのは指導者です。歴史を作る際に、一般人より影響力を持ちます。しかし、国民が思い思いの意図で動くとともに、政治指導者も自分の思うように、意図を実現できるものではありません。
彼も、競争相手との競合があり、国民の支持を取り付ける必要もあります。民主主義だけでなく独裁国家であっても、政治指導者は国民の支持を取り付けるため、さまざまな「演技」をしなければなりません。

さらに、指導者たちも、一定の目標を持って政治を進めたのではないようです。その場その場での判断を積み重ねた結果、歴史に残る業績が残ったようです。彼らに変わらない信念があるとしたら、権力を維持し拡大することでしょう。
もちろん、ある政策を実現するという信念を持っている場合もあるでしょうが、社会のすべての要素について、目標を持つことは不可能です。しかし、権力者がある政策を実現しようとして権力を握ると、一部のことにだけ関心を持つだけではすみません。
競争相手との競合については、三谷博先生の『維新史再考』を紹介した際に、歴史がジグザクに進むと説明しました。「歴史をつくるもの、『維新史再考』2

強力な独裁者であったナポレオンもヒットラーも、信念であのような国家をつくり、対外戦争を続けたというよりは、その場その場で国民の支持を取り付け、政権を維持することを優先したとみえます。そのために、戦争を続けなければならなかったのです。
共産主義革命を担った指導者は、その信念を実現しようとしたのでしょう。しかし、レーニンや毛沢東が権力奪取を優先し、さらにその後継者たちは共産主義より権力維持を優先しました。

現代においても、トランプ大統領の政策や発言は、ある政治哲学に基づいているのではなく、自らが目立つことと国民の支持を取り付けることを優先しているように見えます。その際には、これまでの世界の指導者が考えてきた自由貿易体制をより強固にするのではなく、それをひっくり返すことで、国民の人気を得ようとしています。 既存のリベラルな主張やオバマ政権の路線をひっくり返すことで、国民の支持を取り付けようとしています。

さて、このブラウン運動の連載は、歴史はある法則に従って進んでいるのではなく、ジグザクに動くという話です。その基礎には、人の動きはブラウン運動的であるという話でした。
事前の大方の予想を裏切ってトランプ大統領当選したのは、それを支持した国民がいたからです。これまでの先進諸国の歴史の動きは、自由貿易体制の進化でした。それに反発する彼の主張が、一時の「エピソード」に終わるのか、アメリカがますますその方向に動くのか、世界全体がその方向に変化するのか、それは時間が経たないとわかりません。
ただし、社会は自然と流れているのではなく、参加者である人たち特に政治家やオピニオンリーダーによって方向を変えることもできます。(この項終わり)