カテゴリー別アーカイブ: 地方財政改革

地方行財政-地方財政改革

国と地方の税源配分

平成18年度
1 国と地方の税源配分(総額)
平成18年度国の予算と地方財政計画の税収を基に、三位一体改革による3兆円の税源移譲を加味した税源配分の姿です。
(税源配分)
現在(A)、国の税収が51兆円、地方の税収が35兆円で、合計86兆円です。国と地方の配分割合は、59:41です。
ここから3兆円地方へ税源移譲すると(C)、国税は48兆円、地方税は38兆円になります。3兆円は86兆円の3%強に当たりますから、3ポイント国から地方へ移ります。税源移譲後の配分割合は、56:44になります。
この時点で、国税と地方税の税収の差は10兆円ですから、あと5兆円税源移譲をすると、国と地方が5:5になるということです。特に、個人所得課税は今回の税源移譲で、B63:37からD51:49になります。大まかに言って、6:4から5:5になります。
平成19年度に税源移譲が実行されると、このようになります。もっとも、それまでに定率減税が廃止されたり、景気動向によって税収が変化しますので、この数字にはなりません。あくまで、18年度予算を基にした試算です。また、地方税収には、このほかに法定外税があります。
(実質配分)
さらに、この国税(C)の中から、交付税や譲与税が地方に配分されますから、地方の取り分はもっと大きくなります。その試算がEです。交付税(法人税については平成19年度以降に適用される34%を用いてあります)、譲与税、地方道路整備臨時交付金を地方の取り分として試算してあります。これでは、国対地方は40:60になります。
単位:兆円
国税
地方税
合計
現行A
50.9(59%)
34.9(41%)
85.8
うち個人所得課税B
15.8(63%)
9.1(37%)
24.9
3兆円税源移譲試算C
47.9(56%)
37.9(44%)
85.8
うち個人所得課税D
12.8(51%)
12.1(49%)
24.9
交付税等を加味E
34.0(40%)
51.8(60%)
85.5

国税は、特別会計分を含む。

地方税は、地方財政計画額。
個人所得課税は、所得税、個人住民税、個人事業税です。
2 課税客体別国と地方の税源配分・税収配分(2006年度試算)
上の表の試算Cを、個人所得課税・法人課税・消費税・資産課税などに分けて、金額の大きさを図示したのが、次の表(エクセル)です。
この図では、縦の幅が課税客体別の税収の割合です。その中を、「国税のうち国の取り分」「国税のうち地方の取り分」「地方税」に色分けしてあります。どの税目が大きいか、どの税目で地方の取り分が少ないかが、一目瞭然です。これで見ると、たばこ税や酒税って小さいですね。消費税での地方配分の小ささがよくわかります。
このHPにうまく描けないので、エクセルファイルで貼り付けてあります。開いてみてください。作成協力:自治税務局寺崎補佐

破綻法制

30日の毎日新聞社説は「自治体破綻、法制化の前に自治の確立を」書いていました。
「地方自治が確立された場合には不可欠な法制だ。しかし、税源も権限も地方に移譲しないままで、自治体首長の責任ばかりを問うのであれば、国の責任を転嫁する行為と言わざるを得ない」
「自治体に税源や行政権限が十分に移譲され、地方自治が確立されれば、総務省など中央省庁の権限は大幅に減少する。自治体が経営について全面的に責任をもつことが必要になる。そうした段階に至れば、自治体の破たん処理は総務省に任せるのではなく、法制に基づいて処理する必要が生まれる。その意味で、将来的に自治体の破たん処理法制は必要である。
ただし、自治体への税源、権限の移譲は始まったばかりだ。中央省庁はそれらを一向に手放そうとはしない。現状は地方自治の確立からはほど遠い。そうした現状で自治体首長の責任を問うことは、国の理不尽な責任転嫁である。自治体の破たん法制の整備は必要だが、それ以前に地方への税源、権限の移譲を大幅に進め、地方自治を確立する必要がある」

