日経新聞連載「シリーズ検証、流通革命50年の興亡」4月27日は、「コンビニ市場、10兆円目前」でした。コンビニは、中小商店が多い日本での定着は難しいと、いわれていたのだそうです。それが社会に溶け込み、日本中どこに行っても、見慣れた看板を見つけることができます。私たちの暮らしに、なくてはならないものになりました。
食べ物や飲み物、それも新鮮でいろんな種類があります。小売り以外のサービスも、すごいです。コピーにファックス、公共料金の支払い、チケットの予約、宅急便の発送と受け取り。各種サービスの「端末」であり、社会インフラです。店員の多くはアルバイトでしょうが、仕事を覚えるのは大変だと思います。
1999年、ダイエーが経営不振のため、子会社のローソンを売り出しました。複数の総合商社が経営権獲得に動き、三菱商事が勝ちました。当時、三菱商事で買収後の事業計画を策定した、新浪剛史、後のローソン社長は、「事業計画書の青写真はバラ色だった。魅力ある約7千店のネットワークを金融、IT(情報技術)の拠点に使う。あの時のコンビニ株はIT銘柄だった」と語っておられます。しかし、新浪社長がローソンで最初に手がけたのは、おにぎりをおいしくすることだったそうです。「コンビニの原点は、毎日お客さんが手に取ってくれる食べ物。ITのような仕掛けではなかった」。
人間の予想は、研究者でもその道のプロでも、当たらないことも多いようです。後から見ると、当たった場合も外れた場合も、それなりの理由があります。
記事には、次のような記述があります。
・・非効率な中小商店を生産性の高いコンビニに転換させたセブン・イレブンに対して、経営学者ピーター・ドラッカーは「社会革命」と称した・・
わずか100平方メートルほどの売り場、一つひとつは100円とか200円ほどの商品。それを、商社が経営する。結びつかないですよね。40年前に伊藤忠商事も、商社ビジネスの間尺に合わないと判断したのだそうです。
しかし、個人商店では難しい、大量・他品種の仕入れ、POSによる売り上げと在庫管理、途切れない商品の補給、進化し続ける仕組みを、商社の力で成し遂げたのでしょうね。各店舗、各商品、各サービスの後ろにある「支える仕組み」があって、初めてできることです。個店では、できないのです。ある地方に出店をお願いしたら、「その地域までシステムが伸びていない(中継拠点がない)」ことを理由に、断られたという話を聞きました。
鷲巣力著『公共空間としてのコンビニ―進化するシステム24時間365日』 (2007年、朝日選書)は、少し古くなりましたが、勉強になりました。