御厨先生の指摘を読んで、私は、アカデミズムとジャーナリズムの罪を考えました。もっとも、これは私のオリジナルではなく、多くの識者が指摘していることです。
これまで日本のアカデミズムは、海外の理想的な政治制度を紹介して、それを基準に日本の政治は遅れていると、国民を教育してきました。その際に、イギリスやフランス、アメリカでも、ここに至るまでにどのような経験と犠牲を払っているかを、捨象しています。そして、それらの国々でも、日々の政治の運用では、そんなに単線的にかつきれいに進んでいるのではないこと、利害対立が激しいことを教えません。
ジャーナリズムもまた、その理想を基準に、「日本の現実政治はダメだ」と批判します。それはある面必要です。しかし、「あれもダメ、これもダメ」と批判するだけでなく、「ここはダメだが、ここは良い」と指摘しないと、「全て悪い」では、改良と進歩がありません。また、理想に近づく道筋を指摘しないと、無責任です。
子育ても、部下職員の教育も同じでしょう。欠点をしかってばかりでは、子どもは育ちません。良いところを誉め、欠点は修正の方向を示す必要があるのです。
あわせて、政党の扱いが小さすぎると思います。日本は、議会制民主主義をとっているのですから、政党を通じて政策を実現するのが、正当な道です。すると、それぞれのテーマ・政策について、各党の主張を検証し、より正しいと思われる政党を支援することが必要でしょう。政党を誉め、批判して、育てることが必要です(官僚批判をしているだけでは、良い政治は実現しません)。