財政論2

パネルディスカッション「都市対地方:財政、公共事業、一極集中の是非をめぐって」発言骨子(続)
財政論1から続く
3 財政から見ると
(1)都市から地方への財政移転
代表は、補助金(公共事業、農業など)と地方交付税。
地域間格差と財政問題を議論するときには、一人当たり所得やGDPが比較される。一方、税金がどのように配分されているか、補助金と交付税で分析するのが主な手法。
しかし、補助金と交付税のすべてが、地域間格差を埋めるためのものではない。
財政移転を二つに分けて考えるべき
①対人サービス
ナショナルミニマムといわれる支出は、地域でなく個人に着目して配分される。教育、医療、介護など。
これらは、1人当たりほぼ同額の支出。全国一律のサービス水準である。一方で、地方団体に事務を担当させているので、税収格差がある。それを埋めるための手法が、補助金と交付税。
②公共事業や産業支援
これは、国民1人あたりで支出していない。これを、どう評価するか
通常、都市対地方を比較する際に、公共事業費を住民1人当たりで比べるが、面積当たりで比べると東京が圧倒的に大きい。
また、公共事業支出が、地域の人たちに帰属しているとは限らない。地域外の大手企業が受注することを考えればわかる。
(2)経済論と政治論
このように、地域間再配分と国民間再配分を、分けて議論しなければならない。
そして、国民間の再配分は、まさに財政の仕事。
地域間の再配分は、この国をどうつくるか政治の仕事。
いずれにしても、この国のかたちをどうするかの問題。
補助金交付税の地域間帰属分析は、さらに三位一体改革議論も、行政分野だけの「狭い議論」でしかない。
4 国際比較
中国財務省幹部から、質問を受けたことがある。
「日本では、経済発展による地域間格差、人口移動にどう対処したか」「人口移動を法律で禁止したのか」
私の答は、「日本は、(最初に述べたように)いくつかの組み合わせで処理をした。人口移動は禁止しなかった。」
中国では、経済発展格差による人口移動は、人口増加問題に次ぐ、重大問題。
一方、先進諸国では、この問題はどのように設定されているか。
社会文化的背景が違う。ドイツ、フランス、アメリカ。
それによって、問題意識も、用いる政策も違う。
純粋経済学のみで議論したり、解決する問題ではない。
5 林正義先生(財務省研究所)からのコメントに対する発言
林先生が指摘されるように、現在の日本では、都会と地方とどちらが果たして豊か。
いつまで、一人当たり所得(お金)で、豊かさを測るのか。
西ヨーロッパ各国に比べ、一人当たりGDPでは1.5倍になっている。でも、幸せを感じない。
豊かさと平等を達成した日本。キャッチアップの終了は、戦後型政治の終了でもある。

財政論1

パネルディスカッション「都市対地方:財政、公共事業、一極集中の是非をめぐって」発言骨子
日本経済学会2004年度秋季大会(9月25日岡山大学)
司会 東京大学井堀利宏
国際基督教大学八田達夫、京都大学藤田昌久、関西学院大学小西砂千夫、慶応義塾大学土居丈朗、総務省岡本全
私の発言骨子
「なぜ今、都市対地方が問題になるのか」から、問題を整理したい。
1 歴史的、社会的背景(かつての問題)
まず歴史的な経緯から見ておく。
(1)高度経済成長期
経済発展が、地域間の経済力格差を生む。
生産性の高い工業対農業=都市対地方という構図。
しかし日本では、それが政治的対立につながらなかった。
その理由は、次の3つと考えられる。
①人口移動:社会的解決
地方から都市(太平洋ベルト地帯)へ、大移動があった。
農家の二男、三男を都市が吸収
②工業分散:経済的解決
新産業都市建設をはじめ、農村部へ工業が立地。
兼業農家を可能にした。
③農業と農村の保護:政治的解決
米価政策、輸入制限
公共事業を中心とした補助金の配分
「自民党形政治」と呼ばれるもの。
こうして、世界一の経済成長と平等を達成
(2)東京一極集中
このように、高度成長期は、日本全体では「地方対太平洋ベルト地帯」、地方でも「中心都市対農村」という構図。
しかし、その後(1980年代以降)の東京一極集中は、それとは違う。
これについては、八田先生が説明してくださったとおり。
東京一極集中に対し、政治的、経済的に有効な対策を打てなかった。
以上が、日本の都市対地方問題の歴史である。
2 今なぜ問題になるのか
象徴的なのが、「骨太の方針2001」策定時の議論。
「均衡ある国土の発展」という国是を、「地域間競争」という言葉に転換しようとした。そこには、次のような背景がある。
(1)経済発展の終了
財源がないのに、都市から地方への財政移転を続けていることへの疑問。
赤字国債を大量発行しながら、まだ補助金と交付税を配るのか、という批判。
(2)補助金と公共事業の手法への疑問
米価政策は終了。
これまでの農業補助金は、農家を育てたか。疑問。
公共事業は農民と農村を豊かにしているか。疑問。
このまま補助金と公共事業を続けて、地方はよくなるか。
(3)問題の変質
農民は、4%を切った。
農業対策が、地方対策か。
都市対地方は、有効な問題設定か。
有効な地方振興策は、何か。
経済成長の終了=もはや、経済発展が生む地域間格差の問題ではない。
均衡ある国土の達成=公共事業によるインフラ整備もほぼ完了した。
課題を達成したときに、手法は変わるべきであり、また問題の立て方も変わっているのではないか。

地方財政の仕組み・マクロ

1 地方財政対策
(1)地方財政対策の流れ
平成15年12月18日に、16年度の地方財政対策が決まりました。これは、地方財政全体の歳入歳出の概要を決め、財源不足がある場合には、その対策を決めることです。例年、国の予算の財務省原案が決まる2日前くらいに決まります。今年もそうでした。

例年と違うのは、今年は
①総理指示による、国庫補助負担金1兆円削減を決める必要があったこと
②それによる税源移譲を決める必要があったこと
です。①が12日に政府与党で決定され、②も17日に党税調で決まりました。

その他の国庫補助金額が財務省の査定で決まり、経済成長率と税制改正が決まると税収見積もりができます。そして、地方公務員数の見込み(来年度は1万人減)と国の補助金をもらわずに地方団体が行う事業(単独公共事業は9.5%減、事務費・施策経費も削減)を総務大臣が決めると、地方財政の歳入歳出の大枠がわかります。

16年度は、歳出規模は84.7兆円(1.5兆円減)で、それに対し収入が14兆円不足すると見込まれました。これを、国からの交付税財源の加算と地方債の増発で埋めることとしました。埋める方法は去年と同じです。この結果、地方交付税の総額は16.9兆円、1.2兆円の減となりました。

(2)地財対策の方法
工事中

2 地方財政計画
(1)地財計画(未定稿)
この後、国の予算の詳細が決まると、地方財政の見込みも数字を精査し、「地方財政計画」として、内閣から国会に提出します。これにあわせ、地方交付税の総額特例や単位費用の改定を決め、地方交付税法の改正法案として2月に国会に提出します。

(2)国の予算と地財計画
ほとんどの行政サービスは、地方自治体が行っています。国の予算の多くは一般会計で実施されるのではなく、地方財政計画を通して実施されます。また、国の予算をもらわずに地方自治体が実施するサービスもたくさんあります。国民には、国の一般会計より地方財政計画の方が、そして各市町村の予算の方が影響が大きいのです(拙著第4章)。
具体的には各市町村が、この数字を基礎に予算を作るのです。国の一般会計予算は「国の都合」であって、それがそのまま地方自治体や国民生活に影響するわけではありません。交付税の金額も国の一般会計の数字ではなく、実際に配られる金額(地財計画計上額)が意味があります。

3 自治財政局の仕事と地方財政の1年
各省と交渉して補助金の一般財源化を決めるのは、総務省自治財政局調整課の仕事です。地財対策を決め地財計画を作るのは財政課の仕事、そしてそれを交付税法に仕上げ、算定するのが交付税課の仕事です。

各地方自治体は、予算をつくり、3月議会に提案します。そして4月から、新年度が始まります。17年3月に、16年度予算が終わります。
出納整理期間が5月に終わり、地方団体が決算を作ります。それを議会に提出するとともに、総務省に報告します。全地方団体の決算を集計し分析して、「地方財政白書」をつくり、18年3月には国会に報告します。この作業は、自治財政局財務調査課の仕事です。
こうして、15年秋から始まった「16年度予算」の作業は、18年3月に終わります。